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満ちる。  作者: 雨世界
9/9

9 きすみー。

 きすみー。


 その日の夜。細い黒のフレームのめがねをかけている(家ではめがねだった)あったかいお風呂上がりで(家に帰ってきたときには寒くて寒くて、あぶなく風をひいてしまうところだった)うさぎ模様の真っ白なパジャマ姿の白湯は自分の日記に一言だけ、満ちる。と書いた。

 いつもなら、ページいっぱいに文字を描くのだけど、今日はその一言だけを贅沢に空白をいっぱい使って、ページの真ん中のところに(ハートマークと一緒に)書いた。

 満ちる。満ちるか。

 確かに今、私は満ちている。とにやにやとしながら、自分の机のところでそんなことを白湯は思った。

 それから白湯は美術館で見た満ちる。の絵画のことを思い出した。

 それから日記帳を閉じて、白湯はいつものように夜の勉強をはじめた。スケジュールは一年一か月一日単位で管理しているので、今日ももちろん勉強が残っているのだった。

 わざと薄暗くしている淡いオレンジの照明の中で白湯はもくもくと勉強をした。

 ホットコーヒーとドライフルーツのクッキーを机の上に置いて。

 好きな音楽を聴きながら。決められた(自分で決めたんだけど)時間まで。

(途中の十分の休憩時間には本棚にある好きな本を読んだ)

 それから時間になって、「うーん」と両手をあげて背筋を伸ばした白湯は勉強道具を閉まってから、就寝するための準備を始めた。

 食器をかたずけて、歯を磨いて、電気を消して、あったかいふかふかのベットの中にもぐりこんだ。それから白湯はすぐに眠りについた。

 その夜の中で、白湯はどこか遠い国の真っ白な浜辺にたっていた。ざーという波の音。そして、真っ青な海が広がってる。真っ白な日傘をさして、浜辺にたっている白湯のよこには楽しそうな顔で笑っている白玉がいる。二人はとっても幸せそうに見える。(もしかしたら、それは新婚旅行の風景なのかもしれない)

 白湯は白玉と一緒に一年後に高等学校を卒業して、同じ第一志望の大学にちゃんと現役で二人とも合格して大学生になってから、数年後に(大学院生のときに)結婚をするのだけど、夫婦になってからも、この日記帳のことは白玉に秘密にしていて、たまにひとりでこっそりと、白玉(旦那さん)に隠れて日記帳の懐かしいこのページを読み返すことがよくあった。

 そんなときは、いつも白湯は小さないたずら好きの女の子ような顔をしていた。その顔はどこか二人の(生意気な)小さな愛らしい一人娘の顔ににていた。


 あの、旅行にいきませんか? ……、二人だけで。遠い国へ。


 満ちる。 おわり

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