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第2章 第2部 第4話 〜最強賢者、まさかの豆腐メンタル!?〜

仲間が増えるということは、

強さだけでなく、覚悟も背負うということ。


これまで三人で歩いてきた旅路は、

この章でひとつの“形”を得ます。


迫る脅威、試される連携、

そして、静かに芽生える決意。


それぞれが迷い、恐れ、

それでも前に進もうとする物語を、

どうか見届けてください。

戦場は、二つに分かれた。


 森の外縁(がいえん)

 大量の魔物を前に、アレインたちエルフの青年団が陣を張る。


「数は多いが、統率はない!」

「囲まれるな、三人一組で動け!」


 アレインが剣に持ち替え振り抜くと、風を裂くような一閃が魔物の首を跳ねた。


「右から来るぞ!」

「任せろ!」


 弓矢が連なり、魔物の群れを正確に射抜いていく。


「……すごい」

 離れた位置から戦況を見たニーナが思わず声を漏らす。


「さすが森の民ね」

 ユキネも短く感嘆(かんたん)する。


「アレインは昔から、こういう時一番頼りになるんです」

 プリモネは胸を張るが、その手はまだ少し震えていた。


「ほぉ……周りを気遣うとは、ずいぶん余裕じゃないか」


 魔界貴族の一人が、口角を吊り上げて(わら)う。


 その一言で、空気が変わる。


「来るわよ!」

 ユキネが低く告げ、刀を構えた。


「みんな、気をつけて!」

 ニーナの声と同時に、四人は臨戦態勢へ移る。


 最初に動いたのは、ティアだった。


「隙ありっ!」


 地を蹴り、金色の残像となって背後へ回り込む。


 だが


「遅い」


「っ!?」


 大柄な魔界貴族の腕が振るわれ、ティアの身体が弾き飛ばされる。


「ティア!!」

「平気……っ!」


 次の瞬間、ユキネが間合いを詰めた。


「はぁぁっ!!」


 鋭い一太刀。

 だが、リーダー格の貴族は半歩身を引き、紙一重で(かわ)す。


「悪くない剣だ」

「だが、まだ甘い」


「……っ!」


 ニーナが剣を掲げる。


「ルミナ・ブラスト!」


 光の奔流、しかし。


「無駄だ」


 風の障壁が展開され、光は霧散(むさん)した。


 直後、魔界貴族たちが同時に詠唱する。


「風よ」


 轟音と共に、渦巻く暴風。


「きゃっ!」

「ニーナ、耐えて!」


 身体が宙に浮き、防戦一方に追い込まれる三人。


 その時。


 後方で、震えていたプリモネが一歩前に出た。


「……だ、大丈夫……私は……」


 震える声。だが、詠唱は止まらない。


「生命よ、巡れ……力よ、宿れ……!」


 次の瞬間、柔らかな光が広がった。


「これは……!?」

 ニーナが目を見開く。


「回復と……身体強化を……同時に……!」


 プリモネの声と同時に、三人の身体が軽くなる。


「……力が、湧いてくる」

 ユキネが拳を握る。


「プリモネ、ありがとう!」

「わ、私……役に立ててますか……?」


「もちろんよ!」

 ティアが笑って親指を立てた。


 一方、その頃。


 森の外縁(がいえん)では。


「くっ……倒しても、倒しても……!」


 アレインたちは、無数に湧き続ける魔物に押され始めていた。


「数が減らない……!」

「このままじゃ……村が……!」


 その時。


 光の魔法陣が、前方に展開される。


「なっ……!?」


 驚くアレインたちの前に現れたのは


「遅れてすまぬな、アレインよ」


「長老……!?」


 森の奥から、長老をはじめ、避難していたエルフたちが現れた。


「我らとて、この森を捨てたわけではない」

「防御と回復は任せよ。お前たちは……」


「攻撃に集中しろ!!」


「……はい!!」


「いくぞ、みんな!!」

「うおぉぉぉ!!」


 瞬く間に、戦況は逆転していった。


 再び、主戦場。


 プリモネの支援で、四人は互角に渡り合っていた。


「ほぉ……面白い」

 リーダー格の貴族が舌打ちする。


「だが……決め手がないな?」


「それは、あんたたちもでしょ」

 ユキネが言い返す。


 その時。


「……もういい」


 大柄な貴族が、一歩前へ出た。


「俺一人で片をつける」

「お前らは下がっていろ」


「本気を出すのか?」

 リーダー格が肩をすくめる。

「好きにしろ」


 空気が…震えた。


 大柄な貴族の全身に、雷のような闘気が纏わりつく。


「来る……!」

 ニーナが叫ぶ。


 ――ガキィィン!!


「ぐっ……!!」


 ユキネが、ギリギリで刀を合わせる。


「はやい……っ!」


 次の一撃。


「ニーナ、危ない!!」

 ティアが抱き寄せ、間一髪で回避する。


「あ……ありがとう、ティア……」

「礼は後で!」


 大柄な貴族が(わら)う。


「その通りだ」

「俺は、雷戦らいせんのグラドゥス」


 魔界貴族の中でも、純粋な肉体強化と雷属性を極めた近接戦闘特化型。巨体に似合わぬ速度と、一撃必殺の破壊力を誇る存在。


「さぁ……」

 グラドゥスが拳を鳴らす。


「ここからが、本番だ」


 四人は、自然と円陣を組んだ。


 誰一人、退く者はいなかった。


 雷が、()えた。


「遅い!!」


 グラドゥスの拳が唸りを上げ、地面を抉る。


「くっ……!」

 ユキネが弾かれ、後退する。


「ユキネ!」

 ニーナが駆け寄ろうとするが


「来るぞ、ニーナ!!」

 ティアが叫ぶ。


 雷光が視界を裂いた。


「ぐっ……!!」


 ルミナスガードが(きし)み、ニーナの身体が吹き飛ばされる。


「はははは!!」

 グラドゥスが哄笑(こうしょう)する。

「それで終わりか? 銀月の後継者!!」


 その時。


「……まだです」


 小さく、だが確かな声。


 プリモネだった。


「プリモネ!?」

「無理しないで!」


 ニーナとユキネの声が重なる。


 だが、プリモネは首を振った。


「私……怖いです」

「でも……このまま誰かが傷つくのは……もっと、嫌なんです……!」


 震える手で、杖を握りしめる。


「銀月よ……力を……繋いで……!」


 次の瞬間。


 三人の武器が、同時に光を放った。


「これは……!?」

 ティアが目を見開く。


「……繋がってる」

 ユキネが息を呑む。


 銀色の光が、三人を一本の線で結んだ。


「……連携、できる」

 ニーナが確信する。


「ユキネ!」

「分かってる!」


「ティア!」

「任せて!!」


 一瞬の視線。


 それだけで、意思は通じた。


「行くぞぉぉぉ!!」

 ティアが最初に動く。


 残像すら残さぬ速度。

 グラドゥスの視界が追いつかない。


「ちっ」


「今よ!!」

 ティアの声。


 ユキネが踏み込む。


「はぁぁぁっ!!」


 銀月の刀が、雷を断ち切る。


「ぐっ……!?」

 初めて、グラドゥスの動きが鈍る。


「ニーナ!!」

「はい!!」


 ニーナが剣を掲げる。


「ルミナ・セイバー!!」


 剣身に、月光が凝縮される。


「無駄だぁぁ!!」

 グラドゥスが雷を纏い、迎撃に出る。


 だが。


「……今です……!」


 プリモネが、最後の詠唱を解き放った。


銀月共鳴ルナ・リンク最大展開!!」


 光が、爆ぜた。


 三人の力が、完全に一つになる。


「なっ……!?」

 グラドゥスの表情が歪む。


「これが」

 ユキネ。


「私たちの」

 ティア。


「答えです!!」

 ニーナ。


「銀月・連携必殺!(ルナ・シンクロニア)!」


 ニーナの剣が振り下ろされる。


 そこに、ユキネの斬撃が重なり、

 ティアの一撃が、光を貫く。


「う、ぉぉぉぉぉ!!」


 雷が、月光に呑まれ、轟音。


 しかし、グラドゥスの巨体は三人の攻撃を耐え抜いた。


 雷の闘気を纏ったグラドゥスが、一歩踏み出した瞬間

 空気が、張りつめた。


「まだ……終わってないわよ!」


 ティアが叫び、背後へ跳ぶ。

 ユキネは歯を食いしばり、刀を構え直す。


「次で……決める!」


 ニーナが銀月の剣を強く握りしめた、その時だった。


 ふらり。


 後方にいたプリモネが、一歩前に出た。


「……待ってください」


 震える声。

 だが、その瞳には逃げはなかった。


「プリモネ!? 下がって!」

 ニーナが振り向く。


 プリモネは小さく首を振った。


「……もう、隠れているだけは……嫌です」

「みんなが……命をかけて戦ってる……」

「だから……今度は……私が……」


 ゆっくりと、両手を胸の前で重ねる。


 その瞬間

 月光が、プリモネの足元に集まり始めた。


「なっ……!?」

 グラドゥスが初めて表情を歪める。


「まさか……銀月魔法だと……!?」


 プリモネの周囲に、淡い銀色の魔法陣が幾重にも展開されていく。

 それは攻撃魔法ではない。

 “裁定”の魔法。


「プリモネ……まさか……」

 ユキネが息を呑む。


 プリモネは、涙をこらえながら詠唱を始めた。


「月よ……」

「私に……少しだけ……勇気をください……」


 声は小さい。

 けれど、確かに世界に届いていた。


「銀月魔法【ルナ・ジャッジメント】」


 刹那。


 空が割れたかのように、純粋な銀の光柱が降り注ぐ。


「ぐ……ぉおおおおお!!」


 グラドゥスの雷の闘気が、触れた瞬間に霧散していく。

 魔界の力が、月の光に“拒絶”されていた。


「ば、馬鹿な……これは……浄化……!?」


 逃げ場はない。

 光は、敵意を持つ存在だけを正確に貫く。


 最後に、プリモネが小さく叫んだ。


「……この村を……」

「……みんなの居場所を……返して!!」


 閃光。


 グラドゥスの巨体が、銀の粒子となって砕け散った。


 ……静寂。


 森に、風の音だけが戻ってくる。


「…………」

 誰も、すぐには言葉を発せなかった。


 やがて

 プリモネの膝が、崩れ落ちる。


「……はぁ……はぁ……」


「プリモネ!!」

 ニーナが駆け寄り、抱きとめる。


「だ、大丈夫……?」

 ユキネもすぐに側へ。


 プリモネは、弱々しく笑った。


「……私……役に……立てましたか……?」


 その瞬間

 ニーナは、強く、強く抱きしめた。


「ええ……立ちました」

「あなたがいなかったら……勝てなかった」


 ティアも、ぽんと頭に手を置く。


「やるじゃん、大賢者」

「今のは……正真正銘、切り札だよ」


 プリモネの目から、静かに涙がこぼれる。


「……よかった……」


轟音が、森に残響した。


 グラドゥスの巨体が崩れ落ち、大地を揺らす。

 雷のような闘気は霧散し、空気が一気に冷えた。


「……ば、かな」


 残っていた魔界貴族の一人が、愕然と呟く。


「グラドゥスが……負けた?」

「しかも、地上の人間どもに……!」


 もう一人、リーダー格の貴族は、無言のまま倒れたグラドゥスを見下ろしていた。

 その表情には、怒りよりも計算があった。


「……なるほどな」


 低く、楽しげな声。


「銀月の後継者が複数」

「それに……大賢者クラスの魔力反応」


 視線が、ニーナ、ユキネ、ティア、そしてプリモネへと移る。


「これは……想定以上だ」


「お、おい!」

 焦ったようにもう一人が叫ぶ。


「撤退する気か!?」

「このまま引いたら、グラドゥスの名が…」


「名など、どうでもいい」


 リーダー格は冷たく言い放った。


「死んだ者は“駒として失敗した”だけだ」

「それ以上でも以下でもない」


「……っ!」


 その言葉に、部下の貴族は歯を噛みしめる。


 ニーナが一歩前に出る。


「逃がしません」

「これ以上、命を(もてあそ)ぶのなら」


 しかし、リーダー格の貴族は、くすりと笑った。


「姫騎士よ」

「今は……まだ早い」


 指を鳴らす。


 瞬間、足元の影が歪んだ。


「っ!?」

 ユキネが反応するが、その時にはもう遅い。


「今日のところは、ここまでだ」


 空間が、闇に溶ける。


「覚えておけ」

「“銀月”は、魔界にとって特別な獲物だ」


 最後に、プリモネへと視線を向ける。


「特に……そこの大賢者」

「次に会う時は……もっと面白い顔を見せてくれ」


「……!」


 闇が、完全に閉じた。


 残されたのは、静寂と

 倒れ伏したグラドゥスの亡骸だけ。


「……逃げた、か」


 ティアが舌打ちする。


「でも……ただ逃げた感じじゃないわね」

 ユキネが、険しい表情で言った。


 ニーナは、拳を握りしめ、呟く。


「……魔界は……」

「私たちを、はっきり“敵”として見始めた」


 その言葉に、誰も否定できなかった。


 戦いの翌朝。

 三人はプリモネの家の客間で、久しぶりに穏やかな朝を迎えていた。


「ふぁ〜……おはよう」


 眠たそうに目を擦りながら、ニーナが部屋から顔を出す。


「おはよう、ニーナ」

「おっす〜。よく眠れた?」

「お、おはようございます……」


 ユキネとティア、そしてプリモネはすでに起きており、簡素ながらも温かい朝食の準備をしていた。


「みんな早いね」

「戦いの後は、逆に目が冴えちゃって」

「緊張が抜けると、こうなるのよ」


 四人は小さく笑い合い、静かに朝食を囲む。

 昨日までの死闘が嘘のような、穏やかな時間だった。


 そこへ


「失礼します」


 戸口から顔を覗かせたのは、プリモネの弟・アレインだった。


「みなさん……昨日は、この村のために戦ってくださって、本当にありがとうございました」


 そう言うと、深々と頭を下げる。


「ちょ、ちょっとアレイン君! 顔を上げて!」

「私たちは当たり前のことをしただけよ」

「そうそう。助け合いでしょ?」


 慌てるニーナに、アレインは少し照れたように微笑んだ。


 出発の時、村の入り口にはアレイン始め、村長や数名のエルフ達が見送りに来ていた、和やかな雰囲気で雑談をしている。

 少しの沈黙の後、アレインが遠慮がちに口を開く。


「……もう、出発されるのですね」


 その声音には、わずかな寂しさが滲んでいた。


「ええ」

 ニーナは静かに頷く。

「私たちがここに長く留まれば、また魔界の者が現れるかもしれない。それに……」


 言葉を切り、遠くを見るニーナ。


 まだ、やるべきことがある。


 その時だった。


「す、すみませ〜んっ!」


 ばたばたと慌ただしい足音。


「わ、私も……皆さんと、い、一緒に旅がしたいです!」

「な、仲間に……入れてもらえませんか?」


 大きな荷物を抱え、息を切らしながら向かってくるのはプリモネだった。


 一瞬の静寂。


 そして


「もちろんだよ、プリモネ」

「これからもよろしく頼む」

「ふふ、また賑やかになるね」


 三人は当然のように笑って答えた。


「……っ」


 プリモネの目に、涙が浮かぶ。


「ありがとう…ございます…本当に、ありがとうございます……!」


「プリモネや」

 長老が杖をつきながら前に出る。

「これからはワシらも一丸となって、この村を守っていく。安心して行っておいで」


「姉さん」

 アレインも力強く言った。

「心置きなく旅をしてきて」


「長老……アレイン……」

 プリモネは涙を拭い、深く息を吸う。

「……行ってきます!」


 こうして

 プリモネはニーナたちの仲間となり、

 エルフたちに見送られながら、再び旅路へと歩き出した。


 新たな仲間と、新たな運命を胸に。


 物語は、さらに前へと進んでいく。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


ついに

プリモネ、正式加入です!


強者ではありません。

臆病で、泣き虫で、すぐ震えてしまう。

それでも彼女は「守りたいもの」のために立ち上がりました。


この物語で描きたかったのは、

「勇気とは、怖くないことではない」ということ。


怖くても、逃げたくても、

それでも前に立つ

その一歩こそが、仲間になる資格なのだと思っています。


ここから物語は、

仲間が増え、敵も強くなり、

少しずつ“優しい冒険”から“厳しい戦い”へと進んでいきます。


もしよろしければ、

感想・ブックマーク・評価などいただけると励みになります。


次章も、どうぞよろしくお願いします

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