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第3話「はじめての無線工学!?」

「……で、電波って、波なの? 音なの? 光なの? なんなの?」


部室に響くのは、寺尾華の悲鳴にも似た声だった。


「えーっと……波で、光に近くて、音じゃない。つまり、電磁波!」


白根彩鼓が即答した。ニヤニヤしている。


「はああ……電磁波って、電子レンジのやつ?」


「まあ、それも一種ね。波長が短いやつ。ちなみに私たちが使うアマチュア無線帯はVHFとかUHFって呼ばれてて、だいたいテレビと同じくらいの波長帯」


「ぶっちゃけ、何言ってるか、わかんない……」


華はプリントをくしゃくしゃにしながら崩れ落ちた。机の上には「アマチュア無線技士 国家試験対策ワークブック(3アマ編)」が開かれている。内容は回路図、アンテナ、電波の周波数、免許の種類と法律――文系JKには完全に未知の世界だ。


「安心して、最初はみんなそんな感じだったから」


そう言って励ますのは、月潟澄佳。今日もピシッと制服にカーディガンを羽織り、真面目に教科書を読み込んでいる。


「わたしも最初、“共振回路”を“共鳴する魚介の料理”だと思ってたから」


「それはさすがに勘違いすぎでは……?」


西蒲真宵が呆れつつも苦笑した。


「でも、華ちゃん、意外と筋いいと思うよ。さっきの“搬送波ってなに?”って質問、ちゃんと本質ついてたし」


「ほんとに? 私、何も考えずに聞いたけど?」


「それが天才ってことじゃん!」

彩鼓が笑いながら肩を叩く。


「ただまあ、確かに量が多いのは事実。1週間で3アマ一発合格はちょっと無理かもね〜」


「ひ、1週間で取ろうとしてたの!? それはむしろ無謀!」


真宵が即ツッコミを入れる。



---


その日の部活の終わり、華は放課後の部室で一人残っていた。机の上には、ラジオとイヤホン、そしてワークブック。


「うーん、周波数って、結局“速さ”なんだよね……?」


ふと、イヤホンを耳にあてると、ガー…というホワイトノイズの中に、うっすらと人の声が聞こえた。


> 「こちらはJS0XYZ、CQ、CQ……」




「……!」


胸が高鳴る。


“誰かが、空を通じてしゃべってる”


今はまだ聞くだけ。でも、もしこれを自分の声でやれたら――。


「よし……やるぞっ!」


鼻息荒く立ち上がった華は、プリントを握りしめて部室を飛び出した。


帰り道の坂の途中、背中に届いた夕陽のあたたかさが、今日だけはちょっとだけ応援してくれているような気がした。

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