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懸賞


 <黒銀の栄光>号は、帝都のある星系外縁、恒星間ワープ可能な位置まで一気にワープした。

 <黒銀の栄光>号ブリッジのモニターに星の海が映し出される。


「ワープアウトしやした」

「敵は?」


 キティは端的に聞いた。もはや問題なのは、ここが罠の終着点なのか否かだけだ。


「レーダー……近隣に反応なし」


 ブリッジの男達はすでに平静を取り戻している。

 はじめこそ予想外の事態に驚いたが、腹をくくればなんでもない。この罠をくぐり抜けられるかの勝負だが、くぐり抜けられなくとも愛すべきキティ(おかしら)と共に死ねる。


「ここじゃないか」


 キティは腕を組んだ。チラリと操舵手に目を向けるが、操艦は奪われたままのようだった。


(だとすると)


 キティが予想した矢先、電子音声が再び響く。


「ワープドライブ起動します」

「行き先は、お隣ヴェネトβ星系のようで」

「終着点かな?」


 キティの問いにキュークが答える。


「まだじゃねぇですかい。お隣じゃまだ、帝国軍がおいつきやす」

「気にすると思う?」


 帝国軍が罠を仕掛けたという可能性が一番高い状況だ。


「仮にそうだとしても、こんな近くではやらんですね。俺たちをおっかけてくるならドラグーンでしょうが、貴族の坊ちゃん達に罠は見せらんねぇでしょう」

「じゃあ非公式な連中かしら」

「もしかすると賞金稼ぎかも」

「まぁ怖い」


 ふてぶてしくキティは怖がって見せた。


「操艦を奪われたままじゃ、好き放題に嬲られてしまうわ」

「おぅい、聞いたろう野郎ども。このままじゃお頭の清純なイメージに傷が付いちまう。なんとかする案ねぇか」

「イメージ一新して、水着着たハイレグビッチな女海賊の路線で行きませんかい」

「誰がお前の好みの話をしろっつった」

「そうだ。お頭に似合うのは古き良き伝統スクール水着だ」

「お前趣味悪いな。お頭にはビキニに決まってんじゃねぇか」


 話が脱線した。

 ブリッジではキティにどんな水着が似合うかの論争が始まっている。その様子を見て、キティはおかしそうに笑った。


「お頭、何が面白いんで?」

「ひ、み、つ。そうね、こういうのはどう。艦を取り戻すのに最も貢献した人に賞を出すわ」

「賞。どんな?」

「そいつの指定する水着を1日着てあげる」


 ブリッジの時が止まった。全員の思考を『まじか』が占領した。


「お、おかしら……。ほ、本気で?」

「女に二言はない」


 キティは言い切る。それで時が再び動き出した。


「全乗組員に知らせろ! ゲームの始まりだ!」

「同じ好みの奴でチーム組むぞ!!」

「お、俺マイクロビキニ派だけどいいのかな……」

「水着なら何でもありよ」

「うおおおおおお!!!」


 ブリッジが大騒ぎになった。

 こうなると競争だか狂騒だかわからない。だが<黒銀の栄光>号の男達の意思は完全に1つになっていた。


「ワープイン10秒前」


 コンピューターの電子音声などもはや誰も聞いていない。

 誰もが自分にできる範囲の全力で原因の特定と対応策の検討に取り組み始めていた。

 互いの足を引っ張ることは誰もしない。


「そのデータ見せてくんねぇか?」

「お前何派だ?」

「フリフリのかわいいビキニ派だ」

「よし見せてやる」


 と、相手の好みが許容範囲なら協力して進めていく。

 <黒銀の栄光>号がワープインし、超空間に入っても原因究明作業はひたすら続けられた。


 そして乗組員達の決死の調査の末、ついに操艦を乗っ取った犯人が見つかった。


「こいつですぜ」


 キティはキュークに連れられ、貨物室の中でそれと対面した。

 四角い貨物ボックスだ。外観は中身が食料であることを示す表示が張られていた。

 その貨物ボックスの蓋が開けられていた。

 中を見ると電子器機が詰まっている。まだ作動しているようで、基板のあちこちが点灯していた。


「コンピューター?」

「へい。こいつが艦のコンピューターと電波でやりとりして、乗っ取ってやした」

「こいつはどこから?」

「帝都で補給してもらった奴に紛れていたようで」

「チェックが甘かったわね」

「へい。担当にはあとできついお灸を」

「そうね」


 キティはすっとキュークに右手の平を差し出した。

 キュークは無言で腰のブラスターを抜き、キティに渡した。

 キティはブラスターの安全装置を外し、コンピューター貨物ボックスに狙いを定めると、引き金を引いた。


 エネルギーの閃光がコンピューターを貫く。

 電気がスパークする音がした。

 キティはさらに何度か引き金を絞った。執拗な銃撃を受けたコンピューターは動作をやめた。


「これでよし。功労者の評価は?」

「終わってやす」

「あとで水着の指定聞いといてね」


 キティはブリッジへ向かって歩き始めた。


「へい、それと、こいつがこの船を送ろうとした先の座標も分かってやすが?」


 キュークがすぐにその後を追う。


「そこ行くわよ」

「へい」

「罠だろうが何だろうが、私の船を汚した落とし前はきっちりつけてあげるわ」

順調にストックできてきました。

調子出てきましたよ。2章終わりまで専念します!(宣言しとかないと浮気するので)

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