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異世界トリップしたらなぜかブスと蔑まれた1

相変わらず終着点が見当たらないまま書き始めました。不定期です。本当です。





平凡なOLにもそれまでの人生がある。

物語にすればつまらない、波も風もない生活だったとしても、私というものを形作ってきたそれは馬鹿にされるものでもなければ蔑まれるものでもない。


わりと何でも笑って流してきたわたしが、そんなことをくっきりはっきりと思い描く状況というものがどういうものか、といえば。


異世界人に罵られているのである。


怒りはあるのだろうけど、それよりもキリリとした意思が胸を張れという。

堂々と背筋を伸ばして、恥じることのない私という人間を主張して見せろと。


褒められて伸びるタイプだと長年主張していたが、ここにきてどうやらそうでもないらしいと気付いてしまった。

それでも、否定されると反骨精神が湧き上がるという事実を確認しなければならない状況を喜ぶマゾ精神はない。


目の前の光の塊、もとい異世界人は何事かを喚き散らすだけ喚き散らしている。

せめて人型を相手に張り合いたいものだと思った私は悪くない。


曰く、

このドブスが!魔法もろくろく使えない出来そこないめ!

という罵声。


ブスと言われてもそれなりに流せるのは、彼らと自分と、多分価値観が違うのだろうと思うからだ。


きっと光の塊は光の強さででも美しさを競っているのだろう、生憎自分は光れないからしてブス。

正解でも不正解でもわりとどうでもいい話だ。


とりあえず眩しい。

すこし光量を抑えていただけないものだろうか。

目が潰れそうだ、サングラスをくれ。


だれが想像できただろう、異世界生活に必要なモノがサングラスなどと。


まあ、取り合えず、どうしてこうなったかの話をしようか。






変化は一瞬の間で。

夜は昼に入れ替わり、コンクリートの地面は柔らかな芝に。

無機質な建物は緑萌える庭園へと。


疑問の声もなく、『逢坂夕陽(わたし)』はただ瞬きを繰り返した。


さてはて、白昼夢をみるほどに飲んではいない。

だが一体ここはどこだ。


困惑している間に事態は移り変わっていた。


「こちらにいらっしゃいましたか、マレビト様!」

「お探しいたしましたぞ」

「ようこそ、わがエルスティアへ!歓迎いたします」


と、後ろでガチャガチャと騒がしい金属音と共に人の声。


自分に話しかけているのかどうかは別にして、反射的にわたしは振り返った。

しかし困惑は当惑に微々たる移行をしただけに留まる。


まぶしい。


声の主たちが揃って眩しい。

比喩ではない、顔がいいとか、笑顔が素敵とか、歯が白いとか、そういうものではない。

物理的に光り輝いて、たいそう眩しい。


なんだこれは。

いつの間に地球は宇宙人に乗っ取られたのか。


それとも自分の目がおかしくなったのか、言葉を話す光の塊は言葉が通じる限りは多分人間ではないかと思うのだが、目をこすっても眇めても光は光のまま。

かろうじて人型に見えるものもあればまるまるとした光もある。

…直視できないので薄らと開けた目で見た限りの情報でしかないが。


が、どうやら戸惑っているのは光も同じ。

ざわざわとした動揺が気配でそれと伝わってくる。


「おい、本当にマレビト様なのか?」


そんな囁き。

マレビト…稀人、だろうか。

だとしたら自分は間違いなく稀なる人だろう。


どう考えてもここは今まで過ごしてきた世界とは違う。

空気が違う、建物の様式も。


光の塊と仕事したり恋愛したりした覚えはないのだから、ここは自分の知る世界ではないのだろう。

宇宙人に連れ去られたか、別世界に迷い込んだか。


そろそろ観念する時間のようだと、わたしはため息を吐く。


「予言によればマレビト様は今日この時間に現れると。間違いはないのでは?」


予言!

その言葉はいやに耳についた。


なんとファンタジックな!

まさしく異世界!

幼い頃によく読んだ魔法の世界、少しばかりわくわくしてしまったのは不可抗力だ。


「いや、しかしマレビトはこんな…」


濁した言葉の先はなんだろう。

わたしは首を傾げる。

人型なのが悪いのか?

光の玉であるべきだったのか?


互いに戸惑い、距離は詰められず、情報を計り合っていると庭園の向こう、白亜の廊下から一際眩しい光の塊がやってきた。


もうやめて、夜が恋しい。


「何を突っ立っている、皆が広間で待ちくたびれているぞ!早くマレビト様をお連れしないか!」

「お、王子!」


お、王子!(笑)

目を細めながらその人(?)を認識しようとしたが残念ながら光が密集しすぎて見分けがつかない。

取り合えず光量でいえばぴか一のこの一等星が王子さま(光)…であろう。


ああ、寄るな集まるなくっ付くな。


この願いはわりと切実だった。

寄られると光がくっ付いてどこがどの光なのかまったくわからなくなる。

夜には街灯いらずの省エネだとしても、昼間に光られても何の意味も見出せない。


「で、マレビト様はどこに?」


声は若く、張りがあった。


「こちらにいらっしゃるのがマレビト様かと…」


自信なさげな声を発した光が自分を指す。

光の塊から棒状に伸びたのはいわゆる手なのだろう。


王子(一等星)とわたしは対面した。

直視できないのでものすごく細目だったけれど、無理なモノは無理である。


王子(一等星)は大変正直者だった。


「ありえん!」


光ってないことが?

しかし自分からしても光ってる彼らはあり得ないのだから、互いに受け止めるべきだと思う。


「マレビトだぞ!マレビトとは神より遣わされた類稀なる才と美貌を持った者ではなかったのか!?」


うん?


「こんな醜女がマレビトなどと認められるわけがないだろう!」


王子(正直者)は激昂した。


正直者(わたし)は思った。

光の塊に言われたくねーよ、と。


私は悪くない。






一人称、ムズイ。途中で変わったらごめんなさい。

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