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公爵令嬢は簡単に婚約破棄される③

 ヴェルナー・ガルデン2世だったか3世だったか。長らく同じ国や地域に身を置かないで生きてきたからか、誰が国王陛下なのかも覚えていないし、正直サシャにとっては興味の対象外なのだ。そんな君主の住まう城を持つ、王都と言うのか首都と言うのか、ベッケンというのがこの都市の名前である。


 復讐代行事務所の古屋敷から、空でひとっ飛びでベッケンに2人は来ている。とは言っても、月見バーガーもとい月見モーナー飛行で此処に来ている為、既に酒場と宿屋位しか空いているお店は存在していない。


「いやいや、こんな時間だって言うのに随分賑やかな事だね。モナちゃんもそう思うだろ?」


――ざわざわ がやがや


「サシャちゃん、ビール頼んでも良い? へぃっ、マスター、キンキンに冷えたビール頂戴っ♡」


 (声でかっ、それに人の話を聞けよ……)


「お待ちー、見かけない顔だな」


「ちょっと所用でね」


「やっぱ姉ちゃん達も新しく見つかったダンジョン攻略組なのか? あんま無理すんなよ? もう何人も戻ってきてねーんだ。其れに……『ゴクッ』。姉ちゃん達なら大抵の貴族も大商人も、コロッといちころだろ? ドゥフ」


――ぷはぁ! おいすぃー!


「マスターはケツが趣味なのか? それともそんなデカい図体して受け専なのか? 悪いが何方もわたしはゴメンだ」


「は、はぁ? いやいやいやまさか野郎には――」


「それと、ツレは誰にも手に負えないから辞めとく事を進めるけど?」


――バンッ


「サシャちゃんは私のだっ。手だろうが尻だろうが、尚更――なんて出したら、この場で切り捨てる! あんた達の血が残り一滴も出なくなる位に、絞り出しちゃうんだからねっ!」


――シャキシャキ


 何処から取り出したのか、でかハサミでモナは何かを切る素振りを見せつけると、「ひいーっ」と、有象無象は股間を守る姿勢を取った。大の大男達が皆逸物を押さえて屈んでいるのだから、世界珍百景と言わざるを得ない。


 其れはさておき、サシャもモナも大声で周りの冒険者や、その他有象無象に対して、自分達に向けられていた視線への、当て付けをしていくのだけれど、たったこれだけで、不埒な声を掛けてくる輩が減るのだ。長年の処世術というものなのかもしれない。


「で、マスター。ちょっと聞きたいのだけれど、公爵家の()()話は詳しいかい?」


「なんだ、そんな事知らない奴もいるんだな、知ってることで良いなら教えてやるよ」


――ぷはぁ! お代わりっ!


 隣のモナはぐびぐびとビールのお代わりを空け続けるている。サシャは勿論(はぁ)と溜息を着きながら、マスターが知る噂話を独りで聞くことになった。


――ぷはぁ! ゲップ! ぷぷぷークスクス!


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


――オロオロオロオロっ! クビベェウォォオ!


「ドレス汚れるよ。はぁ。いい歳して君は……」


――――――


 第弎幕 見

     慣

     れ

     ぬ、天井


「おはよぉ♡あれ、見慣れぬ天井だ。ここ保健室?」


「おいおい、モナ。地の文読みやがったな、台無しだろうが」


 モナは「ぷぷー」と見知らぬ天井を目にしケタケタ笑っている。笑っている。笑って……。


「取り敢えずモナちゃん臭いから、風呂入ってきたらいいと思うよ?」


「ちょ、臭いって酷いよおおっ」


「だって、ねぇ。あとドレスは棄てたから新しいの創ってね……」


「うぇぇん……」


 昨晩の惨劇の為、安宿ではなく風呂付きの豪華なホテルに泊まることになってしまい、より一層、今回の稼ぎに期待するしかないサシャである。

 モナの深紅のドレスは、彼女の力で創り出す事が出来るのだけれど、力を使わせると血を求められてしまう為、サシャはなるべく洗濯で済ませるようにしているのだった。とは言っても、今回は、やむなくの仕方のない事なのだけれど。ただ、奥から聞こえるモナの鼻歌を強制的に耳にしなければいけないのだから、サシャの表情に影を見せるのも当然の事なのだろう。


 その後、暫く風呂を満喫したであろう、ルンルンと髪を拭きながらモナが部屋に戻ってきた。


「ごめんね? 酒場に着いてからの事、あまり覚えてないの、何か手がかりはあった?」


「うーん。わかったと言うか予想と違うと言うか、一先ず聞いてみない事にはなんとも。仕事になると良いんだけれど」


「ふーん。まぁ、サシャちゃんなら大丈夫だよっ! 何時もなんだかんだで、仕事にしちゃうじゃない」


「はい、ありがと。で、今回の依頼人はどうやら城の離れにある隔離塔だかで投獄されてるって噂なんだよ。普通なら余程大罪でも犯さなければ、そんな事無いんだろうけどね。だから、予想と違うって事なんだ」


 サシャは今回の依頼を別の視点から予想していた。当然、仕事になるのならきっちりと済ませる性格を持ってはいるけれど、通り魔めいた真似はしないのもサシャの流儀なのである。モナはそんな話を「ふーん」と、支度をしながら話半分に聞いている様子だ。


 其れでは仕事の始まりである。

 2人はその後一旦別れ、0時に噂の塔の前で集合する事となった。


「遠くから見ても凄かったけれど、真下に来ると尚更大きさに驚いてしまうな。なんでまた、こんな無駄に大きくしてるのやら」


 丁度の時間で待ち合わせ場所に到着したサシャは大きな白い塔を目の前にし、驚きのあまりに独り言を述べる。そこへ、丁度良くも、蝙蝠の群れがサシャの後ろへと集まり、その群れの中心からは、何時もの美しいモナの姿を見せた。


「おまたせ、サシャ。――って、その人殺しちゃったの? ま、いいけど。ちゃんと言われた通りに調べてきたよお。サシャの言う通りだったかな」


「いやいや、少し悪夢を見せているだけだよ。起きてからのことは知らないけれどね……。それと、ありがとうモナちゃん。了解したよ。それじゃあ行ってみようか、牢の場所も聞けたし念の為鍵も貰っておいたから、一直線で行けるよ」


「流石サシャっ!」


 2人は門番から手にした鍵を使い、聳え立つ大きな塔を螺旋状に登っていく。


 (目が回るし、其れに、今どれくらいまで来たんだか……)


 無理もない、兎に角ひたすらと円錐の外周階数をグルグルと登り、塔中央にある牢からは啜り泣く声や、無神経そうなイビキで階数を数えるのが大変なのだ。どうやって食事を配給してるのかはわからないけれど、この塔は完全に罪人を投獄する為に作った建物なのであろう。それ以外の用途が見当たらない。


「ねぇねぇサシャ、担いで飛ぼうか?」


「いや、遠慮しておくよ。これだけ狭いと、あちこちに、ぶつかりそうだ。其れに、丁度、目的の場所に、 着いたよ」






――――――



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