番外編 マミの芽生え
レイト君から襲われた時、一番に駆けつけてくれて、荒々しながらも私を助けてくれたアスカ君。
本当に嬉しかった。
だけど、兄と決別してしまうキッカケを作ってしまった罪悪感が私の中で燻る。
この罪悪感をどうすればいいのかな。
とりあえず、明日お礼に大福をあげようかな。
自宅待機の次の日、私は、お礼にとアスカ君に大福を渡しました。
私が最も好きなお菓子のうちの一つである大福を。
渡した時、ヒビト君や、ナオミちゃん、アスカ君は、なんだかキョトンとしていたけれども、最後には喜んでくれていました。
そして、アスカ君のその喜んでくれた笑顔を見た時、私の心の真ん中が少しだけ暖かくなることを感じました。
こんな気持ちになったのは、初めてです。
大福を渡した後の魔導演習授業。
私は魔導演習授業が苦手です。
私の得意な魔導は治癒。
攻撃や防御は不得意なため、みんなにみっともないところばかり見せてしまいます。
アスカ君にも。
私だって、もっとかっこいいところを見せたいのです。
だけど、現実は上手くはいきません。
ただ、その日は私も活躍することができました。
アスカ君とナオミちゃんが練習し合っていた時に、アスカ君が少し負傷したのです。
私は、ここぞとばかりに、アスカ君に近づき、治癒魔導を使おうとしました。
そして、アスカ君の手を持った時‥‥‥
急に心臓が『トクン』と音を立て、痛くなり、顔は熱くなったのです。
こんな経験は初めてで、自分でも何がどおなっているのか分からなくなり、思わず、アスカ君の手を離してしまいました。
不思議そうにこちらを見てくるアスカ君。
私は、すぐに冷静さを取り繕い、アスカ君を治癒しました。
その後も、アスカ君と離している時、不意にアスカ君に近づいた時に、胸のあたりがキュッと締め付けられる感覚に陥りました。
循環器異常かと思い、お医者さんにもかかりましたが、異常はないようで‥‥‥。
私は、考えました。この動悸は一体なんなのか。
だけど、なんなのか分からず、ある日の放課後、ナオミちゃんに相談しました。
するとナオミちゃんは予想外のことを、言いだしました。
「マミ、それって恋だよ」
‥‥‥それは恋だそうです。ナオミちゃん曰く。
「恋って、あの、彼氏彼女とかっていうやつ?」
「いやいや、マミ、それは飛躍しすぎ。マミはそういうことには疎いからね。昔から。昔からモテてたのに、一切興味を示さなかったのに、初恋がリーダーか。チーム内は禍根を残すことがあるから、極力恋愛感情とかは抱かないようにするものだけれども、マミは恋愛初心者だから仕方ないか」
「恋愛初心者って酷い言い方ね」
「ごめんごめん、だけど、それは恋だし、マミはもう自分の気持ちに気づき始めている。私は応援するわ。チーム内ってのが心配だけど。マミの好きなようにすればいいと思うわ」
「好きなように?」
「好きなようによ。想いを秘めたままにするのも良し、告白するのも良し。他の人を好きになるのも良しよ」
‥‥‥告白。アスカ君に。
そんなこと考えても見なかったし、自分がそういう風なことになるとは思っても見なませんでした。
だけど、ナオミちゃんに、恋だと断定されてから、なんだか胸の内がスッキリしました。
やはり、これは恋というものだそうです。
「だけど、マミ、イバラの道かもよ。アスカを狙うのは‥‥‥」
ナオミが空を見上げながら、心配そうな顔つきでマミに告げる。
「イバラの道って?」
「アスカって、他校に好きな人がいるらしいよ。噂で聞いたのよこの前」
「え!?」
まさに、寝耳に水な情報です。
いきなり出鼻を挫かれた気分です。
「それって本当なの?」
「まあ、噂だから真偽はわからないけどね。マミも本当にアスカを口説くなら頑張った方がいいわよ」
「え、あ、うん」
全然自信がありません。
そもそも、他の人を好きなのに、アスカ君の気持ちをこちらに向けようとする行為自体に罪悪感を感じます。
だけど、私に振り向いて欲しい——。
そんな気持ちが私の中に溢れ出てきてしまいます。
抑えても抑えても。
まあ、考えても仕方ありません。気持ちの問題は。
とりあえず、良きチームメイトとして、人を守りたいというアスカ君の夢を手助けをしていこうと思います。
前途多難なことには変わりありませんが、私は、アスカ君やヒビト君、ナオミちゃんと一緒に一流の魔導士になるために前に進みます。
皆を助けられるよう、一流の治癒魔導士になるために。




