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満ちる。  作者: 雨世界
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 白玉が無口でなにも喋らないのはいつものことだったけど、今日はとくに静かだった。(そんな些細な白玉の変化のことがわかるくらいには、白湯は白玉と一緒にいた)

 もしかしたら読んでいる本がいつもよりも面白いのかもしれない。(宝探しに当たったのかも)白湯は少しだけ白玉が読んでいる本のことが気になった。(表紙のデザインが変わっているからもし日本語の小説だったとしても見ただけではわからなかった。まあたぶん外国の小説だとは思うけど)

 白玉くん。なに読んでるの? って聞こうかな? と白湯が思ったときだった。

「白湯はこのあとって暇なの?」と本から顔を上げずに白玉が言った。

「え? このあとって学校終わりってことだよね。うん。暇だけど?」とぼんやりしながら(油断しまくっていた)白湯は言った。

 こんな風に白玉のほうから白湯に話しかけてくることもちょっとはあった。(それはそうだ。白玉は無口でもまったくおしゃべりをしないお人形ではないのだ。見た目は新品の箱を開けたばかりのお人形みたいに綺麗だったけど、お人形ではないのだ)

 でもそれはほとんどは(白玉に恋をしている白湯にとっては)どうでもいいことばっかりだった。(二人の関係がよくなるような言葉ではなかった。まあ話しかけてくれるだけで嬉しいけど)

 それでも白玉は外国の生活が長かったから今みたいに白湯のことを白湯とちゃんと名前で呼んでくれた。(これは白湯だけじゃなくてみんなそうだけど)……、それは、本当にすごく嬉しかった。(もし許してくれるなら録音して寝る前に何度でも聴いていたいくらいだった。きっと本当にぐっすりと気持ちよく眠ることができるだろう)

「学校が終わったら一緒に美術館に行かない? 鑑賞したい絵画があるんだ」と今度は白湯のことをちゃんと見て、白玉は言った。

 その白玉の言葉を最初、白湯はよく理解することができなかった。(ぴたっとクロワッサンを食べる体の動きが止まっただけだった。……、まるで不思議な魔法をかけられて時間が止まったみたいに)

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