1 運命が変わる時
皆さん初めまして。黒犬です。
今回が初投稿の作品となりますので、誤字脱字などがあれば指摘お願いします。
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俺は何時ものように起きて学校に行くはずだった……が起きるとそこは異様な空間だった。
「どこなんだ……ここは……?」
どこまでも暗く何も見えないのに何故か不安感は感じられず夢の中にいるような気分で非常に落ち着いている。
「それにしても、何も無いな」
周りを見渡してみるが地面どころか建物や物すら何も無く自分だけがこの空間で浮き出ているような不思議な状態だ。
「誰か!……居ないのか!……」
自分の言葉は反響する事も無く遠くに吸い込まれる様に消えていった。しかし少しすると何処からともなく音が聞こえてきた。
「トクン……トクン……トクン……」
まるで何かが鼓動するような音がしたかと思うと、次第に音は大きく近くから聞こえるようになった。
「ドクン……ドクン……ドクン……」
「ドグン!……ドグン!……ドグン!……」
大きくなる音に怖くなり耳を塞いでみるが、頭の中に直接送られてくるようで一向に収まることは無い。
それどころか頭が痛くなる程に膨れ上がり、俺は我慢できずに叫んでいた。
「うるさい!……止めろ!」
すると先程まで聞こえていた音が何事も無かったかのように『ピタリ』と静かになった。
そして自分の正面に辺りを照らすかのような光が現れ誘い込まれるように足が進んでいた。光の中を歩いていると様々な声が聞こえてきたが、自分の知っている言葉は無く発音さえも聞き取れないような複雑なものだった。
しかし何となく、何となくなのだがこう言っている様な気がした。
「進め……未来……へ……己が……信……じる……道の……先へ……」
「それは……どういう……」
俺の意識はそこで一旦途切れた。次に意識が持てた時には相変わらず暗いが狭く温かい場所に押し込まれたような状態になっていた。
非常に窮屈で手足が全く動かせない。手足が自由に動かせない事がこんなにももどかしい事だとは思っていなかった。なのでもがいてみるが、微かに揺れ動くだけで特に何かが変わるような様子はない。
今度はさっきよりも激しく動いていると、『ピキッ』という音が聞こえてきたのでもがき続けていると次第に動き易くなってきていた。
「もが!……むぐぐっ……」(良し!あと少し)
喋ったつもりが上手く言葉に出来ずにくぐもった声になってしまう。だが手足はかなり動くようになっており罅が入るような音は段々と大きく早くなってきている。
そして首筋を伸ばした時に『パキャッ』という音とともに頭が何かを突き破り外に出た、そして目を開けると自分の家でなくいかにも空気が薄そうな山の上にいた。
なぜ空気が薄いのか分かるのかというと、遥か下の方に森や平原が見えるからである。
「……マジかよ……ありえねー……」
そして同時に自分の胴体がある場所にも目がいくが、なぜか卵に包まれていた。全く以て意味不明だがとりあえず殻を剥がす事にしてみた。
そしたらなんと俺の体は四足歩行の竜になっていた。体には黒曜石のような綺麗な鱗があり凶器そのもののような爪もついていて、自由に動かすことの出来る尻尾もついていた。翼は何故か無かったが……。
そしてそれよりも気になるのが天気は快晴といってもいいのに、さっきから足元にあるのが自分の影ではなく辺り一面を覆うような黒い影であり生物の形をしているような感じなのである。
嫌々ながらも後ろを振り返るととてつもない大きさの龍が佇んでおり、その体は深淵のような吸い込まれそうな黒色をしており自分が居る場所を守るように翼を広げていた。
俺は逃げることも忘れその龍が放つ独特の雰囲気に見入ってしまっていた。
「あの……すみません……少しいいですか?」
少ししてから我に返りその龍に話しかけてみたのだが、一向に返事に答える様子はなく無言で遠くの方を見ているだけである。
何かがおかしいと思いさらに龍に近づいてから大きな声で問いかけるが、先程と同じように反応はなかった。
ここで俺は踏み込んでみることにした。思い切ってボディタッチをしてみたのだが、大量の情報がなだれ込み頭が割れそうな痛みに襲われ又もや意識を失ってしまった。
そして俺は長い夢の中で様々なものを見た、この世界の誕生や歴史、人族と魔族の文明や争い、魔物の存在理由や龍種の役割など……。
多くの知識を得たなかで重要なことがあった。それは俺がこの世界に来た理由である。理由自体は分かり易いものであったがそれが一番気に食わなかった。
俺が触れたのは神龍と呼ばれていたこの世界の創造主だったのだ。
簡単に説明すると、神龍は寂しさを紛らわせる為にこの世界を作り管理していた。しかしそれに物足りなさを感じてくるようになると世界に干渉し出すような行為をし始めた。
最初は世界の均衡が崩れない程度の些細なものだったがエスカレートして世界が危機になる所まで行ったらしい。
そして自分のした過ちに気づき自らを世界に組み込むことで何とか崩壊は免れたらしいが、世界の中の生物となってしまったせいで寿命に縛られ命が尽きようとしていた。
そして死ぬ前に卵を産み出し、後継者は世界に対して特別な感情を持たない者として俺が連れてこられたらしい。
俺が選ばれたのは偶然だったらしいが、全く以て自分勝手で理不尽な話である。まあ俺としても何の変哲もない日常から少しは何かが変わるなら本望なのだが。
「うぐっ……ハッ……!」
まだ痛みが残る頭を押さえながら無防備だったであろう体を確かめるとともに周囲も警戒する。
影の長さが夢を見る前より少ししか変わっていない事から、そんなに時間が経っていない事が分かった。時間にすると三十分ぐらいだろうか……。
「さて、これからどうするかだな……」
目の前に死んでいる威厳だけはあるが中身が糞のような龍はほっといて、世界の現状はどうやら安定しているらしいので改めて状況を整理してみる。
俺はこの世界で龍種と呼ばれる生物に転生し、気にくわないが親が神龍だけあって力も普通ではないと思う。人族や魔族側に産まれなかった事で今四足歩行な訳だが、それ程気にならない事からして生物の本能みたいなのが働いているからだと思われる。
次に、夢で見た事には魔法らしきものや特殊能力的なものもあった。俺もこの世界にいるからには使える筈だが発動の方法が分からないし、使えたとしても制御できる自信がないから少し怖いとも思っている。誰かに教わるまでは無理をしない方が良いかもしれない。
今の所は安全ではあるが殆ど隠れる場所がない山にいるよりも、隠れる場所として最適そうな森が下にあるし湖も見えるから行ってみる事にした。
△▼△
「ついに、この日が来てしまったか……」
「私は混乱を齎さない限り放置で良いと思いますが」
「邪魔なら排除するだけではないのか?」
「貴方はそんな楽観思考が出来て良いわね……」
「仕方ないが、彼奴らを確認に向かわせるか」
そんな声が暗く灯りもない洞窟から響いてくるのだった。
△▼△
「ハァ……ハァ……死ぬかと思った……」
自分がいた山が高い事は分かってたが、これ程までに斜度がきついとは思っていなかった。
最初に見た時に異常に気が付けば良かったが、山の斜度なんてこんなものだろうと思ってソリ感覚で滑り降りたのが間違いだったか……。
「で……湖の方向ってどっちだっけ?」
山滑りに集中し過ぎて位置を確認している余裕が無かったし、下から巣の位置を確認しようとしても真っ直ぐ滑り降りてきた訳ではないので今いる場所すら分からない……。
「まあ、何とかなるか」
俺は何時もこうである。計画を立てても予定が狂ったり失敗しても修正することなく、行き当たりばったりで通してしまう。
自分でも悪い癖だとは思っているが、今迄に何度も直そうとして途中で諦めている。
それから湖を見つけるのに十五分ぐらい掛ったが、近づくにつれて水の臭いと水草のような臭いで気付けたのはかなり大きかったと思う。
「はぁ……疲れた」
そう思いながら水を飲もうと水辺に近寄ると水面に自分の顔が映った。そうすると顔は犬のように長くなっていて目付きはとても鋭く、鼻の下には肉を容易く引き千切りそうな牙が口の中に隠れていて如何にも竜というような感じだった。
「これって結構カッコいい方なんじゃないか?前の俺の顔……なんて……」
そこで俺は初めて気が付いた。自分の前の事や親の事、いたであろう友人や先生の顔や名前も覚えていない……。なのに今までの生活や人生、ゲームや漫画など知識はあるのに。
「これは……何ていうか……すごく曖昧な記憶の消し方されたな」
前世に帰りたいと思われないようにする為の工作だとすると、すごく微妙なので他の方法は無かったのかと思う。
でも神であろうと他の神が創り出した世界の人間に干渉して、更に記憶まで書き換えようとすると案外これが限界だったのかもしれない。
「ん?何だかさっきよりも静かだな」
考え込んでいて気付かなかったが先程までは周りから鳥のさえずりや獣らしき声や気配があったのだが、今では風や揺れる木などの自然の音しか聞こえなくなっていた。
「何か来たかな?」
すると急に見られている感じがして、気を配ってみると何かが潜んでいる事が分かった。相手は一人ではないと感じるので逃げる事は難しいと思い、様子を伺っていると相手の方から姿を現した。
「よう。お前神龍から生まれた奴で間違いないか?」
出てきたのは全身が赤く炎を具現化したような色をした俺と同じ竜だった。
ここは嘘を付かない方が良いだろうな。下手に嘘を付くと後々面倒になる可能性があるからな。
「ああ。俺で間違いないが、何か用か?」
「用が無いなら声は掛けないさ」
さて……俺が何かしたかな?それとも、神龍の子どもという立場に用があるのかだが……どうしたもんか。
「今から俺に付いて来てくれよ。少し話し合いたい事があるんだ」
「ちょっと待てよ。初対面で挨拶もしない奴を信じろと?それに、周辺に仲間を置いて逃げれないようにしてる癖に俺に拒否権は無いと?」
相手は少し考える素振りを見せるが、直ぐに返答が返ってくる。
「それは、すまなかった。皆来てくれ」
すると茂みから隠れていたと思われる竜が出てきて、それぞれ赤い竜から自己紹介を始める。
「俺は煌炎龍の息子でこいつらのリーダーをしている竜だ」
「初めまして。僕は紫電龍の息子で、作戦などを立てている竜だよ」
そう言って出てきたのは全身が黄色く、体の所々に紫色の結晶を生やした竜だった。
「ふふん。僕は岩砕龍の息子なんだぞ。体が皆より硬いから盾をしてるんだぞ」
「初めましてね。私はこの子達の纏め役をしているわ。逆らわない方が身の為よ」
偉そうに出てきた竜は全身が岩で出来ているような見た目で、如何にも硬そうな感じである。
その次に出てきた女性らしさを感じさせる竜は、全身が綺麗な青色をしていた。
「お前らで全員か?」
「ええ。そうよ」
初めに感じた事はこうだ。「こいつらバカだな」だけである。脅威はこれっぽっちも感じない。
誰が今日初めて会った奴の前で大事な情報をベラベラと喋るのだろうか……?勝てる自信があり漏らしたとしても問題無く消せるし、数的有利があるからかもしれないな。
「なあ。お前ら生まれてから何年経つ?」
「俺達か?俺達は同じ年に生まれて15年間ずっと一緒だ」
年齢的には充分思考して行動に移せるぐらいの頭は持ってる筈なんだが、やはり力があるとそこら辺には緩くなるのか?
目の前の此奴らからは結構な余裕があるように見えるし、聞いてみるか。
「この世界で一番強い種族はなんだ?」
「龍だろ?」
「それは僕たち龍族に決まってると思いますが?」
「それ以外ってありえないと思うの」
「全く以てその通りなんだぞ」
てことは俺も最強種の部類に含まれているわけか。まあ、種族のハンデが無くとも神から生まれたってだけで反則級だとは思うがな。
さて、そろそろ本題に入ってみるか。
「そうか。で、俺に用があるんじゃないのか?」
「おっと、忘れる所だった」
「貴方を連れてきて欲しいと頼まれています」
「兎に角付いて来れば分かるわ」
「そうだぞ」
ん?連れて来いって事は此奴らに命令できる存在が居るのか。てことは確実に龍なんだろうな。
そして、何となくだが断る事に対してあまり良くない予感がするのは何故だ?
ここは直感に従ってみるかな。
「分かった。だが、俺には翼が無いんだが大丈夫なのか?」
「確かに。お前って珍しい事に翼が生えて無いんだな」
「翼が無くても問題はないわ。移動には時間が掛かるけど」
さてと、一体どんな場所に連れて行かれるんだろうか。期待はしていないが不安は溢れるばかりだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
続編も読んでいただけると嬉しいです。