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第48話 亀田紗友里…久々に襲来

新潟中央女子学園・無線部室。

午後の部室は、いつも通り静かに忙しかった。

彩鼓は、ヘッドセット越しに英語と数字を往復している。 海外通信の最中だ。

「……Roger. QSL confirmed. 73」

真宵は机いっぱいに基板を広げ、 半田ごてと真剣勝負をしている。

「……あ、これGND逆」

澄香は、分厚い書類を前にして、 寄付で届いた無線機の変更申請書を淡々と記入していた。

華は椅子に座り、 その全体を見渡しているだけ。

みなみは仕事で不在。

――完璧な通常運転。

そのとき。

ガラッ。

ドアが、遠慮なく開いた。

「失礼します」

その声を聞いた瞬間、 部室の空気が一段階だけ下がる。

華が、ちらっと視線を上げた。

「あ」

澄香も、ペンを止めずに言う。

「三回目ね」

真宵は顔も上げず。

「記録更新中」

彩鼓は通信を続けながら、親指だけ立てた。

「……QRMじゃないから大丈夫」

立っていたのは、 江南実業高校無線部部長――亀田紗友里。

完璧に整えた制服。 完璧に整えた表情。 そして、完璧に空回りしている気配。

「……覚えてますよね」

「もちろん」 華が即答。 「一回目は“活動内容が曖昧”」

「二回目は」 澄香。 「“大会に出ないのは怠慢”」

「今回は?」 真宵。 「三回目ボーナス?」

亀田のこめかみが、ぴくりと動く。

「今日は――」 「あなたたちの部活動としての在り方に」 「正式に、疑義を――」

「ちょっと待って」 華が手を挙げる。

「今、誰か困ってる?」

沈黙。

「校則、違反してる?」 華。

「……してません」

「電波法」 澄香。 「違反してる?」

「……してません」

「危険物」 真宵。 「出してる?」

「……出してません」

「騒音」 彩鼓。 「出してる?」

「……出してません」

四方向から、 合法・無害・静寂で包囲される。

亀田は、唇を噛んだ。

「でも――」 「それでも」 「“部活動”としては……!」

「部活動って」 澄香が顔を上げる。 「“誰のため”のもの?」

「学校の――」

「違う」 澄香は即答した。 「“やってる人”のため」

彩鼓が通信を切り、 静かにヘッドセットを外す。

「大会に出るのも正解」 「出ないのも正解」

「海外とつながるのも」 真宵。 「電子工作するのも正解」

「申請書書くのも」 華。 「正解」

「それ全部」 彩鼓が言う。 「“無線”」

亀田は、言葉を失う。

澄香が、机の上の書類を一枚差し出す。

「これ」 「今回の追加申請」

「寄付を受けた無線機」 「正式ルート」 「正式書式」

「……」

「三回目で聞くけど」 華が穏やかに言う。

「どこが、気に入らない?」

完全沈黙。

亀田の肩が、少し落ちた。

「……私は」 「江南実業の無線部を」 「“強い部”にしたい」

「強さって」 真宵がぼそっと言う。 「長続きすることじゃない?」

彩鼓が頷く。

「楽しくないと」 「人、残らない」

澄香が、最後に告げる。

「あなたのやり方も」 「間違いじゃない」

「でも」 「ここは、うちの部室」

華が立ち上がり、 ドアを軽く指差す。

「四回目は」 「アポ取ってからね」

数秒。

亀田は、 一度だけ深く頭を下げた。

「……失礼しました」

ドアが閉まる。

――ガチャ。

しばらく、静寂。

「……三回目にしては」 真宵。 「長持ちした」

「慣れたね」 彩鼓。

澄香はペンを取り直す。

「次は」 「たぶん理由変えてくる」

華が肩をすくめる。

「そのときは」 「そのとき」

その瞬間。

ガラッ。

「ただいまー!」

みなみが、元気よく戻ってきた。

「……え?」 「また何かあった?」

四人、声を揃える。

「何もない」 「通常」 「平和」 「三回目」

「三回目?」

みなみは首を傾げながら、 部室に入った。

――こうして、 亀田紗友里・三度目の襲来も はむぶの“日常力”により 静かに排除されたのだった。

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