表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/52

第16話:Tsukigata Launch ―空へと続く風の音―

8月2日(土) 午前9時、新潟空港 臨時ヘリポート


夏の朝の日差しが眩しい新潟空港。

ヘリコプターターミナルには、白いテントと仮設のラウンジ、そして試験運航の看板が立っていた。

「ほんとに……このまま空飛んじゃうんだ」

華は真新しい機体を見てつぶやいた


「ほんとに飛ぶのよ。しかも今日中に設営も交信も、やることだらけ。しかも今日の21時からが本番。」


彼女たちはアマチュア無線部の“夏合宿”として、フィールドディコンテストへの参加を決めていた。

そのための移動手段として、澄佳の実家である月潟財閥が関与するTsukigata Airの試験運行便に乗る、というプランを澄佳が通していた。


「ちゃんと予約しておいたわ。今のうちに搭乗手続き済ませておいて」

と、3人を澄佳が急かした。


彼女たちは書類にサインし、簡単な安全講習を受け、いよいよ機体へと案内される。


機体は最新鋭のBell 429 ヘリコプター。二重反転ローターが美しい銀青のボディに映えていた。


午前9時30分 離陸


エンジンが始動し、ローターが風を刻み始める。


澄佳は操縦士に軽く会釈してから、他の3人に声をかけた。


澄佳は澄ました声で

「本便はTsukigata Air試験便第1号、赤泊ヘリポート直行便。どうぞお楽しみください」

と、言ったところ、華から


「CAみたいに言わないで……!」

と突っ込まれていた。


ヘリはゆっくりと地上を離れ、滑るように上昇した。

越後平野の田園、信濃川の帯、そして青く広がる日本海が眼下に流れていく。


「うわあ……なんか、医院長の出て来る美容外科のコマーシャルみたいだ!」

と、彩鼓は叫んだ。

「サングラスかける?」

と、澄佳が茶化した。


真宵は

「これでHF運用したら、どこまで飛ぶかな……?」と期待し、華はヘリコプター酔いで気絶してた…。


午前9時50分 赤泊ヘリポート着陸


機体は滑るように赤泊の臨時ヘリポートに着陸した。

ここは、かつての佐渡汽船赤泊ターミナルの駐車場を改装してつくられた施設。

そこから車で約15分、月潟鉱産が所有していたという山中の山荘へと向かう。


月潟家がチャーターしたジャンボタクシーに荷物を積み、4人は山道を登る。

窓からは、佐渡の入り組んだ海岸線と青い海、そして遠くに薄く霞む本土が見えていた。


午前11時15分 山荘到着・設営開始


澄佳の山荘は、赤泊と羽茂の境の山中にぽつんと立つ木造の別荘だった。

とは言え、月潟鉱産の保養所として作られたため、規模も大きく天然温泉の引かれた大浴場もあるというものである。

また、TsukigataCycleTec(TCT)の最新型電動アシスト付自転車が4台あった。


ベランダからは海が見え、電波の飛びそうな地形。


> 澄佳「アンテナ立てるなら、この南西斜面が一番通ると思う」




> 彩鼓「この景色で移動運用とか、優勝確定でしょ!」




ソーラーパネルとディープサイクルバッテリー、ポータブルHFリグ、モービルホイップ、ワイヤーダイポール……

装備は完璧だった。


彼女たちは協力しながら、手際よくアンテナの設置と無線機のチェックを済ませる。


> 真宵「バッテリーOK。電圧も安定。ログシステム起動」




> 彩鼓「明日の勝利は今日の設営にあり!」




正午:昼食と作戦会議


食事は華が作ってきた「トビウオの甘酢あんかけ弁当」。

佐渡の味覚に舌鼓を打ちながら、各自の担当バンドとスケジュールを確認する。


> 澄佳「わたしは3.5MHzと7MHz。夜間帯中心ね」




> 彩鼓「私はV/UHF担当!特に430でできるだけ遠く飛ばす!」




> 真宵「14MHzも開けそうな感じだし、昼間に押さえたいね」




時間はゆっくりと流れ、午後のセッションを終えると、やがて夕暮れ。


午後7時:夕食後のひとときと“遠い空の華”


空が茜に染まり、佐渡の山中にも静かな夜が訪れようとしていた。

4人は山荘のウッドデッキに腰かけ、遠くに微かに揺れる光を見つめていた。


> 華「……あれ、光?」




> 彩鼓「本土の……何だろ、海の向こうで何か上がってる?」




> 真宵「……あ。あれ、多分……長岡まつりの大花火大会じゃない?」




全員が顔を上げた。


遠く日本海を挟んだ対岸。雲のない夜空に、ポツン、ポツンと色を変えながら小さく弾ける光。


> 澄佳「……あんなに遠くても、見えるんだね」




> 華「佐渡から長岡の花火が見えるなんて、ちょっと感動……」




しばらく誰も言葉を発せず、その光に見入った。


> 彩鼓「電波も花火も、空を超えて届くのか……なんか、同じなんだね」




静かに、山と海と空が夜に染まり、8月2日の夜が更けていく。


明日はいよいよ、本番。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ