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研修留学初日

「Welcome to the Empire of USA」


 僕らは異国の地に降り立つ。

 空港に到着すると、ローブを着た如何にも魔導士といった人が僕たち魔導専門学校魔導士科を出迎えてくれた。


「初めまして、米帝魔導学校3年のエレン・ミハエルです。ようこそおいでくださいました。日本王国魔導専門学校、魔導士科の皆さん」


 活きのいい甘い香りのイケメンが僕らを出迎える。

 僕らはイケメンに案内されながら米帝の魔導学校に到着した。

 日本人を見るのがよほど珍しいのだろうか、行き交う人々はもれなく僕らの方を見る。


「では、チームごとに分かれて、夕方から行われるレセプションまで、待機するように。魔導学校内は出歩いても良しとする」


 ロージェ先生は、僕らに指示を伝えると、米帝魔導学校の先生達と話しながら校舎の方に消えていってしまった。

 その様子を見ていた僕の前に先程のイケメンが突然現れる。


「どうも、先程ぶりだね、君がチーム・ニベリウムのリーダー、アスカ・ニベリウムかな?」


 イケメンはすでに僕の名前を知っている。

 そんな奴が目の前に現れたならば、普通は警戒する。


「いやいや、そんなに警戒しないでよ。僕はエレン・ミハエル。上級攻撃魔導士です。チーム・ニベリウムの媒体滞在期間のお世話係になったんだ」

「そうだったんですね、警戒してすみません」


 僕は咄嗟に謝る。


「いいのいいの、それで、こっちが英雄の息子ヒビト君で、後、ナオミさんとマミさんかな? よろしくね。」


 エレンは、僕やヒビト、ナオミ、マミと1人ずつ握手を交わす。


「それより君たち、いいものを見たくないかい?」

「いいものですか?」


 突然エレンが両手を広げて嬉しそうに告げたため、僕は、聞き返す。


「そう、いいもの。君たちは運がいい。今日はね、なんと5年に一度の軍事パレードの日なんだ。あと一時間ぐらいで始まるんだがどう? 行かない? 魔導戦車とか魔導戦闘機とかも今年は見られるよ!」


 魔導戦車に魔導戦闘機!?

 ユミ姉が言っていたあれだ。

 それは見たい、是非とも見たい!


 だけど、さっきロージェ先生は待機と言っていたよな。


「あの、担任の先生が待機と言っていたので、軍事パレードみたいですけど‥‥‥。無理そうです」


 僕は、渋々行けない理由を伝える。

 本当に残念である。


「そうなんだ。だけど、大丈夫、夕方のレセプションまでに間に合うし。じゃあ、ちょっと待ってて」


 そういうと、エレンは携帯を取り出し、どこかに連絡を取り始めた

「あー、ニーベ? あのさ、軍事パレードに行きたいんだけど、僕の担当の生徒さんが待機命令出されていて、外出できないんだって、そうそう、何とかして欲しいんだけど、じゃあよろしく」


 かなりフランクにとんでもないことを話している。


「ちょっと待っててね」


 エレンは笑顔を僕らに向ける。

 僕は、現状を把握したいがために、エレンに先ほどの電話について訊く。


「あのどこに連絡したんですか?」

「あ、僕の家の執事にね連絡したんだよ。っと、もう連絡きた。ちょっと待っててね。うん、うん、ありがとう。それじゃあ」


 電話を切るとより一層の笑顔を僕らに向け、告げた。


「許可が下りたよ! さあいこう」



 ———

 エレンのおかげて簡単に校外に出ることができた。

 しかし、僕らは、皆同じ疑念を抱いている。


 それは、なぜ、外出の許可がいとも簡単に出たのかである。

 エレンが執事に電話をかけて、そしたらすぐに外出許可が下りた。

 どうしたらそんなに簡単に許可が下りるのか。


 聞きたい欲求に耐えきれず、ヒビトがついに口を開けた。


「エレンさん、どうしてこんなに簡単に外出許可を取れたんですか?」

「あ〜、さっきからこそこそ話していたのはそのことかい? 許可が取れたのはね、まあ、僕が米帝大統領の息子だからかな?」


「「え!?」」


 僕らは一同驚愕する。

 米帝の大統領の息子!?

 とんでもない子じゃないか。


「あ〜息子って言っても次男ね、ちなみにすごいのは親父であって、僕ではないから。だけど、使えるものは使わしてもらう主義でね」


 エレンはあははと笑いながら、しれっと信条を述べる。

 僕らが、驚愕的な事実を目の前に、何も話せないでいると、エレンは楽しそうに話し出す。


「さあついたよ。軍事パレードをこのV. I. P.席から見よう」


 エレンによって連れてこられた場所は、厳重な警備の元、関係者以外立ち入り禁止と書かれた V. I. P.ゾーンであった。


「エレン様、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」


 黒いスーツを着た男が、エレンの前に現れ、案内する。


「さあ、こっちこっち」


 僕らはただ言われるがままについていくと、なんとパレードの中心地ではないか。


 ほどなくして、軍事パレードは開始された。

 まず、米帝大統領の訓示があり、その後、パレードが始まった。


「あれあれ、あれが魔導戦車。最新兵器だよ」


 エレンは興奮気味に語る。


「魔導戦車って、普通の戦車と何が違うんですか?」

 僕は素朴な疑問を投げかける。


「魔導戦車はね、魔導士が1人登場して、魔導を供給することで、砲弾の飛距離が飛躍的に向上して、さらに威力も向上してるんだ。後、最新版では弾頭には魔導防御中和術が織り込まれていて、防御魔導を中和して無効化することもできるんだ。戦車自体の防御力も魔導で強化されてるよ」


 いやいや、それはとんでもない兵器じゃないか。防御魔導が無効化されてしまうなんて。


「あ、次は、魔導戦闘機が来たよ」


 魔導戦闘機、一見普通の戦闘機だが何か特別な仕様なのだろう。

 そう考えていると、エレンがまた得意げに語り出す。


「通常、戦闘機が魔導士を攻撃する際は、ミサイルだと撃ち落とされやすいから、魔導弾を詰め込んだガトリング砲を使うんだけど、魔導戦闘機は、魔導士が操縦することで、ミサイルに魔導を供給する。すると、ミサイルは魔導検知システムにより、魔導士を識別して、魔導士をロックオンできるだけでなく、自律的に防御魔導も限界させることができて、敵魔導士の攻撃を防ぎながら攻撃することができるんだ。後、ミサイルの弾頭にはもちろん魔導防御中和術が織り込んであるんだけど、」

「え、そんなの無敵じゃないですか?!」

「そうだよ。米帝は科学大国でもあり、約30,000人の魔導士を有する魔導大国でもあるからね。魔導の有効活用には長けてるんだ。ちなみに、魔導兵器は魔導具士が製造しているんだが、忌み嫌われる魔導具士を再教育し、徹底的に管理することで、悪さを働かないようにして、これら兵器製造に従事させる。それにより、高品質な魔導兵器を実現してるのさ。今や、向かうとこ敵なし。来年くらいから実戦投入されるらしいから、楽しみで仕方ない」


 エレンは鼻高々そうである。

 だけど、この現実を見ればそうなってしまうのも頷ける。

 まだ、実戦には投入されていないらしいが、こんな兵器が実戦に投入されたら、世界のパワーバランスが変わってしまう。

 日本王国は大丈夫だろうか。

 ユミ姉の『絶対防壁』は通用するのだろうか。


 僕は将来、もし米帝とのいざこざが激化し、戦争にまで発展した時のことを心配する。

 心配しても仕方ないかもしれないが、考えずにいられなかった。

 それは、ヒビトやナオミ、マミも同じようで、皆、笑顔ではなく真剣に、眉間にしわを寄せながら兵器を見ている。


「まあ、僕らだって戦争はしたくない。だけど、武力は外交や国を守り維持するために絶対必要だ。それはアスカ君にだってわかるよね」

「はい、それはとても分かります」


 僕は、短文でしか答えられなかった。

 米帝の科学力の強さ、魔導力の強さに気圧されて。


 その後、1時間ほどで軍事パレードは終了した。


「さて、戻りますか」と、エレンが席を立ち上がる。

 僕らもそれに合わせて立ち上がる。

 立ち上がって、出口に向かう人たちを見る。

 多分ここにいる人達みんなが、米帝で重要なポストに就く人達なのだろう。

 そう思い、注視しながら人々を見ていると、一際大声で会話する男の声が聞こえてきた。


「今回のパレードは最新兵器が観れて良かったな。この世界もまだまだ発展してるということか」


 その男は、付き人と思われる女性に向かってパレードの感想を述べている。

 その目立つ存在感から、アスカも自然とその男に目を向ける。

 そして気づく。



 その男は、僕の前世で家族を殺し、今世ではあすなろ荘を襲撃した、あの男であることを。

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