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異世界トリップしたらなぜかブスと蔑まれた15






敵前逃亡を企てていたはずなのに、これはちょっと!

予想外なんですが!神さま!


目の前とか!

気付いたらもう『目』で見なくても直視出来る距離に居るとか!


逃げるどころじゃない。

あれぇ?その気になる暇さえ与えられなかったんですケドー?

あ、あははは…はははのは…。


え、今から?

いや、ムリむり無理!

絶対ロックオンされてる!


ホントに一体何事なの?

反則でしょう、これ!

ねえ!

レッドカードで一発退場モノの案件よ!?


だって今までいなかったよね!?

一瞬前までさ!

結界も反応しやがらねえ、どういうことだよ。


さすがのマレビトさまと褒めたたえるしかもうやることがないんだけどぉ…。


甘かったとしか言いようがない。

マレビト相手に世界の常識を求めたわたしが悪かったんだ、きっと。


こいつら多分、転移してきやがった。

そんなこと出来るとか聞いてない。

でもそんな文句が通じるわけもない。


しかもさー、なんかこの人たちに昔喧嘩売った覚えがあるけど気のせいかなー?

気のせいよねー。

よしんばそんなことがあったとしても、あなた方くらいのレベルになると、そんな小さなこと気に留めたりしませんよねー?ね?ね?


「うふふ、わたくしの熱烈なラブコールをいつも撥ね退けられるから、どんな過激な方かと思っていましたが、こんなに可愛らしい方でしたのね」

「しかも手酷いしっぺ返し付きときた。こうもつれなくされると逆に興味が湧くというもの」


はい、死んだー。

わたし死んだよー。

父よ、母よ、先立つ不孝をお許しください。


警告を無視するなんていい度胸、でも出向いてみればこんな小娘?笑いが出ちゃう!

てめえ、よくぞ俺に逆らってくれたな?もちろんどうなるかわかってやったんだろう?


ああ、本当の声がよく聞こえるなー、うふふ。


…乙女にあるまじき白目を剥きそうです。

誰か助けて。

誰でもいい。

この際、光王子でも構わん。

今すぐここに来て、わたしの盾になれ!


とは言ったものの、別に誰かに期待してたわけじゃない。

だって、わたしマレビトだもの。

彼らもマレビト。


この世界で、わたしたちに勝てる人なんてきっといない。

だからこれは三人の問題。

わたしだけが、彼らの敵。

わたしの、わたしだけのピンチ。


…だったはず!


なのに。


ちょぉっとおおおお!

危ないじゃないのよ、下がって!

なんでわたしの前に立つの!


シン!


真面目に危ないんだよ。

あなたのその忠義は嬉しいけど、多分デコピンされただけで吹き飛ばされちゃうからね!?


ええ、ええ、本当は嬉しいけど!

颯爽とわたしを庇うシン!

カッコいい、抱いて!

鼻血と涎が出そう!


う、うふふふふ。

いや、喜んでる場合じゃないよ。


ここはわたしが、


「貴様ら、ユアさまの御前であるぞ。頭が高い」


わ、わたしが、なん、とか…。



………あ~、シン?

シンさん?

おーい、台詞が間違ってますよー?


「聞こえなかったか?」


あれ、突然ユタ参戦。


「もう一度言いましょうか?それともその耳は飾りなの?」


キリ、あれだからね?

それ(・・)、マレビトだからね?


二人のマレビトさまは言われた言葉にびっくりして固まってる。

そりゃ、そんなこと言われるなんて露にも思ってないだろうからね。


チャ~ンス!

逃亡!

今が唯一の機会!


ってか、うちの子たちが喧嘩売ったからにはもうそれしかないんですぅぅぅぅぅ!

うわあああ、バカー!

何てことしてくれんだ!


知ってる!?

わたしだけの問題だったのよ!?

わたしが!つまり!最悪は死ねばそれで終わりだったのに!


これじゃあ一蓮托生じゃんか!

仕方ない、もうわたしの首だけで終わる話じゃない。


全力で逃げよう。

うちの子たちを魔の手から救うにはそれ以外に道がない。


わたしは彼らの出現に驚いて座ったままだったソファから機敏に立ち上がる。


やったことのない転移とやら。

やって見せようじゃないか。

彼らに出来たなら、同じマレビトであるわたしにだってできるはず!


シンとユタの腕に手を伸ばし、キリを抱えて発動だ。

一瞬あれば出来る、出来る筈。

できるかも、できるとして、できるから、できるなら。

いや、できなきゃなんない。


全身に魔力を渡らせる。

巡るように流れるように。

知らない魔術だから、どれくらい魔力を使えばそれが出来るのかわからない。


だからあらゆる場所に願いを放つ。

その力を渡せ、と。

強引に望めば、望んだだけのものが集まった。


渦のように濃密な魔力。

これだけあれば、きっと大丈夫。


さあ、いざ往かん!

我らが新天地へ!


「これは、大変ご無礼を。申し訳ない」


しゅっぱー………つ?

う?


気負いのない声に(魔力)が抜けた。

さきほどの陽気さの滲んだ声じゃなくて、真剣味溢れた、でも謙ってるわけでもない落ち着いた男の人の低重音。


自然体でド迫力。

すごい、風格。

かっけー。


見惚れていたら、その深紅の瞳が伏せられた。


「我ら、貴殿に逆らう意志はなし。どうぞ怒りをお治め下さい」


頭を下げて、それから優雅に膝をつく男に呆気にとられる。


「この度はそれを伝えに参りました。罰は甘んじて受けます故、我らに延命のご慈悲を。どうか」


気付いたら彼女の方も床に居た。

しかもその美しい顔を絨毯に擦り付けんばかりだ。


…なにごと?



え?

なにごと!!!!?



しかも、なんでシンたち満足そうに笑ってるの?

全てがあるべきところに収まったみたいな顔で!


状況わかってないのわたしだけ!?


わたしも仲間に入れてください!

頼みます!


神さまシンさまマレビトさま!

誰でもいい!


説明求むー!






………あ~。

ってかさー、そろそろパニクるのにも疲れてきたんだけど?

なんでこんな振り回されてばっかりいなきゃならんのだ。


むか。






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