もんだいそのいち ソシャゲ
「お父様、このままでは国が滅びますよ」
わたくしがこのヤパン王国の宰相であり、フォレスター公爵家当主でもあるお父様にそういうとお父様はものすごく驚いておりました。
「な、なんだってー?!
それは本当なのかキバ〇シ!」
その言葉にわたくしは苦笑して答えます。
「だれがキ〇ヤシですか。
たしかに最近はトビバッタが大量発生して農作物を食い荒らしたり、大雨が続いていて洪水があちこちで起きたり、伝染病が世界中で猛威を振るって、世界は終末的様相をていしているのは事実でありますが」
私の言葉に重々しくうなずくとお父様は続けて言いました。
「話は聞かせてもらった。
やはり人類は絶滅する。
ノストラ〇ムスもそう書き記していたであろう」
「お父様。
ノストラダム〇やらマヤカレンダーやらがあまりにも適当すぎて、もう誰も人類滅亡なんて信じていませんわ。
だいたい、預言者や宗教的指導者や未来人と名乗る人たちの中で現状を正確に予言したものなどいませんわ」
「いや、なんとなくそういう流れだったであろう?
で、なぜそのようなことを突然言い出したのだね?
我が国は平和で経済的にも豊かであり、この国が亡びるようなことはあり得ぬように思うが?」
私はお父様の言葉にうなずきつつ答えます。
「確かに今すぐ滅びるということではありません。
しかしながらそうなる要素が現在ではたくさんございます。
例えば……」
私は胸から石板を取り出してお父様に見せます。
「お父様はソシャゲ……というものをご存じでしょうか?」
お父様は重々しくうなずいて言いました。
「うむ、聞いたことがある。
中国は宋の時代の武術家、祖・車夏が武術鍛錬の方法として毎日決まった基礎的訓練を日々任務として設定してそれを繰り返すことで効率的に鍛錬を行なったとされる説話をもとに作られた遊戯であろう?」
「え?!
そんな説話があったのですか?」
「うむ、民明書房大全にそうかいてあったぞ」
「そ……そうだったのですか。
しかし男塾ネタがわかるのはアラフィフのおっさんだけのような気がいたしますが……」
「男塾外伝 紅!!女塾は割と最近の作品だが?」
「むさくるしい男塾のキャラクターを全員萌えキャラにしてしまうとは……。
さすがわがヤパン王国はHENNTAIの国ですね……」
「うむクールヤパンだな。
わしもこの話が終わったら、うまぴょいするんじゃ」
「お父様。
うまぴょいの意味は分からないが、若いものが使ってるらしいので言ってみたのであれば恥ずかしいですし、意味が分かっているうえで私に向かって言っているならセクハラですわよ?」
「すまん、実は意味はよく知らぬのだ」
「むしろクレイジーヤパンの方が正しい気がしますが……。
ま、まあ、それならば……そのお話はおいておいて、そのソシャゲが問題なのでございます」
私がそういうとお父様は首を傾げました。
「具体的には何が問題なのか?」
「例えばFG〇というソシャゲの水着ガチャが開催されていた時には一日の課金額が3億円、一か月で90億円ものお金がこのゲームにつぎ込まれていたのですわ」
「ふむ、二次元キャラの水着ガチャに月90億円もの金が動くというのはあほらしいし、きもいと思うが……」
私はそういうお父様をたしなめました。
「お父様、あなたは今の発言で世界中のF〇Oプレイヤー全員を敵に回しましたわ。
もし今の発言が公的な場所の物であったり、ツイッターでのツイートでしたら今頃は文春砲の集中砲火を浴びていますわ」
「う、うむ、失言であった」
「お父様はうっかり失言が多いのですから注意なさってくださいませ。
それはともかく二次元キャラの水着ガチャに月90億円もの金が動くというのが問題なのではありません」
「では何が問題なのだね?」
私は私付きのメイドに視線を向け言います。
「言ったとおりに育成はできていますわね」
「はい、大丈夫でございます、お嬢様」
私はまず私が取り出したタブレットの画面を指し示します。
「こちらは月に百万円ずつ、二か月で合計二百万円を課金して育成したキャラクターデータ」
そしてもう一つのタブレットを指し示して言います。
「こちらは一切に課金をせず同じく二か月育てたキャラクターデータです」
お父様はそれらの二つを見比べて言いました。
「なるほど、だいぶ能力に差があるようだな」
「はい、ではこのゲームにはプレイヤー対戦要素がございますので、今から対戦を行いましょう。
私課金している方で、お父様は無課金の方で」
「う、うむ?」
私はお父様の手に有無を言わせずにタブレットを持たせました。
「では、はじめます」
そして私とお父様の対戦はあっけなく決着がつきました。
言うまでもなく私の圧勝です。
お父様はうなだれて言います。
「これはひどい……なるほどつまりソシャゲは課金をせずに遊ぶものが不利すぎるというわけだな?」
私はお父様の言葉に首を振ります。
「いえ、課金しないものが勝てないのは大した問題ではありません。
問題なのは廃課金すれば、何も考えずとも戦闘に簡単に勝てるようになってしまい、それはコンピュータのキャラだけではなくほかのプレイヤーキャラに対しても同様だということですわ」
私がそういうとお父様は首を傾げました。
「ふむ、それの何がいけないのかね?
個人で稼いだ金を何に使おうとそれは個人の自由ではないか?」
「確かに本来であれば、個人が稼いだお金をどのような使い方をしようとそれは個人の自由です。
ですがソシャゲの場合は問題が二つあります。
ガチャ要素のギャンブル性と、莫大なお金をつぎ込めば確実にキャラクターの強さを得られることによる全能感や蹂躙欲求や支配欲求を満たされてしまうこと」
「ふむ」
「ようはソシャゲでお金をつぎ込むことで現実では満たされないそのような欲求が満たされてしまうことが問題です。
異性と恋愛や結婚をするために同じだけの金額のお金をつぎ込んだところで、同じだけの楽しさは得られないと考えればお金のある人間は恋愛や結婚をしなくなり、お金がない人間は異性に相手にされないので結婚できないとなります」
「ふむ、言いたいことはわかるが……実際に恋愛や結婚はギャンブルであるしな。
そもそもゲームのキャラクターよりも魅力がないと思われる女の努力が足りないんじゃないのかね?」
「あ、お父様?
今お父様は世界中の女性を敵に回しましたわよ?」
「そうはいっても、実際に私の奥さんも結婚する前は抜群のスタイルをした美しい女性だったが結婚後は冬眠の前に食べまくったヒグマのように……」
お父様がそこまで言いかけた時、突如としてお父様の背後にあった壁がぶちぬかれました。
「お口チャックの時間だゴラァ!!」
ぶちぬかれた壁の砂煙の中から現れたのはお母さまでした。
「あら、お母様」
そしてお父様はお母さまのお姿を見て狼狽しています。
「な?!
い、いつから?!」
「結婚後は冬眠の前に食べまくったヒグマってところだゴラァ!!」
お母さまはその丸太のような腕でお父様にラリアットをぶち込むと、お父様がグルんぐるん回転しながら空のかなたまで飛んで行ってしまいました……。
・・・
とりあえず勢いだけで書いたので特にオチはありませんw
最近は執筆意欲がはかどらず、かけるのはエッセイばかりだったので、リハビリがてら、物語風エッセイを書いてみました。
ソシャゲの問題としてはガチャのギャンブル性ばかりが取りざたされますが、実は金をつぎ込めばつぎ込むほどキャラクターを強くできるが、逆にいえばプレイヤーに戦闘のセンスとか反射神経やコミュニケーション能力をつけようとする努力や創意工夫がなくても、ただ強いだけのキャラクターで無双できて、失敗の経験などをせず全能感や蹂躙欲求や支配欲求を満たされてしまうことだと思うのですね。
そうなると金のあるコミュ障が増える一方で、これも少子化の原因になってしまうのではないかなと。
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星5評価なら小躍りして喜びますし、星1評価なら部屋の隅っこでいじけて体育座りすると思いますw