第50話 生徒会『で?どうするの?』
――2月中旬。提出期限当日。放課後。
ホワイトボードは、
3日分の試行錯誤と迷走で、もはや地層になっていた。
・部長輪番制
・副部長3人体制
・全員共同部長
・部長という概念を廃止
・彩鼓先輩AI化(※華案)
・AI彩鼓 感情抑制モード
・みなみは顔
・澄香は書類
・真宵は裏
・華は自由
「……まず」
澄香が低い声で言う。
「“全員共同部長”って何ですか」
「民主的!」
華が元気よく。
「責任の分散!」
「意思決定の共有!」
「中道ナンチャラかんちゃらっていう政党じゃないんだからさ……」
彩鼓が、ぽつり。
――一瞬、沈黙。
「……あ」
みなみ。
「それ、
言われると急にダメな感じする」
「急に看板だけ立派なやつ」
真宵が頷く。
「誰も決断しないやつ」
「誰も謝らないやつ」
澄香。
「でも“全員部長”って響き、かっこよくない?」
華はまだ粘る。
「かっこいいだけで回らないのが組織」
澄香、即切り。
ホワイトボードの
**「全員共同部長」**に、
太い×が入る。
「はい、現実に戻ります」
彩鼓が手を叩く。
「締切、今日」
「知ってます!」
全員。
「じゃあ結論」
澄香が、最終案の紙を机に置く。
《来年度 はむ部運営体制(提出案)》
・部長職は置かない
・対外責任者は「代表」とする
・代表は月替わり持ち回り
・申請・書類:澄香
・技術・工作:真宵
・広報・外対応:みなみ
・華:雑音担当
「最後」
華。
「“雑音”って何」
「空気を壊す役」
「和ませる、じゃなくて?」
「実績ベースです」
「ひどい!」
「主に今日」
真宵。
みなみは紙を覗き込みながら言う。
「でも、これなら生徒会も突っ込めないね」
「突っ込まれたら?」
華。
「“中道政党ではありません”って言えばいい」
「余計ややこしくなる」
彩鼓は、少し黙ってから頷いた。
「……いいと思う」
「私が短大に行っても、
ちゃんと“回る”」
「回らなかったら?」
華。
「AI彩鼓起動」
「却下」
全員。
「生身で来る」
彩鼓は笑った。
「怒りにね」
澄香が書類を揃える。
「では、提出します」
「間に合う?」
「今すぐ行けば」
立ち上がりかけて――
「待って」
華。
「このホワイトボード、
写真撮らなくていい?」
「何の記念?」
みなみ。
「はむ部が
一番、政治思想に踏み込みかけた3日間」
「黒歴史」
「資料」
「消します」
澄香。
――結局、写真は撮った。
ホワイトボードは消した。
3日間。
少しカオスで、
少し遠回りで、
でもちゃんと「そこ」に落ちた。
はむ部は、
部長を失い、
中道ナンチャラかんちゃら化を回避し、
そして今日も通常運転だった。
「……ねえ」
華。
「もし本当に全員部長だったら」
「今ごろ何も決まってない」
真宵。
「それはそれで平和かも」
みなみ。
彩鼓は、部室のドアを閉めながら言った。
「――だから却下なのよ」
はむ部は、
ちゃんと前に進んだ…はず。




