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異世界トリップしたらなぜかブスと蔑まれた20




衝撃に飛んだ。

本当に体が宙に浮いたからね。

その衝撃具合は察してほしい。


いや、魔力はね、少しも通してないんだよ?

さっき自分にかけてた結界が大役立ち。

ナイス臆病者で小心者のわたし!


だからとんできた光はちゃんと消したのよ。

でも物理的衝撃が発生するとか、知らなかった。

だって、攻撃されるとか初めてだもの。

そこまで考えてなかったから対策も皆無。


結果、せっかく床から離れたのにまた逆戻り。

そして受け身も取れず、後頭部ぶつけた。

いたい。


「う」


ゴンっていったからね、たんこぶで済んでれば御の字くらいの勢いだよ!

脳の血管切れてない?

うっかり数時間後にぽっくり逝ったりしないよね!

いやよ、こんなところで死ぬの!


脳震盪起こしてないだろうか。

吐き気ナシ!

意識も、記憶もある。

めまい…あるわよ、めっちゃ世界が揺れてる。

頭痛は、たぶん大丈夫。

頭の中じゃなくて物理的にぶつけたところがいたいだけ。

…う~ん、わたし頑丈。

お姫様にはなれそうにない。


とりあえずめまいでぐるぐるしてるけど、ふらふらする頭を抱えて身を起こす。

だって、この隙にまた攻撃されたらたまんないじゃない。

わたしでコレだからね?

シンとユタだったらこんなものじゃ済んでないわよ?

アイツら、ゆるさん。


と、体を起こしたら目の端を赤いものが流れていった。

あれ、どっか切ってた。

額だろうか。

おでこを拭ったらべったりと血がついた。

ぶつけたのは頭なのに、切るのは額とかこれ如何に?


…う~ん、光のくせに、やるじゃないの。

ナメてたことは謝ろう。

まあ、全力でこの程度らしいけど?


触った限り、傷は浅いし小さい。

頭の近くの出血は大げさなのよね。

昔からお転婆娘だったからよ~く知ってるわ。


「ユ、ユ、ユ、」


あん?

なんの鳴き声よ。


額の割れた個所を押さえて顔を上げたら、顔面蒼白の面々がいた。

どうなさいました?

あ、吹っ飛んだから心配してた?


「大丈夫よ?」


ええ、本当の本当に。

なんかスプラッタしてるから酷く見えるけど、出血より後頭部が痛む方が問題なくらい。


シェリアさま、さっきみたいに魔法かけてくれないかな~。

たんこぶになっちゃう。

じーっと目線で訴えてみたけど、シェリアさまは動かない。

あれ?もしかして回数制限とかあったりするのかな。

自然治癒力が落ちるからとか。

なら仕方ないか。


よっこいせと立ち上がる。


……生まれたての小鹿みたいになったんですけど。

え、ねえ、やっぱ自然治癒力とかどうでもいいから回復魔法かけてくれませんか、シェリアさま。

これ恥ずかしい。


と、いうか、誰か手くらい貸してくれてもよくない?

こんなふらふらしてるわたしに哀れみはないのか!

それとも手を貸すまでもなく大丈夫だと知られてるのか。

いや、本当に大丈夫だけどさ。

まあ、戦闘中ですものね。


戦闘中といえば、最初の一発が引き金になってドンパチ始まるかと思いきやそんなことはない。

広間はシンと静まって……わたしの動向に注目が集まってる。


なにあいつ、あんだけくらって全然平気なんだけど。

ドン引き。

どんだけ頑丈なんだよ。


とか思ってんだろうな。

光どもの声が手に取る様にわかるわあ。


「…ユアさま、血、が」


うん?

ああ、押さえてたからね、そろそろ大丈夫かな。

そっと手を放すと、最初の勢いはめっきりなくなってる。

予想通り大したことないみたい。


よし、めまいもおさまってきた!

ここらで一発啖呵を切ってやらないと。

ふらふらしてたんじゃかっこつかない。


つかつかと歩いて呆然自失してるシンとユタの前に立つ。


「ユアさま…」


通り過ぎるわたしと目が合った二人は泣きそうな顔をしていた。

大の男が泣くんじゃありません!

まあ二人とも優しいからね。

わかってる、マレビトとはいえ性別女に庇われて、しかも怪我してるし、びっくりするわよね。


気にすることはないとすれ違いざま笑顔を見せる。

だって、全部自分のせいだし。

無知ゆえに衝撃を受けきれず、経験値の低さで自分すら守り切れず。

自業自得ってやつだ。

次は万全にあなたたちもわたし自身も守って見せるから安心してよ。


仁王立ちする。

睨み付けて宣言。


「次は、もう通じないわよ?」


最弱のマレビトですけど、さっきのがあなたたちの全力ならこのわたしだって防げちゃうんだから。


びしっと指を差す。


…どの光が攻撃したのかわからないので、そこら辺を曖昧に。


「試してみたら?」


結界を展開する。

来るとわかってれば心の準備だって万全よ!


光を遮断して、衝撃波も防ぐ、そういう結界を作ればいいだけだもの。

いま、身をもって学習しましたから。


自分だけではなく、後ろの面々も覆う。

壁じゃなくてドーム型にすればいいんだ、そうだ、そうしよう。


たぶん、シェリアさまとかサイラスさんの方がきれいに作れると思うんだけど。

あ、あそこたわむ。

あ、ここ薄くなってる。

…いやいや、穴さえなければいいのよ!

いい!?あんまりジロジロ見ないでよ!?


ちょっと顔が赤くなる。

汗を拭って、ついでに乾きかけの血も拭う。


ええい、勢いで誤魔化そう!


「自分たちがなにをしているのか、わかってる?」


マレビトに敵対とか何考えてんだこのやろー!

シェリアさまとサイラスさんに勝とうなんて無謀すぎんだよ!

()が高ーい!

ひかえおろう!


「わたしたち(・・)マレビトの名を汚すつもり?」


ザ・シェリアさんとサイラスさんの威を借りよう作戦。

無理矢理わたしの存在も捻じ込んでみる。

疑ってたみたいだけど、わたしもマレビトです、わたしに攻撃したら二人が怒るからね!ってこと、ちゃんと伝わったかな。


あと、わたしはお前たちの味方じゃねーぞ、と。

ですので、マレビトのご利用は計画的に。

これ重要。


そんでもって、わたしは言いたい。

一番これが言いたい。


「わたしの大事なひとたちを傷つけようとしたわね?」


二度目はないよ。

許さないよ。

主にシェリアさまとサイラスさんが。


わたしと、シェリアさまサイラスさんは同じマレビトである。

わたし達なかーま。

つまりわたしの大事なものは彼らの大事なもの。

故にわたしの大事なものをないがしろにしたらシェリアさまたちが黙ってない。


どやあ!

完璧なる主張!

実際は互いに干渉しないって密約を交わしただけの、仲間でもなんでもない関係だけど、傍から見ただけではヤツラにはわかるまい。


シェリアさまたちもそれくらいの利用は許してくれるでしょう。

お、怒らないよね?

心広いと信じてる!


この見事な主張の効果のほどを見届けようと目を凝らす。

光たちはざわざわと落ち着かない。


うむうむ、信じきれてないけど嘘とも言い切れないってところかな。

まずまずの成果に満足していると別方面から、思いもよらない言葉が耳に入る。


「きさまが我が国のマレビトだと…?」


ほわっつ!?

何その前提を覆すような疑問。

王子、ついに目が悪くなった?

光の脅威にさらされてるわたしじゃなくて、なんで王子の目が先に悪くなるんだよ。

このわたしの顔を忘れたのか。

あんたが散々ブスだと罵ってくれたこの顔を!

まったくもって変わってないこの顔を。


「馬鹿な、なんだその顔は。お前はもっと、そんな、嘘だろう…?」


意味不。

なんで片言。


大体、その顔ってどの顔?

この顔?


なにがおかしいってんだ。

自分で自分の顔に触れてみる。

血がちょっと張り付いてますけど、いつも通りのわたしですが?


いつも通りの…。

うん?


…………おおおおおおおおう!

わ、忘れてた!

スッピンやんけ――――――――!!


しまった!

だって、家でゴロゴロしてたところを強制的に連れてこられたから!


ブスだ、ブスだとあれだけ罵られてたのに、それ以上の素顔を晒すとか!

ない、ないないない。

うら若き乙女がブスと言われて嬉しい訳がない。


そのための化粧!

少しでも隠すための仮面。

わたしの盾、鎧、あるいは剣。

ひたすら罵ってくるあいつらに丸腰で挑むとか、マジでない!


Oh!王子が絶句してる!

あまりの事態に罵り言葉すら出てこないらしい。


そうだ、今のうちに。

後ろを振り向く。


「シ、シン!ベール!ベールを」


今すぐわたしにプリーズ!

真実を隠すのだ。

そうしたら幻だったと思ってくれるかも!?


「ユアさま、恐れながらもう遅いかと…」


そ、そんなことはない!

試してみなければわからない!

だからわたしにベールを。


…そんな悲しい顔しないでよ、ちょっと泣きたくなるじゃない。


「諦めましょう、ユアさま。そもそも突発的事態で誰もベールやその代わりになるものを持っていません」


ブルータス、お前もか!

ユタ、そんな簡単に諦められるなら初めから王城から逃げ出していない!


「ユアさまの心中ご察し致しますが、ユアさまはユアさまです。隠すこと自体が間違ってると思います」


キリー!

今まで散々わたしに追従してたのに、ここにきてこの裏切りか!


どーするわたし!

三人がすでにわたしの意向を無視する構え。

どーする!?


「ユアさま、落ち着いてください。何があろうとも必ずお守りいたします」


…カッコいいセリフだけども。

ちょっときゅんとなったことは否定しないけども。

シンさん、言葉はね、心を傷つけるんですよ。

そして言葉はさっきの攻撃みたいに跳ね返したりできないものです。

一生耳でも塞いでてくれるんですかね。


じっと見つめてたらシンがたじろいだ。

けど目は逸らさなかった。


…潔く諦めた方が身のためっぽい、かな?

深くため息を吐く。


ええ、ええ、わかってるわよ、みんなが本気で言ってくれてってことはね。

何があっても守ってくれるつもりだってことも。

それはヤツらの口撃をふせいではくれないだろうけど、わたしの回復魔法にはなってくれるだろう。


罵られるのは癪だけど、まあ彼らがいれば耐えられない程のことではない。

…ん?前から耐えられない程の事ではなかったかも?

ま、その程度のものに、更に味方が増えて心強くなったってことだ。


シンを見上げる。


今言ったこと、忘れないでね。

言質はとったからね。

確認にダメ押ししておこう。


「信じます」


だから最後まで味方でいてよ!

強く訴えると、シンの目は決意を宿して見返してきた。


ええい、ままよ!


ヤツらに向き直る。

よし、怯まないぞ。


「は、ははは、つまりそういうことか。俺は、俺たちはお前にずっと騙されていたってことか」


普段からブスだと醜女だと言われていたわたしのスッピンを目にして、衝撃から立ち直った王子に何と罵られるかと身構えてたら、なぜか王子は空笑いをしてた。


意味が分からない。

ってか、さっきもそんなこと言ってなかった?

デジャヴュ。

騙された騙されたって、勝手に騙されたり、騙された気になっているのはお前らだと言いたい。


「マレビトを手放したときに、我が国の未来は決まっていたのだな」


王子ががっくりと膝をついた。


「いや、彼女の信頼を勝ち取れなかった時点で、命運は尽きていたのか」


超新星もまた膝をつく(たぶん)。

他の光が彼らの行動に従った。


最後に王様が玉座から降りた。


「エルスティアはここに降伏を宣言する。われら自らの罪を知り、恥を知る。罰は如何様にも受け入れよう。責任はわれらにあり、どうか民には寛大なるご慈悲を」






…だれか、通訳お願い。







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