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第24話 「亀田紗友里、来訪」

 江南実業高校の無線部室。

 書類を持ってきた後輩が、机の上に一通の封筒を置いた。差出人は「新潟中央女子学園ハム部」。


「……ふん、白根彩鼓。やっと返事をよこしたのね」

 無線機の調整をしていた部長・亀田紗友里は、長い黒髪を払いのけながら封を切る。


 そこに書かれていた文面は短かった。

「このたびの交流会参加は見送らせていただきます」


 それを読み終えた瞬間、紗友里の口元がピクリと動いた。

「……見送る? はぁ? 私が声をかけてやったのに?白」

 机に封筒を叩きつけ、静かに、しかし確実に怒りを含んだ声を吐き出す。


「白根電波工房の娘ごときが、私の招きを断る? 面白くないわね……」



---


◆新潟中央女子学園ハム部 部室


 数日後の放課後。

 白根彩鼓と西蒲真宵、寺尾華の三人は、部室で交代にリグを回していた。


「CQ出してる局、今日は少ないね」華がマイクを置いてため息をつく。

「まあ平日の夕方だしな」真宵が肩をすくめた。

「澄佳とみなみは遅れるって言ってたけど……何か買い物かな?」


 そんな和やかな空気の中、突然ノックの音が響いた。

 扉が開き、姿を現したのは――


「ごきげんよう。こちらが、新潟中央女子学園ハム部かしら?」

 艶やかな声と共に、凛とした佇まいの少女が立っていた。

「……亀田紗友里」彩鼓が呟く。



---


◆火花


「初めまして。江南実業高校無線部部長、亀田紗友里です」

 紗友里はにっこりと笑いながら、部室にずかずかと入ってくる。


「交流会の件、拝見したわ。……“参加見送り”? その理由をぜひ伺いたいのだけれど」

 笑顔の奥に冷ややかな視線。


「理由はシンプルです。時間を有意義に使いたいだけです」

 彩鼓は視線を逸らさずに答えた。


「有意義? 他校の無線部と無線だけではなく直接交流することが、あなた達にとって有意義ではないと?」

 紗友里はすかさず畳みかける。

「それとも、白根電波工房の娘だからかしら? うちの『亀田ムセン』を敵視しているのは」


「そっちがうちを目の敵にしてるだけでしょう」彩鼓は冷静に返す。

「部の方針を決めるのは私たちです。他校の部長がどうこう言うことじゃない」


「強気ね。けれど――」紗友里は彩鼓に顔を近づけ、囁くように言った。

「私の招待を断った学校がどういう扱いを受けるか、分かっているのかしら?」



---


◆平行線


 真宵は「おいおい」と立ち上がろうとしたが、彩鼓が手で制した。

 華はただオロオロと二人のやりとりを見つめる。


「何を言われようと、私たちの答えは変わりません」彩鼓は毅然とした態度を崩さない。

「ふぅん……」紗友里は不敵な笑みを浮かべる。

「強情ね。でも、そんな小さな意地張ってたら、この世界じゃ生き残れないわよ」


「“世界”って……」真宵が呆れたように呟いた。

「ここは高校の無線部だぞ?」


 紗友里は完全に相手を見下す目で、腕を組む。

「あなた達に選択肢はないの。参加するか――恥をかくか」



---


◆救いの登場


 その時、ガラリと扉が開いた。

「遅れてごめーん! 差し入れ買ってたらちょっと時間かかっちゃって」

 月潟澄佳が颯爽と入ってきた。その背後には中条みなみの姿も。


「……あら?」紗友里が一瞬目を丸くする。


澄佳は微笑んでいるが目が笑っておらず、にこっと営業スマイルを送るみなみ。


「月潟財閥の…!そしてアイドルの……!」

 紗友里は一瞬、完全に言葉を失った。



---


◆退散


 部室の空気が一変する。

 澄佳はにっこりと笑いながら言った。

「この部は、私たちみんなで方向性を決めます。外からどうこう言われる筋合いはありません」


 みなみも静かに続けた。

「先輩たちが決めたことを、私は信じています。だから、この話はここで終わりです」


 紗友里は唇を噛んだ。

「……今日はこれで失礼するわ」

 吐き捨てるように言い、足早に部室を後にした。



---


◆残された部員たち


「……助かったよ、二人とも」彩鼓は深く息をついた。

「澄佳が来てくれて、マジで正解だったな」真宵も苦笑する。


「でも、なんで澄佳の名前とみなみの顔を見たら、あんなに顔色変えたんだろ?」華が首をかしげる。


「……あの人は“権威”と“名声”に弱いのよ」彩鼓は小さく笑った。

「こっちはそんなもの関係なく、好きで無線やってるってだけなのにね」


 窓の外では夕焼けが部室を照らしていた。

 彼女たちの絆は、またひとつ強くなっていた。

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