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邪宗の機神、月に吠える  作者: 下降現状
EP3 王国 -Regnum-
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魔術の夜

「……どういう事だ?」


 とある室内。


 魔術師は焦燥を含ませて携帯電話に向かって問う。魔術師である以上、魔術的な手段を用いて通信することも可能だが、利便性を考えたらこちらの方が上だ。魔術師であるというだけで、魔術に拘るのは二流だけだ。


 電話先からの返答を聞き、魔術師は苛立ちを隠すこと無く舌を打つ。


「外部からの魔術師が忍び込んでいる……なるほど、狙いはなんだ?」


 魔術師は再度問う。問わねばわからないことも有る。問えば分かることも有る。ならば問うてしまうべきだ。効率は重要だ。


「なるほど、そういう事か……いや、良い。問題はない」


 魔術師の目的が何だろうと、盤面はこちらに有利だ。勝利条件はあまりに多く、使える手駒のこちらに多い。


 頭数の不利がある可能性もあるが、それはゲームマスターとプレイヤーとでも言うべき、相手との条件格差が原因だ。文句は言えまい。


 勝てる。


「方法? 単純に二つある。侵入者を排除するか、針の進みを早めるかだ」


 ふ、と魔術師は笑う。


「どちらを取るかと言われれば、針の進みを早める方を選ばせてもらおう。戦闘能力も良くわからない魔術師と戦うなど、御免だ」


 魔術師同士の戦闘において、情報はそれなりに重要なものだ。戦場で名乗りを上げて戦うわけではない以上、相手の居場所と戦闘能力の把握、即ち情報収集から魔術師同士の戦いは始まると言える。


 相手が持ち込んでいる術式兵装、扱える魔術の程度を知り、奇襲を掛けることが出来れば実力差は覆すことが出来る。


 時間をかけて情報を集めることも可能であろう。しかし、それをする必要はない。戦わずに済むのなら戦いを避けるのもまた魔術師の有り様だ。戦場に出て戦う魔術師も居れば、学徒の魔術師も居る。


 ここに居る魔術師は、どちらかと言えば後者。フィールドワークを行うこともあるが、それも基本的には理論を実証するのが目的だ。


「儀式は予定より早める。きちんと責は果たす。心配はするな」


 そう言って、魔術師は通話を切った携帯電話を異空間に閉まった。


 別の魔術師の乱入は予定外の事だ。しかし、全てが全て予定通りになど行くわけがない。その上で目的を果たしてこそ一流と言える。


 ならばこそ、やってみせようではないか。


 これより始まるは魔術師同士の魔術戦。


 魔術の夜(マギ・ナイト)はこれより始まる。

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