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満ちる。  作者: 雨世界
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1 あいらぶゆー。

 満ちる。


 あいらぶゆー。


 白湯は生まれてから十七歳になる今までの間で、自分よりも頭がいいと思う人に会ったことがなかった。だから白玉と出会ったときに、白湯は本当に驚いた。白玉が白湯よりもずっとずっと頭がよかったからだ。(本当にびっくりした。世界がばらばらになるかと思った)

 それから、白湯は白玉のことが大好きになった。本当に自分でも単純だと思うけど、好きになってしまったのだからしょうがないと思った。問題は白玉が今のところ、恋に全然興味がないということだった。彼はいつも本ばかり読んでいて、一人の世界の中にいる。そこに入っていける人は今のところ、世界に白玉一人だけだった。白湯は白玉の世界にいってみたいと思ったのだけど、入る許可はおりなかった。(白い門は開かなかった。白湯がいくら門をたたいてみても、ばかー! と大声を出してみても、門はうんともすんとも言わなかった)それがすごくくやしかった。

 白湯は絶対に高等学校を卒業するまでに白玉を振り向かせてやろうと思った。(そう自分の心に誓った)白玉が私のことが好きで好きでたまらないという風に私の色で白玉の世界を全部染めてしまおうと思ったのだ。(バケツでピンク色のペンキを思いっきり真っ白な壁にぶちまけるように)それが今のところの白湯の人生の目標だった。(我ながら素晴らしい目標だと思った。人生に色がついて花が咲いたようだった)

 白湯はお昼休みにいつものように白玉を探していた。探すと言っても白玉のいるところはだいだい決まっていた。(白玉はいつも決まった時間に決まった場所にいて、決まった行動をとっていた。とくになにかいつもとは違う予定がなければ白玉はずっと、すくなくとも白湯と出会ってからの高校生活の間は、そんな風にして毎日を過ごしていた)

 人のいない真っ白な校舎と校舎の間にある真っ白なレンガの大地の上の緑の庭の片隅にある白いベンチのところで、白玉は青色の(鳥の模様のある)ハンカチをふとももの上にひいて、その上にお弁当箱をのせてお弁当を食べていた。(そこが白玉のいつものお昼休みの居場所だった)

「今日はなんの本を読んでいるの。白玉くん」と白いベンチのところまで歩いていって、白玉の前に立って白湯は言った。そんな白湯のことを白玉はちらっと見ただけで、いつものようにもくもくと自分のお弁当を食べ始めた。二人のいる世界に透明な風が吹いた。冷たい風。今は冬だ。一年もあっという間だな。と、その静かな風の中で、長くて美しい黒髪を揺らしながら、そんなことを白湯は思った。

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