散柵
「うわぁ……凄い霧だな……」
キャンプ場の早朝、霧が立ち込める中を俺は歩く。霧は濃密で、一メートル先も真っ白で見えていない。しかし、大自然の朝の空気は気持ちの良いものだ。
「おはようございます」
「あ、おはようございます……あれ?」
朝の散策を堪能していると、背後から男性に声をかけられ足を止めた。突然のことに驚きつつも、挨拶を返しながら振り向く。しかし、そこには誰も居ない。
「わっ……」
聞き間違いかと思っていると、強い風が吹いて視界が開く。そこには柵が壊れ、眼下には深い森が広がっていた。