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第42話 はむぶの長い1日…後日談その1

 新潟中央女子学園・アマチュア無線部の部室は、いつもの昼休みの喧騒から半歩ずれた静けさに包まれていた。

「……なんか妙に静かだねぇ、今日は」

白根彩鼓は椅子にどっかりと腰掛け、机に突っ伏したまま間延びした声を出した。

「部長がそう言うと、何か起こりそうで怖いんですけど」

西蒲真宵はノートPCの画面から目を離さず、キーボードを叩き続けながらツッコむ。

「えー、そんなことないでしょー。さて、冬休み明け最初のはむぶだし――」

彩鼓が言いかけたその瞬間、部室の空気を切り裂くような着信音が鳴った。

――ピピっピポー ピピッピポー

妙に実務的であり、なんかアメリカのドラマで捜査官のオッサンが使ってそうな電子音が、静かな室内に響く。

「……この着信音って……」

彩鼓がスマホを取り上げると、画面に表示された名前を見て一瞬目を瞬かせた。

《島見杏果》

「島見先輩!?」

部員たちの視線が一斉に彩鼓へ向く。

「出るよ……」

彩鼓は思わず通話ボタンをタップした。

『――久しぶり、彩鼓』

受話口から聞こえたのは、聞き覚えのある落ち着いた声。

「島見先輩、どうしたんですか急に……」

彩鼓が問いかける。

『覚えてるでしょ、4日にあった遭難の件』

その一言で、部室の空気が一変する。

「……はい?」

彩鼓の声が少し引き締まった。

 1月3日深夜から4日朝にかけて。新潟市西区・新川河口付近で、たったひとりでメンテナンスを行っていた小型の漁船が、潮流と風に流されて大荒れの日本海へと押し出されてしまった。岸からそう遠くない場所で発せられた微弱な遭難通信は、彩鼓の受信で捉えられた。波高がうねり、ノイズがまじるなかで、位置の特定は容易でなかったが、彩鼓たちは信号を拾い、断片的な情報をつなぎ合わせて位置推定を行い、最終的に関係機関へリレーした――。

 その結果、海上保安庁と地元漁協、沿岸各所の救助隊が連携し、遭難船は引き波を逃れて無事救助されたのだ。

「――あの救助のことを、ですか?」

彩鼓の声は、少し震えていた。

『そう。あの件でね、正式な評価が決まったのよ』

島見の声は、仕事の声だった。

『長野総合通信局の局長表彰。対象は――白根彩鼓、あなた個人と、はむぶとしての協力』

その告知に、彩鼓はしばらく言葉を失った。

「……局長表彰って、そんな……私たちが?」

澄香がぽつりと漏らす。

『ただし、条件があるの』

島見の声が続く。

「条件?」

彩鼓の眉が上がる。

『月潟財閥から報道NGが出たのよ。保安上の理由で詳細は非公開』

その名前が出ると、澄香の表情がわずかに変わった。

『だから式典も非公開になる。でもね――式と併せて、長野総合通信局の電波監視関係施設の見学もセットで企画したの。将来ある人材への教育的機会ってやつ』

島見の声は柔らかくなった。

「……で、うちを招待したと?」

彩鼓はゆっくりと部員たちを見回した。

「長野……来いって?」

澄香が小さく頷く。

「……はむぶで?」

寺尾華が目を輝かせた。

「うん! はむぶで、だって!」

彩鼓は照れくさそうに笑いながらも、決意を込めて立ち上がる。

「よし、行こう――長野総合通信局へ!」

その声に、部室は一気にざわめいた。

アメリカのテレビドラマで捜査官のオッサンが使ってそうな着信音…今更『24』かよ…というのはキーファーサザーランドがこの間捕まったから。

つか、最近、どきどきキャンプ見てねぇなぁ…

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