断章三・さいごのおはなし
むかーし、むかし、ひとりの女の子がいました。
その女の子は幼いときに父親を失い、つい最近、妹と弟が行方不明になりました。
その女の子はなんて世界は理不尽なのだろうと思いました。
けれどたったひとりになってしまったので無理もありませんでした。
ある日、女の子は妹の遺品を整理するため、部屋を片付けていました。
妹に分配した父親の遺品を整理していくと、その女の子は自分が持っている資料と似たような資料があることに気づきました。
その女の子が持っていた資料もまた父親の遺品でした。けれども女の子が持っていたその資料はそれだけではなんら意味をなさなかったため、女の子は、その資料がどういうものか理解することはできませんでした。
しかし妹の持っていた資料を読んで、女の子はその資料の意味を理解しました。
さらに妹が消えると同時に現れた“怪異”がどのようにして現れたのか、なんとなくですが理解してしまいました。
込み上げてきたのはこのような術を遺した父親への怒りと、そのせいでひとりぼっちになってしまったというやり場のない怒りでした。
しかしその女の子もまた御伽造成術に身を染めます。
妹を救うための手段がそれしか思いつかなかったのです。
その女の子は怒りと憎しみを込めて、さらに己が命を削って人を形作り、物語を創造したのです。
奇しくもそれが御伽造成術の完成のときでした。