見捨てられた世界
「アリスっアリス起きて」
聞き覚えのない声で少女は目を覚ました
今確かに少女はアリスと、そう呼ばれたのである。
うっすらと目を開けて辺りを見回す。
今は木の丸太の横に座っているようだ。
近くには小さなこじんまりとした一軒家、
その奥には森があった。
目の前には知らない少女が座っていた。
まず色々とおかしい、まず私はアリスではなく
璃湖、饗庭璃湖である。
そして目の前にいる少女、すこしばかり考え込む私を心配そうな目で見つめている。
その目に映るものを見て驚愕した。
ふんわりとした柔らかな金髪、青い瞳、
ブルーのスカートに白いエプロン……
そして頭には白と黒の大きなリボンの着いたカチューシャ、誰が見てもそう、
不思議の国のアリスそのものであった。
私はますます考え込む、ここに来る前の事を思い出そうとしても記憶が切れたようになって思い出せない、そうこうしていると目の前の少女が話しかけてきた。
「アリス、そろそろ夕食の時間よもう少ししたら家に入りましょうね」
口振りなどからして恐らくこの少女はアリスの姉だと思われる。
顔も所々似通っている。
「はい……」
とりあえず私は一言だけ返事をすることにしておいてまた考え出す。
すると吸い込まれるように足が森の方へ向かっていく、
足を動かそうとしても思うように動かない
まるで自分のものではなくなったようだった。
「アリスーっどこに行くのー夕食までには戻るのよ
それと危ないからあまり森の奥へ行ってはダメよ」
と姉が私に向かって叫んでいる。
私は「分かったわー」と一言だけ言っておいた。
分かったと言ったものの私の足はどんどんと森の奥へ駆けていく、この世界は不思議だと改めて思う。
人の身長ほどの大きさもある花、カラフルなキノコ
見たことの無いような蝶が舞う幻想的な森の中に明らかに違和感たっぷりの壁があった。
森の雰囲気と明らかに合っていない
大きなバラが描かれており、ごてごてしていて目が痛くなるような壁だ。
その少し奥まで進んでいくと足が止まった。
やっと足が動かせるようになり安心したがそうもいかない、絶対に道を戻った方がいいのだろうが、好奇心には勝つことができなかった。
壁の奥の方に少年が立っている。
兎の耳が生えていてピンクの蝶ネクタイに真ん丸の眼鏡、所々くるくるとカールしたボブヘア が特徴的な少年だった。
目が合うと少年は大声で叫んだ
「あぁぁぁーーアリスじゃないかっ君がいないと物語が進まないんだよ!」
私は少年に質問をした。
「物語ってどういうこと?この世界はなんなの?」
すると少年は寂しそうな顔をして話してくれた。
少年は時計兎、時計兎によるとこの世界は作者に見捨てられた童話の世界らしく私がこの物語を完結させることができなければ、この世界は時間の波に飲まれ無かったものになってしまうそうだ。
それを止めるために私はこの物語を終わらせる必要があるとのことだ。
「見捨てられた世界……か……」
私は呟いた。
私は時計兎に言った。
「私、この物語を完結させるよ!だから待ってて」
そう言った少女は森を進んで行くのだった。