エピローグ・御伽造師の赤ずきんちゃん
むかーし、むかし、あるところにふたりの女の子とひとりの男の子がいました。
女の子はそれぞれ、アヤとノカといい、男の子はタツヒトといいました。
アヤとノカは、タツヒトのことが好きでした。もちろん、アヤはノカがタツヒトのことを好きであると知っていたし、ノカもアヤがタツヒトのことが好きであると知っていました。
そんなある日のこと、タツヒトはアヤに告白しました。なんとタツヒトはアヤのことが好きだったのです。
アヤはタツヒトと付き合うことにしましたが、同時に悩みを抱えてしまいます。
そうです、ノカにこのことをどう伝えるべきか、アヤは迷っていたのです。
タツヒトに相談すると、タツヒトは言いました。
秘密にしていよう、と。
それはノカを気遣ってのことでした。アヤとノカは親友で、タツヒトとノカは友人です。その関係が壊れないように秘密にしておくべきだとタツヒトは思ったのです。
だからアヤもタツヒトに従って、ノカには何も言いませんでした。
けれどノカはそんなに疎い子どもではありませんでした。アヤとタツヒトに現れた些細な変化を見逃しませんでした。
とはいえ、本人達が何も言わない以上、ノカは問い詰めることをしませんでした。
そんなある日のことです、ノカが学校から帰っていると、手を繋いで仲良く歩くアヤとタツヒトを見つけてしまったのです。
どういうことか、と問い詰めると、タツヒトはアヤと付き合っていると気まずそうに答えました。
そこから大喧嘩の始まりです。
ノカは付き合ったことを正直に言ってくれなかったことが許せませんでした。
そして三人は別れました。
けれどもノカはその後、後悔しました。
アヤとタツヒトがなぜ付き合っていると言わなかったのか、なんとなくその理由が分かったのです。
謝ろうとノカは決めました。だからアヤの大好きなぬいぐるみを買って、アヤへと謝りに行こうと思ったのです。
そんなノカのもとに、たいへんだーと叫びながらウサギが現れます。
ウサギは言いました。こころのすきま、みーつけた。
ウサギの目は悪魔のようにドス黒く輝いていました。
ノカは自分のからだに何かが取り入ろうとしているのに気づき、逃げ出しました。
一目散に逃げ出したノカはアヤと出会います。
直感とでも言いましょうか、ノカは自分に取り入る何かがアヤに危害を加えると思いました。
だからこそ、ノカは言います。
逃げて、と。
逃げ出したアヤはいなくなったノカのことを探そうとしますが見つかりません。
そこに紙芝居屋がやってきて、何か手伝えることはないかと尋ねてきました。
アヤは猫の手を借りるようにノカのことを相談すると、紙芝居屋は知り合いの桃太郎を呼び出します。
桃太郎はおともであるイヌ、サル、キジを引き連れて現れたので、紙芝居屋はアヤを手伝うようにと命じます。
アヤは桃太郎と一緒にノカを探していると、赤いずきんを被った怪物が現れ、襲いかかってきました。
けれど桃太郎は赤いずきんの怪物を追い払うことに成功します。
その後も桃太郎はアヤと協力してノカを探しますが見つかりません。
そんなある日、紙芝居屋が赤いずきんに襲われます。何とか紙芝居屋は逃げ出し、さらにノカの手がかりを見つけました。
そんなある日、事件が起こります。ノカの彼氏タツヒトがいなくなってしまったのです。
その前の日、ノカはタツヒトに問い詰められていました。タツヒトはアヤが桃太郎と一緒にノカを探しているのが気に食わないようでした。
おれに任せろ、そう言ってタツヒトはどこかへと消えました。
それからタツヒトは見つかっていません。
タツヒトがいなくなった日の夜、アヤはオオカミに襲われます。けれども駆けつけたサルがなんとか撃退しました。サルはそのとき、怪我をしました。けれどキジが一鳴きすると、なんということでしょう、その傷は治ってしまいました。
オオカミと赤いずきんの怪物がアヤを狙っていると分かった紙芝居屋はその怪物を懲らしめるため、その二匹をおびき寄せます。
けれども紙芝居屋は桃太郎たちに命じてオオカミを倒させると赤ずきんの怪物をアヤへと近づけました。
すると赤ずきんの怪物は途端に大人しくなり、バスケットからぬいぐるみを取り出します。
アヤはおそるおそるそのぬいぐるみを手に取ると、赤いずきんの怪物の姿が見る見るうちに変わっていきます。
そして現れたのはノカでした。
ウサギに唆され、怪物へと姿を変えたノカはアヤに謝ることで、ウサギにかけられた呪いが解けたのです。
同時にオオカミにも変化が訪れました。オオカミの正体は呪いをかけられたタツヒトでした。ノカとアヤの友情がタツヒトの呪いも打ち砕いたのです。
そして次の日、紙芝居屋は見ました。
アヤとノカ、タツヒトが三人仲良く歩いているのを。
おしまい






