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第30話 「笑顔の周波数」

県総合文化祭もいよいよ最終日を迎えた。各ブースの動員数は刻一刻と積み上げられていく。亀田紗友里率いる江南実業高校無線部の展示は、派手なパネルと「来場者スタンプラリー」を組み合わせ、確実に数字を稼いでいた。一方、新潟中央女子学園ハム部の展示は、地味ながらも手作り感のある「交信体験」や「古い無線機の展示」が評判を呼んでいた。


「見て見て、すごい! 外国から返ってきたカード!」と、小学生くらいの子が彩鼓たちのブースで喜ぶ。西蒲真宵はにっこり笑いながら、その子にカードを手渡した。


「うちのブース、家族連れが多いですね」華が腕まくりして客を案内する。

「ええ。派手さじゃ敵わないけど、ひとりひとりにちゃんと『体験』を渡してるからだと思う」彩鼓は、少し疲れた笑みを浮かべつつも誇らしげだった。


そんな中、廊下を通りかかった紗友里が、鼻で笑う。

「やっぱり地味ね。結局最後には数字で負けるわよ」


挑発的な言葉に空気が凍るが、その時、遅れてきたみなみが明るく声を上げた。

「お待たせしました〜! ……って、あれ? けっこう盛り上がってるじゃないですか!」


一瞬ざわめいたが、彩鼓が小声で制した。

「ここは普通にしてて。あなたが来たら“アイドル効果”って言われるから」


みなみは理解して、あえてエプロンをつけて裏方に回った。来場者の整理や子どもの相手に回る姿は、アイドルではなく、ただの「頼れる先輩」だった。


その姿を見た真宵がぽつりとつぶやいた。

「やっぱり、私たちが“どう見られるか”じゃなくて、“どう関わるか”なんだね」



午後三時。集計が発表される時間が迫る。

会場中央に貼り出された動員数の表を見て、紗友里は勝ち誇った笑みを浮かべた。


「ほら見なさい。うちは1800人。あなたたちは……1700人。残念ね」


彩鼓は悔しさをかみしめつつも、深呼吸した。

「確かに負けたかもしれない。でも、私たちのブースに来てくれた人は“楽しかった、またやりたい”って言ってくれた。それで十分だよ」


その言葉に、横で聞いていた小学生の親が割り込んだ。

「うちの子、無線に興味もってね。家でも『CQ出したい!』って騒いでるんですよ」


笑いが広がる中、突如アナウンスが響いた。

『追加報告です。新潟中央女子学園ハム部のブース、体験待ちの列が発生し、公式集計に入りきらなかった人数が再計算されました。最終的な動員数は――1950人です!』


「えっ!?」

「勝った……?」


一瞬呆然とする彩鼓たち。紗友里は青ざめ、言葉を失った。


「やっぱり数字でも負けちゃったみたいですね」みなみがにっこり笑った。

「でも、数字はおまけ。人と人がつながるのが、私たちの“無線”ですから」



帰り道、彩鼓たちは肩を寄せ合いながら歩いた。

「動員数で勝てたのは嬉しいけど……やっぱり一番は、笑顔が増えたことだね」

「うん、無線ってほんとに“笑顔の周波数”なんだなぁ」


夕焼け空の下で、部員たちは充実感に包まれていた。

次にどんな挑戦が待っていても、自分たちなら乗り越えられる――そう信じながら。

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