月明かりで星座が見えないと申されましても
「お月見団子頂きました~よろしくゥ!」
「よいしょッ」
「お月見ィ!」
「ハイ!」
「団子ゥ!」
「ハイ!」
「ソレソレソレソレ!」
「ソレソレソレソレ!」
スーパーでお団子を買ったら、どこからともなく、うさ耳のホスト達が集まって来た。
掛け声と共に、カゴにうず高く積まれるお団子。彼らはハイテンションで言って去ったが、今日は十五夜でも、ココはホストクラブでもない……。
◇
月の裏側にホストクラブが発見された。いや、人類初月面着陸の時点で見つけていたが、余りの事実に目を背けていたらしい。人類の偉大な一歩、後退りだったのか。
月のホストは随分と営業熱心で、”月”に関わるモノ全てに絡んでくる。
とりあえず、月曜にはよく見かける。毎度「熱心に通ってくれてありがと~うゥ!」と言うから(お前らが勝手に来てるだけだ)、日曜夕方の憂鬱が一つ増えた。
餅をついても彼らは来るが、蟹を買っても、本を読んでも来る。海外では月の模様がそう見えるからだそうだ。妙な知識が増えた。
そんな彼らは地球侵略レベルで頻繁に来ていた様で、月が題材の物語は大体彼らが原因だ。
竹取物語は本当は姫がホスト狂いで身を崩した話だし、「月が綺麗ですね」という愛の告白は彼らが使う口説き文句、No.1ホストになると狼男になるそうだ。ホストより夢の破壊者の方が素質ある。
しかし、ある日から彼らもパンデミックの煽りを受け、コールや密接は禁止となり、月のホストクラブも営業を時短となった。
時短なので大半は電気を消す事となったが、その影響で月は殆ど新月のまま。お陰で潮の満ち引きはメチャクチャ。こんなに地球に影響でかい時短営業ある?
影響を鑑み政府が月の自粛解除したら、今度は星座が見えない程に月が明るい。コールの代わりにペンライトで煽るのを始めたらしい。ピンクムーンって、最近聞くけどそういう。
パンデミックは大変だ。月の彼らも、生活し人生を歩んでいる。そう、皆工夫して乗り越えているのだ、と蕎麦屋でソバを頼みながら、そう思う。
『月見ソバ イタダキマシタ ソレ ヨロシク』
フリフリフリフリ
『オ月見』
フリ
『オソバ』
フリ
『ソレソレソレソレ』
フリフリフリフリ
『イツモアリガトウ 狼男メザシテ ガンバリマス』
フリフリフリフリ
電子音声にペンライト。前の勢いと楽しさは無くなったかも知れないけど、こうやって新しい楽しみ方が出来ていくのかも知れない。
けど、卵十個追加はソバが冷えるからやめて欲しい。
お読みいただきありがとうございました。動画サイトにホスト専門チャンネルがあると知り、世界は知らない事だらけだと思いました。皆、楽しく過ごせる着地点が出来ていくと良いですね。いいねやご評価など良ければお願いいたします。