表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/52

第10話「代表者は、もういないと思ってた」

-- 開局の“壁”


念願のピンクのハンディ無線機を手にした華。

メイド喫茶「メルセンヌ」でのアルバイト代は、しらね電波工房のガラスケースの中にあった“小さな夢”と見事に交換された。


「ちっちゃくて、かわいくて……でも、ちゃんと交信できるんだよね」


徳造が最後に整備したカスタムFT-4XR。アンテナも、手の大きさに合うショートタイプ。


従事者免許証も、予定より少し早く届いた。

名前と顔写真が、ピカピカのプラスチックカードに刻まれている。


「……これで、もう無資格じゃない……はず」


が。


「開局申請、まだだったんだよな……」

真宵がスマホの画面を見ながらため息をつく。


個人で無線局を開設するには、免許申請が必要。申請してから、さらに1か月前後かかるという。


「そんなに待てない……!」

華が、再び床に崩れ落ちた。


--- 意外な“お客様”


土曜の午後。バイト中の「メルセンヌ」に、黒のフリルワンピース姿の少女が現れた。


「……島見先輩!?」


一同が驚愕する中、彼女は一言、


「プリン、RITで温めて。」


「いやいや…なんで島見先輩いるんですか!しかも、スーツじゃなくてそのふりふりワンピース!」

と、彩鼓。


「なんでって、この間土日に仕事していて昨日と月曜は代休。で、実家に帰ってきたの。」


と、シレッと言っていた。


華は弱々しく島見に話しかけた。


「あ、あの〜実はあれから4アマの試験を受けて、従事者免許証とったんですけど、早く電波を出したいんですけど…なんとかなりませんか?」


場が静まる。


「華ちゃん、無線使いたいんでしょ?だったら学校のFTM-510D、部室にあるやつ、あれ使えばいいじゃない。あれ、クラブ局の設備の一つだから従事者選任だけすれば交信できるよ」


彩鼓が「あ!その手があったか…」と叫んだ。


「えっ、でも……誰が代表になってるか、わからなくて……」

華はおどおどしながら聞いた…


「あ、それ私。彩鼓ちゃん、代表変更出してないでしょ」


彩鼓の肩が、ピクリと揺れる。


「う……す、すみません忘れてました……」


「大丈夫。代表者変更申請と、無線従事者選任届、一緒に出しちゃえばいい。今は電子申請もあるし、紙なら長野総合通信局 無線通信課に送ればOK」


「えっと、今って、島見先輩が部の代表で……私が無線従事者で……」


「うん。それで、学校の無線機が使える」



--- 申請書作成


その日のバイト終了後、部室にて月潟澄佳のタブレットで申請書類が作成された。


・代表者変更届(旧代表:島見杏果 → 新代表:白根彩鼓)

・無線従事者選任届(選任者:寺尾華)


「ふふ、なんか私、書類の“責任者”ってところに名前あるの、ちょっと照れる……」


「次は部室の整理ね。あの古いSWR計、たぶんアースが切れてる」


「代表になったからには、部費申請もやってよね……」


「ていうか華、そのメルセンヌの制服メイドふくのままなんで学校にきちゃったの!やめなさい」


---

電波は、すぐそこにある


申請が終われば、あとはハム部の無線機に火を入れるだけ。

学校の部室の棚で、静かに眠っていたFTM-510Dが、ようやく目を覚ます。


「……受信は、できる?」


「当然。送信は選任が終わってから。でも、今すぐ聴いてみて」


澄佳がスイッチを入れる。スピーカーから、ほんのかすかにノイズ。

その向こうに、小さな交信音が聞こえた。


『こちら、ジュリエット・アルファ・ゼロ・エコー……』


華は、うっすらと目を潤ませる。


「……聴こえた。私にも、電波、聴こえたよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ