断章一・にばんめのおはなし
むかーし、むかしひとりの女の子がいました。
その女の子は何がきっかけか分かりませんが、同じクラスの女の子たちからイジめられていました。
とはいえ、女の子はイジめられていると思ってはいませんでした。
だからこそ、その女の子は誰も恨むことはありませんでした。
代わりにその女の子はこう思いました。
わたしを殴るよりも、本を読むほうがずっと面白いのに、なんでみんな本を読まないんだろう。
女の子がそう思ったのには当然理由がありました。
女の子は他人に構うより何より本を読むのが好きでした。
というよりも本の中に作られた不思議な国。それに夢中でした。
けれど同じクラスの女の子たちは女の子が勧めても誰も本を読もうとはしませんでした。
だから女の子は次にこう思ったのです。
この世界が本の中のように不思議でいっぱいの国になれば、本の面白さが分かるのになあ。
女の子はそこで初めて夢を抱きました。
いつかきっとこの世界を本の中の不思議な国と同じにしてやろう。
女の子は来る日も来る日も本の中の不思議な国に入り浸りながら、そう思い続けていました。
そうして数年の月日が流れ、その女の子は中学生になりました。
それでも女の子は相変わらず他の女の子たちにイジめられていて、けれどやっぱり女の子はそれをものともしませんでした。