「ファミチキ」で「イス」を作って「クッキー」を座らせる噺の話
もっと頭を使わずに描けるようになりたいよ〜
たのしんで読んでもらえたら嬉しいです
お題は「ファミチキ」「イス」「クッキー」
暖かくなった、決して穏やかでは無いが強いともとれない風が全身に吹き付ける。
空気は湿り気を帯びはじめた4月の早朝。
「はぁ〜〜ぁ」
陽気な季節にあくびを一つついてみる。
私、萩山ふるか(おぎやまふるか)はこの季節の、特にこの時間が好きなのだ。
静かなのに、遠くからは新たな生活のための慌ただしさを感じる音が響いているこの時間。
匂いも私は好きなのだ。
軽く湿っている少しだけ涼しい空気と軽く感じる土の匂い。
そんな変わった事をしながら、自分と同じ制服姿の誰もいない通学になる予定の道を進んでいく。
(心地いいな〜)
学校の校門をくぐり、一年生の入口前まできた。
そこには新入生のクラス別の表が貼りつけてあった。
私はA組らしい。
上履きに履き替え、1年A組のある最上階、4階へと階段を登っていく。
今までと似ているが、見慣れない光景とまだ慣れないにおい。
階段をあがるたびに、換気のためだろうか、廊下や踊り場の開いている窓から春の風が入り込んでくる。
それはそれは春特有のあの胡椒の香ばしくスパイシーさとお肉のジューシーさが鼻いっぱいに広がり…………………広が、り????????
は?
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?!?
なんでじゃ!!!!!!!
おかしい、おかし過ぎる。
いくらなんでもこのにおいはおかしいのだ。
タッタッタと階段を駆け登る。
そして、件のニオイのする教室の扉を勢いよく開け、駆け込んだ。
そこにはスパイシーな匂いがこれでもかというほどに、充満していた。
匂いの中心には、とても綺麗な栗色のした髪色のした大人しそうな少女が席についていた。
勢いよく扉を開けたために、バンッ、と大きなとが鳴ったせいだろう、くりっとした青みがかった目が、さらに大きく広げられていた。
「わっ、びっくりした!!」
驚きの表情をした少女は更に言葉を続けた。
「何!?どうしたの!?え!?事件!?」
少女の表情は変化していて、今は好奇の表情になっている
「あの、えっと… え????」
今もなお、困惑している荻山の周りをクルクルと回って、「どこで!?ねぇどこで!?」と騒いでいる
「ちょ、ちょっと待って!!」
永遠とも言える3秒間が経ち、思考が戻ってきた私は少女の肩を掴んだ
慣性もあって多少ふらつきはしたものの、少女を止めることができた
「いい!!事件なんてないから!!!………ない訳では無いけど。兎に角、ないから落ち着いて!!!」
少女は目をパチクリとさせた後
「なーんだ、つまんないの」
そう言った
言って、荻山の手を振り解くと、先ほどまで座っていた席に戻り 香ばしいニオイの元に手を伸ばしていた
「いやいや、ちょっと待って、何してんのよ」
荻山は少女の前にいき更に言葉を続けた
「何してんのよ、あんt」
「なつき」
「は?」
「名前。菜の花の『菜』にムーンの『月』で菜月」
目の前の少女、菜月はナイフを使い何かの形を整えている。
「あ、あの、菜月さん?何やってるの?」
「椅子作ってる」
「は?」
「椅子を作ってる」
「ん?」
「だから、椅子を作ってる」
集中しているからか、淡々と答える菜月の手元を見るとファミリーなチキンをナイフで切っている
それがまた器用なことに、衣が剥がれていないのだ
「できた!!!!」
ふるかが菜月の手元をみた瞬間、菜月は大声を上げてた
ビクン、と肩を振るわせ、ふるかはその完成品に、きちんと目を向けた
そこにあったのは、器用に作られた香ばしい匂いのする椅子があった
きちんとしている椅子だったのだ
「え、すご……」
「えへへ〜」
菜月はにへら、と笑った
それはそれは可愛らしく笑った
「あ、名前」
「ふぇ!?」
笑顔にに見惚れていたふるかは、少し情けない声をあげ、聞き返した
「ん、何?」
「貴女の名前は?」
「あ、私の?ふるか、荻山ふるか」
「ふるか、ね。よろしくね〜」
菜月はそう挨拶をして、自身のカバンをガサゴソといじりはじめた
「な、何やってるの?」
「んーー。これで完成なの」
カバンから出て来たものはジンジャーブレットマンだった
ちゃんとジンジャーブレットマンだ
「!?」
それも平たいが、アルカリックスマイルをしてそうな菩薩様のような足くみをしている
それを徐にチキンチェアーに乗せたのである
「!?!?!?!?!?」
「ほほぅ、思いのほかいい感じに出来上がりましたねぇ〜」
カシャッ、カシャッと自身のスマホのカメラで撮影会を始めていた
数十枚ほど撮っただろう頃に、落ち着いたのか、ふー、とひと呼吸追おいて口を開けた
「じゃ、いただきまーす」
「え!?食べるの!?!?」
「そりゃー、食べ物ですからねぇ」
ふるかは至極当然なことを見たはずなのに、それまでが異常なことだった
そのため、呆気にとられていた
数分経った時だろう、ムシャムシャ食べていた菜月がくるっとふるかの方に顔を向けた
「めぇ、ふふああん」
「な、なに……?」
リスのように頬をぱんぱんに膨らませ、名を呼んだ
そして
「っん…。一緒に食べて?」
コテンっと首を可愛らしく傾け、淡々とおねだりをした
「んっと…、なんで?」
「満腹になる予想ができたから?」
「私に聞くな!?てかなんでそんなに大きさにしたの!?!?しかも、これ、クッキーよね!?!?甘いのと合わなくない!?!?」
「そんなことないよ。これパンだもの」
「…………………はぁ????」
ん、とバラした椅子の欠片がのったクッキー(パン)をふるかに渡してきた
反射的に受け取ってしまい困惑していると、半分近くをすすすっとらに渡してきた
「こんなに食べれるかな……」
恐る恐る口にしてみると、お肉はしんなりとしてしまっているがスパイシーさが残っており、クッキーは周りがサック、としていて内側はふんわりとしている
しかも、味の濃いチキンに合わせてかすっきりとした、ほんのり甘い味になている
「……うまいんだけど」
その言葉を聞いた菜月は、ニッと笑い終始笑顔で食べ続けた
その顔を見ながら、ふるかも黙々と食べ続けた
完食し終わるまで、二人は無言で食べていた
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「………ちゃん、………かちゃん!ふるかちゃん!!」
「ふぇ!?」
菜月の声に、ふるかは変な声を上げて起きた
「お腹いっぱいになって寝てたの?」
「ん、そう」
ふあぁぁぁ、と大きなあくびを一つして背を伸ばした
「菜月は何食べてんの?」
「これ」
そう言って、バンズに肉だけのバーガーを見せた
「ファミ?」
「L」
「今度はLなチキンなのね…」
にへっと笑い、口いっぱいにバーガーを頬張っていく
これは、そんな話の噺
誤字脱字がありましたら教えて頂けると幸いです。
次回はどれくらいでできるかなぁ