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師匠と弟子

 ソイニーさんは、あすなろ荘に到着すると、すぐに自分の元に駆け寄ってきて、僕を強く抱きしめた。


「アスカ、すぐに駆けつけてあげられなくてごめんなさい」

「え?ソイニーさん、今僕のことを呼び捨てに?」

「ええ、さっきまで無線でシルベニスタ家の人から現状を聞いていたわ。アスカ、よく頑張ったわね。あなたは今日から私の弟子よ」

「ソイニーさん、僕のことを認めてくださるんですか?魔導修行を続けてもいいんですか?魔導もろくに使えない落ちこぼれなのに」

「何を言ってるの。あなたは命を賭して子ども達を守り通したじゃない。人の守るために行動できる人、魔導士には必ず必要な素質で、あなたはそれを行動で示した。

 例え、魔導の力が少し他の人より弱いとしても、アスカ、あなたは私の弟子になる条件を満たしたわ。私は生涯かけてあなたを立派な魔導士として育て上げます」

「ソイニーさん、ありがとうございます」

「師匠と呼びなさいよ、アスカ」

「ソイニー‥‥‥師匠」


 姫様にもう一度会うために。

 前世での無力な自分を変えるために。

 守りたい人を守れるようになるために。

 僕は魔導士を目指した。


 しかし、現実は残酷で、魔導具士としての才があった僕は、魔導士にはなれないという現実を突きつけられた。

 魔導具士として、世間から白い目で睨まれながらも、生きていく方が幸せなんじゃないかとも考えた。

 しかし、魔導士になる夢を諦められなかった。

 諦められなかったから、最後まで足掻いた。


 そして、遂に、僕の望みは叶えるためのきっかけをつかんだ。


「あ、そうだ、弟子になった記念にこの指輪をあげます」


 ソイニー師匠は、自分の指にはめてあった細く何も加工されていないシルバーリングを僕にくれた。

 そのリングには、”魔導は人々のために”と彫られている。


「この指輪は、私が魔導を込めて祈念してあるお守りみたいなものです。何かに使えるというわけではありませんが、持っていてください」

「ありがとうございます」


 僕は、高揚しながら、ソイニー師匠からもらったプレゼントを嬉しそうに眺める。

 


「なんだまだ弟子入りすらしていなかったのか」


 そばでことの一部始終を見ていたロージェが会話に入ってきた。

 いい雰囲気が台無しになったのは心に留めておこう。


「ロージェまだいたんですか?

 その暑苦しさどうにかならないんですか?

 アスカに変なことを教えないでくださいよ」

 ソイニー師匠は僕から離れると、ジト目で鬱陶しそうにロージェを見た。



「ソイニー隊長、相変わらず手厳しいですな!

 ワハハ」

「隊長っていつの時代ですか。やめてくださいよもう」

 ロージェの豪快な笑い声の傍、プクッと膨れるソイニー師匠。


「あの、2人は知り合いなんですか?」

「こんな暑臭いやつは知りません」

「またまたソイニー隊長そんなこと言わんといてくださいよ〜。

 アスカ、ソイニー隊長とは昔、シルベニア大戦の時共に戦ったのだ。ちなみに部隊長であったのだ」


「ソイニー師匠が隊長!?」


「そうだ、迫り来る中つ国や米帝を杖一つで薙ぎ払うその姿は、東洋のジャンヌダルクとも言われていた」


「それは昔の話です」といいながらそっぽを向くソイニー師匠。


 てか待てよ、シルベニスタ大戦って10年くらい前だよな。

 ソイニー師匠って今何歳なんだ?

 ううん、絶対地雷だから、この話は置いておこう。


「それはそうと、ロージェ、今回の襲撃者は一体誰なんですか?」


 ソイニー師匠が、ロージェをしっかりと見据える。

 ロージェもそれにつられ、背筋を伸ばす。


「あいつは見たことないやつでしたな。

 それに見たことない刀を持ち、感じたことがない魔導を感じました。

 そして最後に、現世では禁忌とされている転移の魔導を使用した‥‥‥」


「転移魔導、暗殺が横行して世界のシステムが崩壊するからという理由で、天界が禁忌として定めた魔導。

 そのような魔導を天界に見つからずに使用することなどできるはずがありません。

 しかも転移魔導なんて私みたいな帝級魔導士レベルか、初代魔導具士、天界魔導士くらいしか使いこなすことはできないはず。となると、奴は天界人の関係者‥‥‥?まさか天界人なのでは!?‥‥‥」

「ソイニー隊長、それは考えうる中で最悪の考えですが、今はまだ秘めておいた方が、身のためかもしれないですな」

「そうですね、天界を疑うとなれば、こちらもかなりの覚悟をしなけれなりませんし、慎重に行きましょう」


 ソイニー師匠とロージェは神妙な面持ちで、一旦臭いものには蓋をすることにする。


「それより隊長、アスカについてなんだが、少しアスカを借りることはできないですか?」


 借りる?

 ロージェ剣豪は一体何を言ってるんだ?


「借りるですって?」


 ソイニー師匠も訝しげな顔つきでロージェを見る。

 ソイニー師匠も同じように不思議に思ったらしい。

 まあ、それはそうだろう。


「いや、彼は魔導があまり得意ではないのだろ?

 ならば、ワシが直々に剣術を教えようかと思ってな。

 なんだか見込みがありそうな雰囲気がするのじゃ」

「アスカに剣術を?

 弟子になったばっかりのアスカを取ろうとしないでください!」

「いやいや、取ろうとかそういうつもりはないのだが‥‥‥。

 どうだいアスカ、悪い話じゃないだろう」


 ロージェは僕の方をやや困った表情で覗き込んでくる。

 悪い話ではない。

 ロージェは魔導具士でも帝級になれているが、僕がそこまでなれる保証はない。

 ならば、魔導以外にも何か特技を身につけておくのも悪くない話だ。

 だけど‥‥‥ソイニー師匠が、さっきよりもとてつもなく膨れている。

 こんな状況で、剣術が習いたいなんて言えるだろうか‥‥‥いや、言えない。


「今回は遠慮——」

 僕は、とりあえず数ヶ月は魔導修行に専念しようと思い断ろうとした時、


「いいですよ。剣術を習ってきても」


 ソイニー師匠がそっぽを向きながら許可をくれた。


「実際、アスカは複合的な攻撃手段を身につけた方がいいですし。剣術を剣豪ロージェに習えるなんてまたとない機会ですし。いいですよアスカ。強くなってきなさい」


 ソイニー師匠は満面の笑み。


「あ、ただし、週3回は魔導修行をしますので!」


 ソイニー師匠は腰を少し曲げながら、メッというポーズで僕をたしなめる。


「それは任せてください。ソイニー師匠」


 僕も、満面の笑みで、ソイニー師匠の期待に応えようと覚悟する。


「それじゃあアスカ明日からシルベニスタの屋敷に来なさい」

「分かりました。明日からよろしくお願いします」


 ロージェはそういうと、凄まじい脚力で飛び上がり、そのまま彼方へ消えていった。


「アスカ、米帝魔導士や実況見分はは警察やシルベニスタ家の魔導士に任せて、私達も病院に行きましょうか。ユミや子ども達が心配ですし」

「そうですね」


 真っ赤な夕暮れが地平に半分隠れた、闇が入れ替わり空を覆う狭間の時間に、師匠と2人であすなろ荘を一旦後にした。

第2章はここまでになります。

ここまでご覧いただきまして誠にありがとうございます。

毎日読んでくださる方々がいらっしゃり、大変嬉しく、感謝申し上げます。

物語はまだまだ続きますのでよろしくお願い申し上げます!


また、ご一読後、「面白い!」「応援したい」などなど思っていただけましたら、ブックマークの追加または、画面下にある『☆☆☆☆☆』での評価を頂ければ幸いです。

純粋に嬉しくなります!

また、感想もお待ちしております。

よろしくお願い致します。

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