1.「猫」が「海苔」を目の前に「先手必勝」をかます噺の話
過去作『三題噺 「ネコ 海苔 先手必勝」』を使用
お題「ネコ」「海苔」「先手必勝」
カアアァァァァンンンンンンンンンンン
高らかにコングが鳴り響いた。
と同時に歓声がわき、地震がおこったように揺れていた。
「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
雄叫びと共に2匹の猫が走り出した。
1匹は忍者のような姿で2本の小刀を逆手に、1匹は騎士のような姿で身の丈ほどの両刃剣を持っている。
忍者猫は騎士猫よりも身軽な装備に加え、足の速さが優っているのかコロシアムの中央で両者がぶつかり合うことがなかった。
素早さがないことが分かっていたのか、騎士猫は剣を肩にかけていた。突撃してくる忍者猫の勢いを利用している。
先手必勝を狙っているのだろう。
カキィィィィィィィィィィーーーー
小刀と剣の金属同士が衝突音が鳴り響く。
しかし、衝突したのは一瞬のことで、忍者猫は剣を滑らせるように横に払って騎士猫の後ろに転がって態勢を整えた。そして、騎士猫の背中に刃を一突きくらわせた。
力負けすることが予測していたかのような滑らかな動きだった。
しばらく耳が痛くなるほどの静寂の中、ドサッ、と音がして騎士猫が倒れた。
カンカンカンーーーーーーーーーーー
試合終了のゴングが鳴ると、再び地響きのような揺れがおこった。
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「そして、優勝した忍者猫は商品である高級カツオを使ったノリを手にーーーーー」
「いつまでやってんの!」
「って、イタッ」
妄想の世界に入り込んでいた菜月はふるかのチョップにより、現実世界に帰ってきた。
「よくもまぁ、そんな妄想がスラスラ出てくるわねぇ…」
「だってぇ〜、猫可愛いんだもん」
「それでも、睨み合ってる猫とその間にたまたまあったノリの缶詰があるだけだよ!?」
ふるかは呆れたように言いはなって帰ろうとした。
そもそも、当の猫たちは海苔の缶詰など目もくれずのんびりと日向ぼっこをしている。
「あ、待ってよ〜」
菜月もふるかを追いかけて行った。
そこに、夏の終わりを告げる風が吹き抜けた。
しかし、ふるかはビタッと止まったかと思うと、急に叫び出した。
「待って!?なんで夏が終わろうとしてるの!?昨日まで春だったのに!?この間二年生になったばかりだよね!?」
彼女等は夏休みにある最後の補講の帰り道、まだまだある夏休みに胸を踊らせ、これからくる新たな始まりの始業式に微かな不安をーーーーーー
「コラッ!ナレーション!いい風にしめてくな!!!」
ーーー抱くのであった。
「おい!」
「ふるかちゃんや、ふるかちゃん」
「な、なに?菜月」
菜月は間をあけてこう言った。
「気にしたら負けだぞ♪」
「んなぁぁぁぁ!!!!!!!」
ふるかの叫びは紅色に染まった空に吸い込まれていった。
これはそんな噺の話。
こん感じに、大体なんでもありな展開を予定しています。
いいな、と思っていただけましたら幸いです。