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週刊三題  作者: 長岡壱月
Train-12.March 2013
58/500

(3) 試練の間

【お題】部屋、罠、伝説の剣

 ここではない世界、ここではない場所、ここではない剣と魔法の大地。

 世界は長らく魔物による被害に悩まされていた。

 ただ、それ自体は人々も「普通」としてある意味で慣れてはいた。だが……彼らを大いに

狼狽させ、絶望に陥れた存在があった。

 魔王である。

 それまでは散在する群れでしなかった魔物が、魔王という存在の出現によって統率され、

明確に人間達を滅ぼさんとする組織体と化したのである。

 人々は大いに狼狽した。歳月を追うごとに犠牲者は増え続け、それに比例して不安と恐怖

は加速的に膨れ上がっていく。

 故に人々は求めた。この闇に呑まれんとする世界を救う“勇者”を。

 そう……時はまさに大勇者時代。



「──う~む。本当にここが話にあった洞窟なんだろうか?」

 そんな時代の一齣に、群雄割拠する“勇者”のいちパーティがあった。

 その日彼らは、街で偶然仕入れたレア武器についての情報を元に、この人里離れた森の奥

にある洞窟へと足を踏み入れたのだった。

「ええ。地図で何度も確認したし間違いないわ。だけど……妙ね。魔物が全くといっていい

ほど出て来ないなんて」

「そりゃあどこでも出没エンカウントする訳でもないだろ。それよりほら、あっちに扉があるぜ!」

 一行は洞窟の中を慎重に進んでいた。

 しかし未だ魔物の姿はない。その事実に女魔法使いが訝しむが、先頭を行く戦士達はむし

ろ好都合だとばかりに意気揚々としている。加えて、目敏く松明を照らした先に今までとは

趣を変えたものがあることに気付く。

「……人工的な扉、だな。ここに例の武器が?」

「でしょうね。少なくとも、何か目的があって作られた場所がこの先にあると考えて間違い

はないと思いますよ」

「よしっ。じゃあちょっと待っててねー。この鍵、開けちゃうから」

 見上げるほど高く、洞窟の岩肌の中に埋め込まれた石材の扉。勇者が口にするように左右

の壁もまた、ある程度の幅まで切り崩されて同じ石材で覆われている。

 特に扉自体に警句の類が載っている訳ではないようだ。僧侶がじっと扉の規則正しい切れ

目を見つめて呟くのを横目に、ひょいっと女盗賊が早速掛けられている錠前の解除に取り掛

かり始める。

「……。オッケー、開いたよ!」

 ややあって、しっかりと封じられていた鍵が開いた。女盗賊が、戦士と一緒になってこの

大きな扉を力いっぱい押す。

 ギギギッと石の扉は観音開きになって開いた。勇者達一同は、不意に光が溢れたその先の

光景に眩しく手で庇を作り、そして驚愕する。

「おほ~っ!!」

 財宝だった。石材で囲まれた小部屋の中には、所狭しと積み上げられた金銀財宝が鎮座し

ていたのである。

 女盗賊が両目をゴールドマークにして部屋の中へ駆けていった。

「ちょ、ちょっと、気を付けなさいよ! ていうかあんた、盗賊シーフでしょうが」

 女魔法使いが生真面目に諌める中、残り四人も用心半分興味半分で室内へと入っていく。

「こりゃ凄ぇな。億は下らないじゃないか?」

「古代文字の装飾品もありますね。歴史的価値も大きそうです」

「大当たりね。でも、これだけの量どうやって持っていけばいいかなあ……?」

 暫くの間、一行は積み上げられた財宝をためつすがめつしていた。

 一体誰が何の為にここという場所を用意し、何故ここに溜め込んでいたのだろう?

 そんな疑問も過ぎったが、概ね愉悦の念は皆共有していると言ってよかった。

「全部なんて無理だろ。それよりも情報にあった武器だ。手に入れることができれば、魔王

討伐にも勢いがつく筈だ」

 しかし、事態は急激に変化する。

 仲間達が財宝に目を眩ませている間、苦笑しながら言う勇者が奥にある祭壇に向かって階

段を上り始めた、その次の瞬間だったのだ。

『──ッ!?』

 扉が、突然ひとりでに閉まったのである。

 出入り口は他にはない。戦士がいち早く駆け出し、開けようとした。

 だがまた鍵でも掛けられてしまったのか、入った時のように扉はびくともしない。女盗賊

ら残りの四人も加わって、何度も何度も押し開こうと試みた。

 ……しかし、それでも扉は二度と動くことはなかったのだった。

「これって、もしかして」

「十中八九罠、ですね……」

「くそっ! あのジジイ、騙しやがったな!」

「お、落ち着くんだ。まだ方法が──」

 仲間達は一挙に狼狽した。戦士の気性の荒さがここに出て裏目に出始める。

 勇者は胸奥を責任という槍が突き刺すような苦しみに襲われた。だが、だからこそ、ここ

で冷静さを放棄せずに皆と共に脱出する必要がある。

「……駄目よ」

 なのに、それを否定する言葉が仲間から返ってきた。

 先程から一歩退き、じっと眉を顰めて、己の掌に目を落としていた女魔法使いである。

「魔法が、使えなくなってる。MPせいしんりょくは温存してあるから、これは強制的な封印トラップも

同時に発動しているみたい」

「た、確かに。祈りが、通じません」

「じゃあ、離脱魔法エスケープも……?」

「……ええ。使えないわ」

 五人の表情から、それぞれ急速に希望が失せていくのが目に見えて分かった。

 物理的にも開けられない壊せない。加えて頼みの綱の魔法すら、封じられるという状況。

 ──閉じ込められた。

 五人は暫くの間言葉を失う。今自分達は、とんでもないトラップの中に囚われてしまったのだと。

「……すまない。僕の所為で皆を」

「ばっ、馬鹿野郎! 謝ってる場合か。……お前の所為じゃ、ねぇよ」

「そうね。財宝を前に油断した、私たち皆の責任よ」

 勇者の謝罪。だが仲間達はその言葉で憤ることはしなかった。

 たっぷり沈黙と間を置いて悟り始めていたのだ。ここで怒鳴っても非を擦り付けても、誰

一人として脱出できる訳ではない。むしろ自滅へと、一歩踏み出すだけのことだ。

「……ですが、なら一体どうやって脱出すれば……」

「うーん。定石で言えば、この部屋の何処かにトラップなりロックなりを解除する為の仕掛けがある

筈だよ。そもそもこの場所を作る段階で脱出手段を確保しておかないと、製作者自身が自滅し

ちゃう危険もある訳だから。……まぁ完全に外ロック式だと、もう外からの助けを待つしか

なくなるんだけどさ」

 女盗賊の言葉に、四人はつい黙り込んでしまった。

 最悪の場合、自力では出られないという可能性もある。だが。

「……こうしている時間が惜しい。皆でその解除の仕掛けを探そう!」

 意を決して顔を上げ、勇者は仲間達にそう声を掛ける。


 それから暫く、五人は黙々と決して広くは──財宝が積み上げられている所為というのも

あるが──ない室内の探索に時間を費やした。

 床や壁にそれらしいスイッチはないか?

 置かれている財宝の中に解除用のアイテムがあるのではないか?

 いや、もしかしたら積み上げられた財宝の下に実は隠し通路があるのではないか?

 だが……結果としてそのどれもがハズレだった。

 一体どれだけの時間と労力を費やしたのだろう? 

 紆余曲折の後、隠し通路の可能性に絞って、積み上げられた金銀の山を崩しては移す重労

働をほうほうの体で成したものの、それでも脱出口となるものは見つからなかった。

 どうっと、流石に五人は疲労のままに倒れ込む。

 当初は歓喜した金銀財宝の山も、こうなるとただの忌まわしい輝きわらいごえにしか見えなく、

聞こえなくなってしまう。

「畜生……。ぜぇ、何にも、ねぇじゃねぇか……」

「おっかしいなあ……何かしら手段があると思うんだけど……」

「ふぅ。も、もしかして、本当に外ロックしかないんですしょうか?」

「だとすれば、相当私達無駄に体力を使っちゃったわね……」

「……」

 石畳の地べたに寝転がりながら、五人は大きく肩で息をしていた。

 徒労感によって、ゆっくりとねっとりと這い寄って来る絶望という感情。勇者は仲間達の

やり取りを聞き、自身もぐったりと仰向けになったまま、むしろそれこそが人を滅ぼしかね

ないトラップであるのだろうと考えていた。

 何かある筈だ。何処か、何処か見落としているものが──。

(ん……?)

 そんな時だった。仰向けの勇者の視界に、ふと掠めるものがあった。

 祭壇だった。そう、この状況になった切欠となってしまった、如何にもという感じで大き

な宝箱が置かれていたあの祭壇である。

 まさか……。勇者は疲労した身体を押して立ち上がった。

 のそりと、再び階段を踏もうとした足が半ば条件反射的に止まる。じわりと嫌な汗が頬を

背中を伝っては残された可能性を拒もうとする。

「あれなのか?」

 すると背後から声が聞こえた。いつの間にか仲間達も立ち上がってこちらを見ていた。

「俺達も行くぜ」

「貴方だけをそう何度も苛ませる訳にはいきませんからね」

 数秒、勇者は目を見開いていたが、ややあって小さく頷いた。

 五人全員が横一列に並ぶ。女盗賊が試しに、先刻勇者が踏んだ階段に小石を投げてみるが

また罠が作動した様子は無い。……発動は一度きりの類ようのだ。

 互いの顔を見合わせ、頷いて、五人は足並みを揃えて祭壇へと続く階段を上った。

 緊張する胸の鼓動が自分でも分かるが、やはり特に何も起こらない。

 そして五人の前には、祭壇に置かれた大きな宝箱がすぐ目の前に映る。

「……開けるよ?」

 皆に確認を取り、女盗賊が慎重に宝箱を開けた。こちらは特に鍵や罠が施されている訳で

はないらしい。

 ただその中には、大小様々な──合計十本の剣が納められていたのである。

「……もしかして話にあったレア武器なのか?」

 目を瞬く一同。そんな中で最初に眉根を寄せて口を開いたのは、戦士だった。

 しかし、もう誰も迂闊に触ろうとはしない。もしかしたら手に取ったら新しい罠が──と

いう展開が待っているかもしれない。

「それっぽいのは幾つかあるけど……こんな所に促してきたおじいちゃんだよ? 鑑定して

みないと分からないけど、もしかしたらこれ全部がフェイクって可能性も」

「決して低くはないでしょうね。……でも、もうこの部屋の中はあらかた調べ尽くしたわ。

脱出手段になるものがあるとすれば、もうこれしかない」

 女魔法使いの一言で、一同は再び黙り込んだ。

 見れば勇者がじっと宝箱の中の剣を見つめている。

 如何にもといった装飾過多のもの。

 逆にやたらみすぼらしい古びたもの。

 或いは短剣の類だったり、異国風のものカタナであったり。

 それを、勇者はキッと意を決して手に取ろうとし──。

「止せ! さっきも言っただろ。一人で背負おうとするな」

 その手を、戦士に掴まれる。

「だ、だけど……」

「いいからいいから。まぁ、見とけって」

 代わりに戦士が一歩進んで宝箱の中を見つめた。視線が左右に何度も何度も動く。

「……これだ。如何にもレア武器って感じで罠だろうと思わせて、実はその逆を突いて実は

何ともないっていう高等テクニックだ」

 そして最終的に手に取ったのは、真ん中に位置する装飾過多の長剣だった。

 裏の裏。そういう事なのだろうが、勇者以下仲間達は流石に心配の表情を浮かべる。

「ほ、本当にそれで大丈夫なんですか!?」

「あんたが言うと、凄く薄っぺらく感じちゃうんだけど……」

「失敬な。怪しいものから片付けた方が確実だろうがよ」

「そりゃあ、そうだけど……」

「ま、待つんだ! やっぱりここは僕が──」

 だが……遅かった。

 勇者がもう一度彼を止めようとした、同時に戦士がこの剣を鞘から抜いた次の瞬間、何と

剣そのものが突然爆発したのだ。

 四人分の絶叫が響いた。戦士が避けられる筈もなかった。

 鎧が砕け、焼け焦げた戦士の身体がゴロゴロと階段を転げ落ちていく。

 ぐらぐらと瞳が世界が揺れる。やや遅れて僧侶が駆け出し、彼の治療に当たろうとする。

 しかし──今は魔法が使えない。

 いつものように手をかざし、呪文を唱えようとした所で彼はハッと我に返った。ふるふる

と首を横に振り、もたつく手つきで鞄の中から医術道具を取り出し始める。

「……」

 それでも届かなかった。

 爆発の炎と飛び散った無数の剣の欠片で、戦士の身体は既にボロボロになっていた。

 三人が引き攣った表情かおでゆっくりと顔を上げた僧侶を見遣る。

 彼は、涙を目に溜めながら静かに首を横に振った。

「──畜生ッ!!」

 ぶつけ所のない怒号をあげたのは、女盗賊だった。

 ブンッと握り締めた拳を振り、彼女はずんずんと再び宝箱へと近付く。

「落ち着きなさい! 迂闊に手に取ったら──」

「五月蝿いッ! あんたには従わない! 仲間が死んで冷静になんかいられるか!」

 女魔法使いが止めるも、彼女はそう顔を歪めて肩越しに振り返っていた。

 そして正面に向き直り大きく深呼吸をすると、新たな一本を──古ぼけた剣を手に取る。

「あいつの読みが違うってことは、典型的な部類でいいんだ。こいつで……扉を開ける!」

 だが、抜き放った後の彼女を、またもや悲劇が襲う。

 ザラリと刀身が抜けて空になった鞘の中から、紫色の粘液が溢れ出して彼女の顔面を包み

込んできたのである。

 毒だった。勇者達が駆けつけようとするが、遅かった。

 必死に伸ばした手。しかしそれは届かず、即効性の毒で顔面蒼白になった彼女はそのまま

力尽き、戦士と同様に階段を転げ落ちて二度と動かなくなった。

『…………』

 三人になった。

 亡骸と化した二人を僧侶が呆然として見下ろし、その姿を階段途中の勇者と女魔法使いが

言葉なく見遣っている。

「アレクス」

 ぽんと、女魔法使いが勇者の肩を叩いた。

 嫌な予感がした。それに強張っているのに妙に優しく感じられる声色。勇者は、恐る恐る

といった様子で振り返る。

「残りは、八本よ」

「……ああ。そう、だね」

「だから今度は一気に、全部を一気に抜いてみるわ。そうすれば」

「だ、駄目だ! それじゃあどちらにしろハズレが入っていることに……!」

「だからですよ」

 すると今度は、すっくと僧侶が立ち上がると勇者の背中に声を投げ掛けてきた。

「一人一本でやっていれば全滅の可能性があります。ならリスクを抱えてでも一気に抜いて

しまえばまだ活路は見出せる筈です。……キャメロンさん。僕もやります。八本より四本の

方がまだ、アタリを引いた瞬間に罠も全て止まるかもしれませんし」

「……物好きね」

「ふふ。貴女こそ」

 勇者は戸惑った。再び階段を上ってくる僧侶と、すぐ隣の女魔法使いが何やら示し合わせ

て笑っている。いや……間違いなく、自分の為に犠牲になろうとしている。

「待ってくれ! 方法が、方法がある筈だ! そう焦っては──」

「いいのよ」

 だから止めようとした。もうこれ以上仲間達を失う訳にはいかない。

「……私達と違って貴方は“勇者”候補の一人よ。この世界に光をもたらす存在になるかも

しれないの。だから、貴方は生き残らなくっちゃいけない。もしここで貴方を死なせて、私

達が生き残りでもしたら、仲間パーティとして失格じゃない?」

 なのに、二人はそう言って思い留まることはなかった。

 勇者──青年アレクスが止めるのも聞かず、一瞬振り返って笑みを溢しさえして、二人は

両腰に差した各々の四本を一斉に抜き放つ。

 ……なのに。二人は倒れた。

 僧侶は鞘から飛び出してきた鋸に首を跳ね飛ばされ、女魔術師はせり出してきた無数の黄

土色の触手に襲われ、身体中の精気を根こそぎ吸われて。

「キャメロン、デュオ!!」

 勇者は叫んだ。嗚咽さえすぐにやってきた。

 亡骸は四人なった。残るは自分一人になった。

 なのに、扉は開かない。仲間全てを失ったのに、まだ堅く閉ざされている。

「……何が、勇者だ……」

 青年は絶望する。理性という思考力がどんどん砕け散っていく音が脳内で反響する。

 ただ自分は、願っただけだ。

 魔物に苦しめられている人々全てを笑顔にしたい。その為に自身の剣術の心を活かせると

いうのなら。だから、自分は勇者などという大それた肩書きも甘んじて受け入れた。

 なのに。なのに。

「ぁ、あぁぁぁぁぁぁッ──!!」



 それから、どれほどの時間が経っただろう?

 彼らが文字通り命を賭けて開けようとした石扉を、ギィッと外から開けて覗き込んでいる

影が二つあった。

「おうおう。こいつは大量だな」

「だねー。にしてもまぁ、ものの見事な自滅だなこりゃ」

 二人は魔物だった。

 一方はでっぷりと太り手斧を装備した豚人オークで、一方はひょうきんな両目と口、鼻の窪みで

辛うじて表情の分かる緑の粘液種スライムだった。

 囮として設置したこの部屋、同胞らが溜め込んだ財宝の一部。

 その輝きの中に埋没するように、五人分の人間達の亡骸が転がっている。

「──今回も作戦は上手くいったようだな」

「あ、イビルシェイドさん。お疲れさまッス」

「はいですよ。ちょうど今片付いた所ですよー」

 するとそんな二人の背後に、ぬっと音もなく一人の老人が現れた。

 だが彼らはそんな登場に特に驚くこともなかった。するとフッと老人は笑い、次の瞬間、

みるみる内に輪郭から霞んでいったかと思うとその本来の姿──文字通りの影の姿形をした

魔物へと変貌を遂げる。

「最初は、誰が踏んだ?」

「勇者候補の男です。でもそれまでに残り四人が偽の剣フェイクを全部抜いちゃいましてね……」

「で、結局最後は、勇者候補が自棄になって自害したのですー」

「……ふむ」

 イビルシェイドは報告を聞くと、それだけを短く呟いて顎に手を遣っていた。

 再びオークとスライムが、対勇者候補間引き用トラップルームの中で自身の胸を剣で刺し

貫いた今回の勇者候補ターゲットを眺めている。

「ちょっと意外でしたね。“罠を起動させた本人を生贄にすれば開く”のに、何でわざわざ

勇者一人の為に関係ない自害なんてするのやら……」

「んー。でもあれじゃない? 人間達あいつらにとっては大事だからねー、勇者候補」

「そうだな。しかし全滅してくれるならそれに越したことはない。我々に害成す仇を少しで

も減らすことができるなら本懐であろうよ」

 そう語るイビルシェイドに、オークとスライムも「そうですね」とあっさりとした口調と

様子で返していた。魔物と人間、という区別以前に、両者は今や明確な敵なのだ。

「──長年同胞達を狩っては、骨肉を剥いで喰らったり道具にまでするような外道達など、

この地上に生かしてはおけんのだからな」

                                      (了)

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