はむぶの1月4日 そういや…お前さ…
■ 1月4日 午前
ホテル「Tuki」の朝。
新潟中央女子学園・無線部――はむぶの面々は、
3日夜の修羅場で15時頃まで眠りこけてしまい、大事を取ってもう一泊することになり、あの騒ぎは嘘のような顔で朝食を囲んでいた。
「……平和だね」
真宵が言う。
「平和すぎて、逆に不安」
みなみが同意する。
「こういう時は」
華が言った。
「必ず、何か落ちている」
「落とし物?」
彩鼓が、トーストをかじりながら言う。
「違う」
華は彩鼓を見た。
「あなたです」
「私、忘れ物した?」
「存在が」
「忘れられてた」
「ひどいなあ」
■ 問題発生
みなみが、恐る恐る切り出す。 「彩鼓先輩……」
「なに?」
「学年って……」
「三年」
「高校の?」
「新潟中央女子学園・高等部の」
「……ですよね?」
一瞬の沈黙。
「……あ」
「“あ”って言った!」
「今、“あ”って!」
「気づいてなかった顔!」
■ 包囲開始
「進路!!」 真宵が机を叩く。
「受験!!」 華が指を差す。
「将来設計!!」 澄香が静かに追撃。
「えー……」 彩鼓は、フォークを置いた。 「その話、混信してるなあ」
「してません!」 「クリアです!」 「S/N比、最悪!」
■ のらりくらり・全力回避
「大学は?」 「ある」
「どこ?」 「日本」
「せめて県!」
「新潟」
「狭まった!」
「学部は?」 「文字が多い」
「雑!」
「受験勉強は?」 「気持ちの上では常に」
「それはゼロ!」
■ 逃走失敗
「模試は!?」 「受けた」
「判定は!?」 「アルファベットだった」
「Eでしょ!」
「色がついてた」
「赤でしょ!!」
■ 最終包囲網
澄香が、静かに、しかし確実に言う。 「白根先輩」 「内部進学、ですね?」
彩鼓、完全停止。
「……どうしてわかった」
「ここまで逃げ方が雑だと」 「逆に確信できます」
「ぐうの音も出ない」
■ 真相
「はい」 彩鼓は両手を上げた。 「内部進学」
「どこ!」 「新潟中央女子学園」
「学部!」 「短期大学部」
「短大!!」
「2年!!」
「軽い!!」
■ 彩鼓の理屈(軽)
「だって」 彩鼓はケロッと言った。 「2年なら、失敗しても軽傷」
「人生をラフに扱わないで!」
「それに」 「はむぶ、解散しないでしょ?」
「それ理由に使う!?」
「使えるものは使う」
■ 締め
「……もういい」 真宵が力尽きた。 「彩鼓先輩は、そういう人」
「はい」 華が頷く。 「進路より電波を優先する人」
「電波は裏切らないからね」 彩鼓は涼しい顔だ。
「人は裏切るんですか!?」 みなみが叫ぶ。
「状況次第」
全員、ため息。
1月4日。 新潟中央女子学園・無線部は、
進路という難易度の高いテーマに挑み、
白根彩鼓という“永遠のノイズ源”を再確認した。
――結論。 進路は決まった。 本人以外が疲れただけ。
今日も、はむぶは平常運転である。




