第12話「カードとスロープノイズ」
「QSLカード、今回の分だけ自分で作ったものを出してみたいな」
華の一言から、放課後のハム部は一気に工作モードに突入した。
机の上にはラミネート紙、スタンプ、部誌のテンプレートを印刷した紙が広がる。
「昔は手書きで送ってたんでしょ?」
「今はPDFもありだけど、やっぱり初めては紙がいいよ」
クラブロゴに、交信日時、相手局のコールサイン。
FTM-510Dで交信した最初の相手――まさかのOGだった局へ、丁寧に仕上げたQSLカードが一枚完成する。
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「じゃ、明日ポストに入れようか」
そう言って、白根彩鼓がカードを封筒に収めたその時――。
「……ちょっと、変な電波拾ってる」
澄佳の声に一同が顔を上げる。
FTM-510Dの受信表示には「430.025 MHz」と表示され、断続的なノイズが聞こえてくる。
『ピーー……ピ…ピ…ピーーー……ザ…ザザ……』
「なにこれ、ビーコン? それとも……」
「CWでもなさそうだよ」
西蒲真宵がノートを引き寄せ、タイミングを書き留めはじめる。
「でも、パターンはある。完全に無作為じゃないね」
---周波数を変えても、似たような信号が間隔を空けて現れる。
発信源を探るため、430MHz用の八木アンテナを使って方向を確認してみる。
「……こっち。グラウンドの裏手、たぶん体育館倉庫のあたり」
「えっ、学園の中?」
「誰かが無線ごっこしてる? でもこの変調、普通の無線機じゃない……」
---翌日、QSLカードをポストに投函したその帰り、再び430MHzをスキャンすると同じようなノイズを受信する。
「今度は信号が少し強い……移動してる?」
「誰かが動かしながら発信してるってこと?」
「うーん、ちょっと待って、さっきの方角と今の方角……ずれてるな」
---「電波探し、しようか」
華の一言に、3人がうなずく。
FTM-510Dの画面には、スロープ状に歪む不規則な信号――「スロープノイズ」が、再び刻まれていた。
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QSLカード…交信証明書のこと。何月何日にどの周波数でどの電波型式で交信をしました…という内容を書いたハガキ大の厚紙が多い。オノウエ印刷などに頼んでカラー写真を使ったものや、昔懐かしいプリントゴッコなど多種多様である。
交換方法としては、直接手渡しや郵送のほかに一般社団法人日本アマチュア無線連盟(JARL)の会員にその会員間に転送するサービスなどがある。
また、eQSLといった電子的に送り合う方法もある。




