第23話 「誘いと決断」
十月のある放課後。
新潟中央女子学園ハム部の部室に、一通の封筒が届いた。差出人は「新潟県高校女子無線クラブ連合会」。
部室にいた彩鼓、真宵、澄佳、華、そして顔を出していたみなみは、不思議そうに封筒を囲んだ。
「……女子無線クラブ連合会?」
真宵が首をかしげる。
「なんか、県内の女子校無線部が集まってる組織らしいよ」澄佳が説明を加える。
「毎年、秋に交流会を設立するって話は聞いたことがあるけど……」
彩鼓は手紙を開いて読み上げた。
「『このたび、貴校ハム部の皆さまを、11月に開催予定の交流会に正式にお誘い申し上げます』……だって」
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◆嫌な予感
しかし、彩鼓の顔はすぐに曇った。
「……やっぱり、そうか」
「え、どうしたの?」華が首をかしげる。
「この交流会、発起人は江南実業高校の無線部長。亀田紗友里」
その名を聞いた瞬間、澄佳も「ああ……」とため息をついた。
「亀田紗友里って、あの『亀田ムセン』の……?」みなみが恐る恐る尋ねる。
「そう。実家同士で昔からライバル関係なの。亀田ムセンはうちの白根電波工房を目の敵にしてる。紗友里本人もプライド高くてね、絶対マウント取ってくるわ」彩鼓は机を軽く叩いた。
「そんなのに付き合うぐらいなら、部室で普通に運用してる方がずっと有意義」
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◆それぞれの意見
「でも、他校の無線部と交流できるって面白そうじゃない?」
華は純粋な好奇心からそう口にする。
「色んな局と交信するみたいに、学校間でも繋がれたら……」
「気持ちは分かるけど、部長の言うことも一理あるわ」みなみが頷いた。
「ただでさえ芸能活動やらイベントやらで忙しい時期だし、トラブルの種に首を突っ込む必要はないと思う」
「うーん……」真宵は頭を掻きながら口を開いた。
「わたしはマウント取られるのマジだるい。でも華の言う通り、横の繋がりも大事だよな。ただ……それで彩鼓がイヤな思いすんのは部活的にマイナスだろ」
みなみは黙ってみんなのやりとりを聞いていたが、やがて小さな声で言った。
「私は……彩鼓先輩と一緒に無線やってる時間の方が大事です。せっかく居場所ができたのに、ギスギスした集まりに行って壊したくない」
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◆総意としての結論
部室にしばし沈黙が流れた。
やがて、彩鼓がふっと笑う。
「……ありがとう。みんなの意見を聞けて、ちょっと安心した」
華は少し名残惜しそうに、「そうだね……」と呟いたが、すぐに顔を上げた。
「うん! 私も、やっぱりみんなで楽しく無線やってたい」
こうして部員たちの総意は固まった。
「参加見送り」の旨を丁寧に書いた返信を作成し、澄佳が封を閉じる。
「決まりだな」真宵が言う。
「亀田紗友里? 知らんがな。こっちはこっちで楽しくやろーぜ」
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◆部室の笑顔
その日の部室には、特別な解放感が漂っていた。
「じゃ、今日もオペレーター交代でCQ探してみようか」
「うん!」華がリグに向かい、マイクを握る。
無線機から流れるノイズの中で、彼女たちの笑い声が響いた。
外の組織や因縁よりも、今ここで一緒に過ごす時間の方が大事。
その気持ちを、部員全員が確かに共有していた。




