第11話「コールサインをさがして」
この話から毎週金曜日公開となります。
新潟中央女子学園 ハム部・JI0YLCの部室。
午後の陽が差し込む中、4人の少女たちがトランシーバーの前に集まっていた。
FTM-510D――20W出力のVHF/UHF帯FM機が机の上でスタンバイしている。
「よし……初運用、行こうか」
マイクを握るのは、1年生の寺尾華。
これまでこのクラブ局は、主に短波帯(HF)での運用だった。
部員だった3人――白根彩鼓、西蒲真宵、月潟澄佳――が中心となって、時にCW(モールス通信)で、時にSSBで、古風な運用を楽しんでいた。
彼女たちが入部したのは1年前。そしてさらにその2年前、クラブ自体は当時1年生だった島見杏果が、一人で書類を整え復活させた。
それ以前、ハム部は長らく休部扱いだったのだ。
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「私が入部してから、V/UHF帯で運用するのは初めてだね」
華の声に、3人はうなずく。
「FTM-510DはFMモード限定だけど、逆に初心者には扱いやすいわよ」
「まずは145MHz帯で、誰かCQ出してる局がいないか探してみよっか」
澄佳が操作を担当し、メインチャンネルで待機する。
145.00、145.06、145.08……と、トランシーバーはリズムよく周波数を進めていく。
そして—
『CQ、CQ、こちらはJQ0WLB ジュリエット、ケベックゼロ、ウイスキー、リマ、ブラボー。新潟市中央区より、どなたか交信できる局があれば次回145.12。145.12でお願いします』
「来た!」
「じゃあ、145.12MHzで合わせて……華ちゃん、呼び出しして!」
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華は一度深呼吸をして、マイクを握る。
「JQ0WLB、こちらはJI0YLC。新潟中央女子学園ハム部のオペレーター、寺尾です。交信は初めてです。よろしくお願いします!」
少し沈黙——
『JI0YLC……!? まさか……まだ活動してたの!?』
混乱と、そして歓喜が混じったような声だった。
『こちらはJQ0WLB、中条です。42年前、そちらの学園のハム部に所属してました……! まさか、また声が聞けるなんて』
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「えええ!? OGさん!?」
「すごい偶然……」
交信は、そのままにぎやかに進む。
信号レポート、QTH(所在地)、クラブ再建の経緯、最近のアマチュア無線の話題――
中条は歯科医をしており、時折午前と午後の診察時間の間に電波を出しているのだという。
当時の部室は今と変わらないことに驚きつつ、声を震わせて語った。
『……この声、ほんとに電波に乗って届いてるんですね』
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交信終了後、しばしの静寂。
「……やばい、ちょっと泣きそうだった」
「声が、時代をつなぐって、こういうことなんだね」
「寺尾華のおかげで、V/UHF帯も再開。これからますます忙しくなるぞー」
華は、ほんのり赤くなりながらもうなずいた。
「私も、ちゃんと“この部”の一員になれた気がする」
冷めない興奮と感動に身震いしていた。
SSB…Single Side Band(単側帯変調):無線通信の変調方式で、AMの両側帯を削って一方の帯のみを伝送する方式です。AMが6KHzの占有周波数帯幅が必要ですが、SSBだとその半分の3KHzの占有帯域幅で通信を行うことで高周波パワーを節約でき、同じ音声レベルの入力が出来れば遠くまで伝達することができる反面、音質はAMに比べて良くない.。
詳しくはhttps://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E6%8C%AF%E5%B9%85%E5%A4%89%E8%AA%BF
ジュリエット、ケベック…欧文通話表といわれるもの。mとnなどは音声だと聞き間違えることがあるため、欧文通話表を用いることがある。
また、和文通話表というものもあります。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E9%80%9A%E8%A9%B1%E8%A1%A8




