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三章・そして物語は動き出す

 綾がお礼を言い、生徒会を出る頃にはすっかり日が落ちていた。

 芹彦がケータイで誰かと会話しているため、綾は生徒会室前の廊下で芹彦を待っていた。

 冬も近いためか廊下は隙間風でひんやりと冷えていた。コートを羽織っているものの、やはり足元は寒い。

 生徒会室で待っていてもいいといわれたものの、生徒会室では森彦と草子が打ち合わせをしているため、待ちづらかった。

「森彦、これが立里市にある死にスポットの位置だ」

 背伸びしてぎりぎり見える小窓を覗くと、机に地図が広げられているのが分かった。

「そのうち、赤い印が書いてある場所が、既にレッドキャップが人を襲った場所。でそれ以外の丸で囲ってある場所がまだレッドキャップが現れてない場所だ」

「キャッキャ。なんだよ、その数。死にスポット、多すぎだろ」

「不景気だからな」

 草子の言い訳に森彦は、なんだそりゃ、とぼやきつつ、

「ま、それでもやるっつったのはワシだからな。やってやるよ」

「迷惑かけるけど頼んだよ」

「キャッキャ。かけられるのはいつものこと。それよりも物語の特定は頼んだぜ」

「ああ」

 綾がそんな光景を見ていると、綾殿、綾殿、と綾を呼ぶ声が聞こえた。

「ひゃい!」

 後ろからいきなりだったため綾は驚きの声をあげる。綾が振り向くと、

「先ほどから待たせてばかりで悪いでござるが、部活関連でちょっと急用ができたでござる。もうしばし待っていてほしいでござる」

「分かりました。玄関で待ってます」

「すまぬでござる」

 そう言って芹彦は武道館のほうへと去っていく。綾はどうしてそっちに行ったのか、という疑問が芽生えたものの、すぐに昨日、芹彦が剣道部の主将だと教えてくれたことを思い出した。

 綾はひとり玄関へと向かう。

 廊下は静かだった。この時間帯、校舎に残っている生徒は少ない。

「ファイ、オー」

 野球部のかけ声がグランドから聞こえてくる。

 鈍色で統一された下駄箱に背を預け、綾は芹彦が来るのを待っていた。

「綾」

 しばらくして、綾の元に現れた人物は芹彦ではなかった。

「やっと見つけた。ずっと探していたんだ」

 現れたのは昨日、芹彦と帰る綾を追いかけた男、狩野(かのう)達人だった。

「達人くん、今日部活は?」

「休んだ」

 達人が無断で部活を休むと顧問がうるさいといつも愚痴るのを綾は知っていた。

 にもかかわらず部活を休んでまで自分を探していたというのは大層な事だ。

「どうしたの?」

 おそらく怒っていると気づいた綾の声は震えていた。

「昨日、弓道部が休みだったのは知ってるだろ」

 うん、と綾は頷く。達人と視線は合わさない。

「だからたまには綾と一緒に帰ろうと綾を探していたんだ。そしたらお前がござる先輩と帰ってるのを見たんだ――」

 達人は顔をそらしたままの綾を睨み、

「――どういうことだよ?」

「えっとね……ちょっと生徒会に相談があって」

 怪異のことは絶対に言うなと草子に釘を刺されているため、綾は言葉を濁す。

「それ、嘘だろ」

 だからこそ、そのわざとらしい物言いは、すぐに見破られる。

「本当のこと、言えよ」

 さらに達人は声を凄めて言った。ごまかしたことで火に油を注いだらしかった。

「言えないよ。言っちゃだめだって」

 ごまかしは通じないと判断した綾は、正直に言うなと言われたことを告げる。

「それにたぶん、達人くんは勘違いしているよ。私がござる先輩と帰ったのは、浮気なんかじゃない」

 それは達人の本心を見事に言い当てていた。

 昨日、達人は綾と芹彦が帰ったのを見て、浮気だと思ったのだ。

 自惚れが少し強い達人にとってそれは衝撃だった。なぜ、自分という彼氏がいるのに他の男と帰るのか。しかもよりにもよって、色々と有名なござる先輩と。

 だからこそ喧嘩になると踏んだ達人は今日のHR前や昼休憩にそのことに触れなかった。放課後の、しかも人気がなくなるのを待っていたのだ。

 ちなみに弓道部である達人は剣道部の芹彦と話したことはないものの、同じ武道館を使っているため、時折見かけることがある。

 芹彦の剣道の腕前は素人の達人から見ても巧いと思えた。それに芹彦は二学期の中間テストの順位も最上位に位置していたのを達人は覚えている。

 文武両道という言葉を送るとすれば、おそらく芹彦以外にいないと達人に思わせるほどだった。

 同時に達人は芹彦に嫉妬していた。

 だからこそ、自分が付き合っている綾と芹彦が一緒に帰る姿というのは衝撃だったのだ。

「だったら……なんで、一緒に帰ったんだよ。断ることもできただろ?」

 自分の想いを見透かされた苛立ちをぶつけるように綾へと言葉を吐き捨てる。

「だからそれは言えない」

「なんでだよ。なんで言えないんだよ。言えないってことはやっぱり言えないようなことしたんだろ?」

 静まった廊下で達人の怒鳴り声が響く。綾は首を振り、

「違うよ。そんなわけない。私は達人くんを裏切るようなことはしてないよ」

「ござる先輩と帰った時点で、もう裏切ってるよ!」

 達人は少しだけ涙目だった。

「だからそれには理由があるんだって!」

 聞き分けのない達人に苛立ってきた綾もついつい、大声をあげてしまう。

「だから! それについて話せよ!」

 怒鳴り声をあげて達人は綾の両肩を押した。綾の体は下駄箱にぶつかり、下駄箱がガンッと音を響かせる。

 言わないと放してくれそうもないと悟った綾は下駄箱に押さえつられたままで「分かったよ」と呟いた。

 少しだけ肩の拘束が緩むも綾が真相を話すまで達人は肩から手を放してくれそうもなかった。達人はまだ自分の浮気を疑っているのだ。

 綾は胸中で草子たち生徒会の面々にごめんなさいと謝ると、達人へと今回の事件を語り始めた。


 ***


 怪異という存在。

 それに自分が狙われていること。

 さらにそれが乃香の失踪に関わっていること。

 そして怪異はレッドキャップであることとその怪異の特徴。

 草子に教えてもらった全てを、綾は自分の彼氏である達人に喋っていた。

 そのたびに綾の胸は痛んだ。

「怪異……か。なんか聞いたことあるぞ、それ」

 綾の拘束を解いた達人は顎に手を当て、どこで聞いたのか思い出そうとしていた。

 そして思い出したのか、ああ、と声をあげ、

「確かネットの掲示板で見たんだ。数年前に大量に人を殺した〈絞首斬首人〉ってのが通称、怪異って呼ばれているって書き込みを見たことがある」

 達人が信じてくれるか分からないと心のどこかで思っていた綾だったが、達人はわりとすんなり信じてくれたようだった。

「そういやあれ、犯人が捕まったなんてニュース聞いてないな。いったいどうなったんだ?」

「それは私にも分かんないよ」

「まあいいや。とにかくここからはオレに任せろ」

「危ないよ」

「危ない? 彼女がその怪異に危ない目に遭わされているのに放っておけるわけがないだろ」

「それは大丈夫だよ。だって生徒会の人が守ってくれるから」

「オレのほうがござる先輩なんかよりも、ずっと綾を守れる」

 自分こそが綾の彼氏なのだと主張するがごとく達人はそう言い放つ。

「話してくれてありがとな、綾」

 そう告げながら達人は去っていった。

 どこに向かうかは明確だったが、綾は止めることができなかった。

 しばらく唖然として佇んでいると、

 「お待たせしたでござる」

 芹彦がやってきた。

 達人に喋ってしまったことを言うか言わないか迷った綾は結局言わなかった。

 というよりも言えなかった。

 罪悪感から喋ってしまったということを白状する気持ちはあったものの、自分のことを想って行動してくれる達人の好意を無駄にしたくないという気持ちのほうが強かった。

 なんだかんだ言って、綾も達人のことは好きなのだ。好きな人が自分のために危険を承知で体を張ってくれる。これほど嬉しいことはなかった。


 ***


 綾に事情を聞いた達人は、死にスポットへと走る。

 手には懐中電灯。

 口新市の住人は、街中に電灯がないことを知っているので大抵の人が懐中電灯を常備している。

 とはいえ、持っているというだけで、懐中電灯を使って夜道を歩く学生はあまりいない。

 ダサいからという理由で雨合羽を着た学生を見ないのと同じで、使って歩くとダサいように感じるから懐中電灯を持っているだけで使わないという学生が多いのが事実だった。

 走る速度に比例して、なぜ、自分を頼ってくれなかったのか、悔しさが増す。

 けれどなんとなくだが、自分の性格を理解している達人は綾が自分を頼らなかったことも理解していた。

 綾と乃香が行方不明になる前に会っていたこと、「逃げて」と呟いたことを仮に自分に喋っていたとしよう――、おそらく達人は乃香の行為を自分と綾を困らせようとやった当てつけではないのかと思ってしまったはずだ。

 何せ、自分が乃香と綾の関係にひびが入らないように、乃香には付き合っていることを隠しておこうと提案していたからだ。

 達人は死にスポットにたどり着く。

 そこは綾が初めて襲われた小売店の廃屋だった。

 ――歯を置いた場所には怪異は現れない。

 それは裏を返せば歯がない場所には再び怪異は現れるということだ。

 達人は小売店の廃屋に入ると懐中電灯で辺りを隈なく探す。小売店の隅、もとは電気配線のために使われていた穴だろう。その近くに歯は落ちていた。

 達人はその歯を拾い上げ、一旦小売店を出ると、その歯を遠くへと投げ飛ばした。

 途端、茂みから聞こえていた鈴虫の声が止んだ。

 そして今まで感じていた肌寒い空気がなにやら気味の悪いものに変わった。

 おそるおそる、後ろを振り向く。

 そこには誰もいなかった。

 少しホッとしたのも束の間、

「ババァァアアアアアアア!」

 頭上から声が聞こえ、達人が見上げると、そこには満月と重なる怪異の姿があった。

 怪異は斧を振り上げ――


 ***


 ――おかしい、と草子は感じていた。

 草子は売家と書かれた空き家にいた。ここはまだ怪異が訪れていない場所だった。

 けれどどれだけ待っても怪異は訪れない。

 ここ以外の、怪異が訪れていない場所は全て森彦が見張り、それ以外の廃墟には歯が落ちている。

 ゆえにここにしか怪異は現れないはずだった。

 なのに、待てども待てど怪異は現れる様子がない。

 どうなっている? ここは既に襲われていたのか?

 意味が分からない草子は、その空き家を隈なく探す。

 歯が落ちていれば自分の勘違いだったで済む。それ以外の廃墟は森彦が見張っているから怪異が現れる心配もない。被害者は出ない。

 また、明日違う廃墟に赴けばいい。

 けれど数十分かけて歯を探したにもかかわらず、草子は歯を見つけることはできなかった。

 草子は急いで芹彦に電話する。自分の推測が間違っていて綾に危険が及んだかもしれないという懸念があったのだ。

『もしもしでござる』

「芹彦、綾は無事か?」

『無事送り届け、拙者は家に帰る途中でござる』

「そうか。ということは無事なんだな?」

『……その言い方、もしや何か不測の事態が起こったでござるか?』

「ああ、少しね。詳しくは後で話す」

『拙者は何をすれば?』

「綾は伽羅が見守っているから大丈夫だろう。お前は健と玉臣に連絡して、また綾の家に向かってくれ」

『草子殿は?』

「あたしも向かうさ。森彦と伽羅にはこっちから連絡を入れるよ」

『分かったでござる』

 草子は芹彦との通話を終えると、急いで伽羅へと電話する。

 伽羅のケータイへと繋がるものの、伽羅はなぜだかそのケータイを取らない。いやむしろ取れない状態に陥っていると考えるべきか。

 となればやはり草子の知らぬところで何かが起こっているようだった。

 草子は伽羅への電話を取り止め、森彦へと電話をかける。

「森彦、すぐに綾の家に向かえ!」

『キャッキャ。何があったんだ?』

「説明している暇はない。いいからさっさと向かえ。きんと雲が使えるお前が一番早く着くはずだ」

『廃墟の見張りはどうする?』

「そのまま分身に見張りを続けさせろ。そのぐらいできるだろ?」

『ケッ、人使いが荒いねぇ……。まあいい、あんたには逆らえねぇからな』

「頼りにしてるよ」

『キャッキャ。任せておきなって』

 そして通話が途切れる。

 草子は伽羅に『何かあったらメールしろ』と送信すると、綾の家へと走り出す。

 遠く狼の鳴き声が聞こえたような気がした。


 ***


 犬の鳴き声がやけにうるさい。

 電信柱に同化するようにひっそりと、誰にも見つからないように息を潜めながら、伽羅はそんなことを思った。

 芹彦が綾を送ってから既に一時間。

 今日は草子の計略によって、怪異は草子の前に現れるため犠牲者が出ることはないはずだ。

 綾は既に家に帰っている。綾の母親は専業主婦のようで、常に家にいるから綾がひとりになることもなく、尚且つ光があれば怪異はあまりその場所へは近づかないため、安心だった。

 だから伽羅がここで綾を見守るのは、少し過剰な警戒とも言える。

 おそらく今日も何事もなく終わり、杞憂に終わるだろう。

 それでも伽羅は油断しない。過剰と思われても、余計と思われても、伽羅は常に万々が一を考えている。

 物語は何が起こるか分からない、とは草子の言葉だ。突拍子もない展開で読者を驚かせるのが物語だ。

 だからこそ伽羅は油断しない。そんな伽羅の覚悟とは裏腹に、伽羅のお腹が、食べ物寄越せ、と盛大かつ唐突に音を鳴らす。

 夕食に、と買っておいたアンパンを齧ると、つぶ餡の甘さが口の中に広がる。

 ぬるくなった牛乳でアンパンを胃の中に流し込むと、牛乳のまろやかな甘みがアンパンのしとやかな甘みと重なり、伽羅の空腹を満たし、疲労を飛ばす。

 毛糸の帽子とコートに身を包んでいても、晩秋の夜は肌寒い。

 それでも伽羅は闇夜の暗さに紛れて、綾を見守るのをやめない。

 その闇夜に、赤く光る眼が映った。

「グルルルルルルッ!」

 犬のような狼のような鳴き声が伽羅の耳に入る。

「なんだ?」

 気になって思わず、伽羅は携帯していたLED懐中電灯を取り出し、その声のほうへと光を向ける。

 ローファーに白い靴下。チェックのスラックスに黒いベルト。

 LED懐中電灯を移動させ、強烈な光が、下から上へと姿を映し出していく。

 ベルトの上、上半身は人間の骨格と代わらないものの全身が獣の毛に覆われていた。

 どんな獣の毛だろうかと疑問に思う前に、伽羅はLED懐中電灯を顔へと移動させる。そしてどんな獣の毛なのか一瞬で理解した。

 LED懐中電灯が照らし出す顔は狼とそっくりだった。

 同時に目の前の異形が、怪異であると伽羅は理解した。おそらく狼男が神話的要素だろう。

 狼男がLEDの眩しさに顔を歪めながら、吼えた。

「ガルルルルウウウウウウウウウウ!」

 辺りに雄叫びが鳴り響く。

 当然、綾もその雄叫びに気づいた。けれど不思議とその雄叫びに気づいたのは綾だけだった。

 もしかしたら怪異の事件に巻き込まれてない人は気づかないのかもしれなかった。

 綾は自分の部屋の窓を開け、光に照らされるそいつを見た。

 窓を開ける音に反応したのだろう、狼男は綾のほうへと顔を向ける。

「ガルルルルルウウウ!」

 それに綾は怯む。同時に怪異がレッドキャップ一匹だと思い込んでいた綾は、あれがなんであるか分からずにいた。

 その頃には既に伽羅は動き出していた。

 綾へと向けた咆哮は、今から綾を襲うという合図だと判断した伽羅は迷わず狼男へと体当たりをかました。

 綾を注視するあまり油断していたのか狼男は伽羅の体当たりを受け地面に倒れる。

 伽羅はそのまま押さえ込もうとするが、片手で簡単に振り払われる。

 伽羅は自分のケータイが鳴っていることに気づいたが、狼男と戦っている最中なので、それどころではないと判断。回避に専念する。

 綾は恐怖し、窓を閉め、カーテンを閉める。その隙間から顔を覗かせながら草子へと電話をかける。しかし話し中。

 すぐに切って今度はアドレス帳から『ござる先輩』を選択。芹彦へと電話をかけるも、こちらも話し中。

 健と森彦、玉臣の連絡先は知らないため連絡できない。

 ああ、もう伽羅さんがピンチなのに!

 助けを呼びたい綾は、電話は駄目でもメールならと思い、草子にメールを送る。

 電話と違いメールはいつ見るか分からないため、緊急時にはあまり便利とはいえない。

「グルアアアアアアアアアア!」

 文章を打っていると、外から窓をぶち割りそうなほど大きな雄叫び。

 カーテンの隙間から覗くと、一瞬だけ血が見えた。

 先程の咆哮が、狼男が痛みに耐えかねて発したものには聞こえなかった。

 だとすると……血を流したのは……。

 それが誰であるかを想像した綾は思わずケータイを落とした。

「伽羅さん!」

 慌てて窓を開け、伽羅を案じるように叫んだ。

 狼男はそれを見逃さない。

 狼男は窓から身を乗り出し叫ぶ綾めがけて跳躍。一気に間を詰める。大きく口を開け、綾の顔へと迫る。

 綾は目の前に迫る狼男を見て絶句していた。迂闊だったと言わざるを得ない。

 もう駄目だ、と綾が思った瞬間――狼男の左わき腹を長い棒が直撃する。

 狼男は体勢を崩し、隣の家の庭に落下する。

 綾は思わず左を見た。

 三十メートルぐらい先だろうか、そこには黄金色の雲が見える。

 徐々に近づくその雲を目を凝らしながら見ていると、その雲に森彦が乗っているのが分かった。

 おそらく狼男を攻撃したのは森彦だろう。けれど、どうやって距離の離れた場所から狼男に攻撃したのか分からなかった。

 森彦は綾が覗く窓の前まで来ると、

「キャッキャ。レッドキャップだったら最悪だったが、犬コロかよ」

 こいつもやっぱり最悪だな、とひとり毒づく。

「なぜならワシは犬が大嫌いだからな」

 聞いてもないのにぼやく森彦に、

「ありがとうございます。助かりました。でもなんでここに。それにそれは?」

 お礼を告げた綾はさらに質問を繰り出す。

「礼は草子さんに言いな。ワシは命令に従ったまでだからな」

 次いで森彦は自分が乗る雲を指し、「それとこれはワシの秘密兵器。キャッキャ!」と豪快に笑う。

 さらに、綾ちゃんだったよな。と名前を確かめてから、忠告を紡ぐ。

「いいか。窓を閉めてカーテンを閉めて、電気を消して、とっとと寝ちまいな。じゃないと悪夢を見ちまうぜ」

「わ、分かりました」

 脅しにも聞こえる森彦の忠告に綾は大人しく従い、窓を閉め、カーテンを閉めた。カーテンの向こうで森彦がどこかに行くのが見えた。たぶん隣の庭に落ちた狼男を倒しに行ったのだろう。

 けれど綾が従ったのはカーテンを閉めるところまでだった。

 綾はあの狼男がなんであるか知りたかった。この時点で綾はこの狼男が怪異であることを悟っていた。そして自分を狙う以上、乃香の事件に関係あるとも。

 だからこそ、知りたい。

 綾はパジャマの上からコートを羽織ると懐中電灯を持ち出し、部屋の電気を消して外へと出た。


 ***


 狼男を追って隣の庭に着地した森彦だったが、狼男の姿はすでにそこにはなかった。

 周囲を見渡し、狼男を探すと左方から音。

 左へと顔を向けるとそこには誰もおらず、石が転がっていくのだけが見えた。

 それが何を意味するのか気づいた森彦だったが、瞬間、肩に強烈な痛みが走る。

 森彦の右肩は狼男によって抉られていた。肉が殺がれ、白い骨が見える。血が右腕を伝って地面に落ちる。

 さらに狼の攻撃は止まらない。鋭い爪で腹を切り裂き、膝で顎を砕く。さらに大きく開いた口を楽彦の頭にいれ、思いっきり噛み砕く。

 森彦の頭蓋骨が粉々に砕かれる。

 ――はずだった。けれど森彦の身体は噛み砕かれる寸前で消え、そこには髪の毛が一本だけ残った。

 当然、狼男は戸惑う。

「キャッキャ!」

 狼男の頭上から笑い声。

「どこにいるか分からねぇ敵を無防備に探しにいくわけねぇだろ、この阿呆がっ!」

 そこには金属製の長い棒を持った森彦の姿があった。

 先程まで狼男が相手をしていたのは、森彦が作り出した分身だった。

 大きく振り下ろした棒が狼男の頭に炸裂する。少しよろめいた狼男だったが、素早く後退し、体勢を立て直す。

 そして、森彦を睨みつけ、吼える。その咆哮はよくも騙してくれたなと怒っているように感じられた。

 直後、背後から強い衝撃。しかし狼男はなんとか踏ん張る。森彦の仕業かと思ったが狼男の眼前には森彦がいた。

 一瞬だけ狼男が後ろを見るとそこにも森彦の姿。つまり分身に狼男は殴られたのだ。

「ガルルルルルウゥウウウ!」

 咆哮と同時に体を捻って鋭い爪の生えた腕を振り上げ思いっきり背後の森彦の分身を殴る。

 すると煙のように霧散して髪の毛だけが残った。

 分身を攻撃したことで、狼男は森彦本人に背を向けることになってしまった。森彦は棒を横に大きく振り回し、狼男の膝元を打とうとした。

 狼男は棒が風を切る音でそれを察知したのか、大きく前へと転がりそれを避けようとした。その刹那、

「伸びろ、如意棒っ!」

 叫びに呼応して森彦が握る棒が前転して避けようとする狼男の横まで延びた。

 森彦はそのまま一気に薙ぎ払う。狼男は身体の右側面を棒で殴られ、反対の塀にぶつかり、動かなくなった。

 そこに懐中電灯の淡い光が当たる。

 狼男に光を当てたのは綾だった。

「来るなって言ったはずだよな?」

 綾の姿を見て森彦が糾弾する。

「ごめんなさい。でもどうしても知りたくて」

 チッ、と舌打ちをした森彦は「まあいい。けどまだ近づくな」と忠告。

 そう、この程度で怪異はやられない。そもそも怪異が怪異の姿をしている以上、やられたとは言えない。

 それは森彦の言葉通りだった。

 狼男はカッと目を開き、光を当てる綾へと襲いかかった。

 恐怖に足を竦ませる綾に狼男が噛みつく寸前、森彦が握っていた如意棒が再び延び、狼男の顔面を突いた。

 狼男は悲鳴をあげ、体勢を崩しごろごろと地面に転がり、立ち上がる。

「ワオーーーーーーーーン!」

 このままでは分が悪いと判断したのだろう、遠吠えをして逃げ去っていった。

「逃げやがったか、負け犬め!」

 森彦が逃げられた腹いせに文句を垂れる。

「ごめんなさい。私……邪魔しましたよね?」

「全く。とんだじゃじゃ馬だな、てめぇは」

 そう吐き捨て、森彦は庭から道路へと出た。

「ごめんなさい。でも助けてくれてありがとうございます」

「ああ、当たり前だろ。こっちはてめぇを殺さないように動いてるんだからな、ちったあ考えて動け」

 ごめんなさい、と綾はもう一度小さく呟くと森彦の後に続く。

 森彦は綾の家の前、電信柱の近くに横たわる伽羅を見つけた。

「こいつは重傷だな」

 脈を触り、森彦は呟いた。

 綾が懐中電灯を伽羅の身体に当てる。伽羅の胸はぽっかりと穴を開け、心臓が潰れていた。

「キャアアアアア!」

 綾はそれを見て悲鳴をあげた。

 重傷などではなかった。どう見ても死んでいた。

「慌てんなよ。まだ大丈夫だっての」

 伽羅の死体を見てもなお、森彦は落ち着き払っている。

 背後に足音が響いた。

「大丈夫だったか、綾?」

 声の主は草子だった。後ろには芹彦たちの姿が見える。

「伽羅さんが……伽羅さんが……」

 綾は草子たちを懐中電灯で照らし、呟いた。綾は気が動転していた。

 草子は自らが持っていた懐中電灯で伽羅の姿を映す。

「これはまたド派手にやられちまったね」

「とりあえず学校の保健室に運ぶでござる」

「それからミーの出番デスね」

「ああ、いつも通り頼んだよ」

 伽羅が死んだというのに、冷静に話を進める草子たちが綾には理解できなかった。

「綾殿も来て欲しいでござる」

 それでも綾は促されるまま、草子たちとともに学校へと赴いた。

 空には満月が浮かんでいた。


 ***


「伽羅さんは……大丈夫なんですか?」

 保健室の前、ひんやりと冷えた廊下で綾は芹彦に尋ねた。大丈夫なはずはないと思いながらも、そう尋ねずにはいられなかったのだ。

「大丈夫でござるよ」

 けれども芹彦はそう答えた。

「だけど伽羅さんは胸に穴が空いていたんですよ! 間違いなく死んでます!」

 仲間が死んだというのに落ち着き払った生徒会の面々の表情が癪に障る。

 伽羅の胸に穴が空いている光景を思い出してしまった綾は少しだけ涙目になった。

「大丈夫でござる」

 それでも芹彦はそう呟いた。「伽羅殿がああなったのは、今回が初めてではないのでござるよ」

「えっ? ……どういうことですか?」

「……詳しくは話せぬでござるが、何にせよ、伽羅殿は大丈夫でござるよ」

 何か言えない事情かあるのだろう、芹彦は言葉を濁した。

 綾は少しだけ不服だった。けれどもある意味、自分のせいで伽羅があんなことになったのだ。だからこそ綾は芹彦の「大丈夫」という言葉にすがらずにはいられなかった。

「慣れというものは怖いでござるな」

 綾が何も言わなくなると芹彦はひとり呟いた。

「大丈夫だと分かっていても、伽羅殿がああなってしまったのならば悲しむのがフツーでござる。なのに何度も経験しているうちに、それがフツーだと慣れてしまったのでござる」

 そう語る芹彦はとても哀しそうな目をしていた。

 と、草子が保健室から出てくる。後ろには健と森彦。玉臣だけが保健室に残っているようだった。

「伽羅さんは、どうなったんですか?」

「大丈夫だ。すぐに治る」

 草子の言葉に同意して、「キャッキャ。そうだな、今まで何度もあったことだ」と森彦は豪快に笑う。

 ふたりとも伽羅がああなることには慣れているようだった。

 健は話に加わらず、窓の外を見つめていた。

「それよりも、綾……訊きたいことがあるんだ」

 草子の鬼気迫る表情に綾は思わず唾を飲んだ。


 ***


 白い寝台の上に伽羅の死体は寝かされていた。

 服を脱がされ、貫かれた胸の穴が露出している。

 その穴を月明かりが照らしていた。

 開放された窓から入る夜風が保健室を冷やし、伽羅の寝台を囲うカーテンがゆらゆらと動く。

 玉臣は伽羅の眠る寝台の横にひとり立っていた。

 右手に持っているのは手術用のメス。

 玉臣は自分の左腕を伽羅の胸に開いた穴の上に持っていく。

 玉臣は、自らの手首を切った。切り口から血が流れる。

 流れた血はそのまま下へと落ち、伽羅の胸の穴へと入っていく。

 やがて変化が訪れる。

 伽羅の胸に開いた穴から見える心臓が活動を始め、穴が徐々に、徐々に塞がっていく。

 伽羅の穴がもうすぐで塞がるという頃、玉臣の左手首の傷は既に治っていた。

 そして伽羅は目を開けた。

 冷たい夜風が伽羅の身体を冷やし、鳥肌を立てる。

 起き上がった伽羅へと玉臣は新品のワイシャツを渡す。

「また、迷惑をかけたみたいですね」

 そう言いつつ、伽羅はワイシャツの袖を通す。

「イエス。後で草子サンには謝っといたほうがいいデスヨ。強がりなので、他人には見せたりしませんが、本当は心配していたと思いマスから」

「ええ、分かってます。でもなんで、もう一匹怪異が現れたんでしょうか」

 ワイシャツのボタンを留めながら、伽羅が尋ねると、

「それを今、草子サンが問い詰めているところデス」

 玉臣が答え、さらに「とはいえ、伽羅サンも薄々気づいているでしょう?」と尋ね返した。

 伽羅が玉臣の問いに頷くのと、大きな破砕音は一緒だった。

「行きましょう」

 その音が気になった伽羅は、玉臣とともに廊下へと急いだ。


 ***


「何を……ですか?」

 訊きたいことがある、草子にそう言われた綾はおそるおそるそう尋ねた。

「……誰かに怪異のことを話しただろ?」

 草子の問いかけに綾の身体はビクンと震えた。

 それだけでおそらくバレただろう。けれど元より喋ったという罪の意識を感じてはいたのだ。

 だからこそ綾は正直に言う。

「ござる先輩と帰るのを付き合っている男子に見られ、問い詰められたんです。だから、つい……」

 けれどその物言いは言い訳のようにも聞こえる。

「それで、彼氏は?」

「廃墟に行ってみるって私が初めて怪異とあったコンビニに……」

「ああ、やっぱりか」

 これは困ったと言わんばかりに、草子は目を瞑り、眉間を指で押さえる。

「先に言っておくべきだったね。言いかい、綾……」

 その言葉はガラスが割れる音によって遮られる。

 草子の後ろ、綾の正面にある廊下の窓が割れていた。

 そして廊下にガラスの破片が飛び散るのと同時に、入ってきたものがいる。

「お出ましか……」

 翻り、そいつを見ると草子は呟いた。

 狼男がそこにはいた。

 しかし草子は慌てもしなかった。

 なぜなら、既に健が動き出していたのだ。

 健が窓の外を見ていたのは、もしかしたらその存在に気づいていたからかもしれなかった。

 芹彦と森彦が草子と綾の盾になるように前へと出る。

「健さんひとりで大丈夫ですか?」

 綾は心配になって芹彦に尋ねてみた。すると、

「大丈夫でござるよ。健は強いでござるから」

 そして保健室の扉が開く。

「草子サン、何があったんデスか?」

「玉臣か。なあに、ちょっと怪異に襲撃されただけさ。それよりも伽羅は?」

 草子の問いかけに、玉臣の後ろからひょっこりと伽羅は顔を出し、

「僕は無事です。ご迷惑をおかけしました」

「伽羅さん、無事だったんですね。良かった。私……私……死んじゃったと思ってました」

「ハハハ」

 綾の言葉に伽羅は愛想笑いしかできなかった。真実を語るにはまだ早い。

「ガアアアアアアアアルウルウルル!」

 伽羅の生還を喜ぶ会話を引き裂くように、狼男が咆哮。それに併せて、健も吼えた。

 健の姿に変化が起こる。

「一気に片を付けるつもりでござるな」

 高みの見物のように、芹彦が呟く。

 その傍ら、健の髪の毛が、電流が奔ったように逆立った。

「キャッキャ。気に食わねぇ。あいつ、なんか怒ってんの?」

 変貌していく姿を見ながら森彦が呟く。

 その傍ら、健の右目は内側へ、左目は外側へと飛び出す。

「な、なんなんですか、あれ」

 その姿を初めて見た綾は思わず呻いてしまった。

 それは異形だった。骨は捻じ曲がり、よもや人ではなかった。顎は大人の頭ぐらいあり、髪の毛からは血が滴る。大きく口を開けるとそこには鋭い牙が上下に四本ずつ生えていた。

 健はその姿のまま、四本の足で獣のように狼男へと走り出す。

 狼男も走り出し、間合いを詰める。そして鋭い爪を持ってして切り裂こうとした瞬間、健はありえない方向に体を捻り、それを回避。

 そのまま腹へと蹴りを入れた。

 さらに健は蹴り飛ばした狼男へと瞬時に間合いを詰め、肩を牙で抉る。

 狼男が痛みに喘ぐ。肩から離れた健は、狼男へとのしかかり押し倒すと、そのまま、狼男の腹を何発も殴った。

 その一方的な戦いは、戦闘というよりも、殺戮だった。

 ぐったりとした狼男は健が手を止めても、反撃しようとはしなかった。いやできなかった。それほどまでにコテンパンに叩きのめされた。

 それでも健は容赦などしなかった。

 健の手に光が集束する。そして集まった光は槍を象る。

 その槍は一二〇センチほどの長さで穂先に稲妻のようなギザギザの切れ込みが入っている――『雷の投擲』を意味する魔槍ゲイ・ボルグだった。

 健はそのまま、狼男の心臓めがけて魔槍を突き刺す。

 刺された心臓から血が流れる。痛みに耐えかねて狼男が、音にならない声で叫ぶ。

 最初はそれだけだった。

 やがて狼男の口から吐血。

 ゲイ・ボルグの穂先、稲妻の切り込みから衝撃波のような斬撃が飛び、刺された場所以外の内臓もズタズタにしていた。

 体内をズタボロにされた狼男は少し弛緩したあと、動かなくなる。

「死んだんですか?」

 それを見ていた綾が呟いた。

「いいや、死なないよ――」

 草子が呟く傍ら、健の姿が元へと戻り、そのままその場に倒れた。

「力を使いすぎたでござるな」

 呆れ顔で芹彦は健の元へと歩いていく。一緒に森彦と玉臣も歩いていった。

「――怪異は、倒しても死なない」

「じゃあ、どうやって倒すんですか?」

「倒し方を知る前に、綾は残酷な真実を知らなきゃならない」

 そう言って草子は目の前を指した。

 森彦と玉臣が引きずりながらこちらへと狼男を運んでいた。

「ほらよ」

 狼男を綾の前へと置いた。動かないと分かっても、綾は驚き退く。

 健が貫いたはずの心臓は徐々に元に戻りかけていた。

「傷が治ってからが本番デスよ」

 だから綾はただただ待った。何が起こるのだろうかと不安が増す。

 健を背負った芹彦も、綾へと近寄る。

 貫かれた心臓が元に戻り、皮膚が再生を始める。

 完全に傷が塞がった頃、さらに狼男に変化が訪れる。

 狼男を覆う体毛が徐々に少なくなっていき、狼の顔も、磨り減るように人間の顔へと戻っていく。

 そして現れたのは、綾がよく見知った人間――狩野達人だった。

 その姿を見て、綾は声を失う。信じられなかった。

 自分を襲った怪異の正体が、自分の彼氏であるなど、と。

「怪異は、物語をなぞるように行動するって言ったね?」

 微動だにしない綾へと問いかける草子。綾が何も反応しなくとも、草子は言葉を続ける。

「物語ってのは、大抵ひとりじゃ進行しない。主役以外の配役だって当然いる。じゃあその役はどうやって、作るのか」

 草子が喋る傍ら、健を近くの床に寝かせた芹彦はどこからともなく縄を取り出し、達人を縛り始めた。

「そんなのは簡単だ。物語に関わっている人間の周囲の人間を巻き込めばいい」

「だから……草子さんは、誰かに怪異のことを言うな、って言ったんですね」

「そうだ。怪異の存在を知れば、そして、友人ましてや恋人が巻き込まれていれば、誰だって助けようとする。そして怪異に会えば、物語に巻き込まれる」

「達人くんはどうなるんですか?」

「今は、怪異が力尽きたため人間の姿に戻っているが、傷が癒え、怪異の力が蘇れば再び狼男に変身する。助けるには物語を完結させるしかない」

 だからこそ、再び怪異になった時、狼男が暴れないように芹彦は達人を縛っていたのだった。

「あのレッドキャップの怪異を倒すってことですか?」

「それで物語が完結するなら、そうせざるを得ないね。でも物語において主人公が迎える結末は大抵がハッピーエンドだ」

「その言い方、もしかして物語が特定できた感じですか?」

「ああ、おそらく間違いない。とはいえ、今日は、レッドキャップは出てこないだろうね」

「ということは……」

「ああ。明日、この物語に幕を下ろそう」

 狼男にされた達人を太めの縄で縛りつけた草子たちは生徒会室に狼男を閉じ込めて、帰路につく。

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