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単独攻略

 

 独立防衛艦隊は、損傷を受けた艦の応急処置とけが人の集約を済ませた後、速やかに行動を開始した。


 まず艦隊がワープし、次に質量の大きさ故にワープインに時間がかかる要塞がワープをした。


 行き先はすでに別々だ。

 行動だけをみれば、独立防衛艦隊は仲違いをして分裂したかのようにも見える。


 連邦艦隊の偵察は必ずいるだろうと予想しての、小手先のちょっとした嫌がらせである。


 要塞は連邦軍が物資集積所にしているゼルヴェ星系めがけてまっすぐに向かっていった。

 連邦軍の偵察に見つかっても構わない、むしろ見つけてほしいというくらいの動きである。


 要塞の恒星間ワープ速度で7日。ゼルヴェ星系にたどり着いた。

 要塞は星系外縁にワープアウトした。


「ワープアウト完了。周辺宙域に異常ありません」


 待ち伏せはない。

 どこにワープしてくるか分からないものを待ち伏せることはほとんど不可能だ。


「近距離にワープアウト予兆発生。星系内ワープ、2隻です。ワープアウトまであと20秒」


 予定通りのワープアウトだった。

 数個前の星系でリッヒ子爵とキティに偵察に出て貰っていたのである。


 ドラグーンによる偵察は極めて生還率が高い。連邦軍には加速性能でドラグーンに勝る船はなかった。よほどのへまをしない限り、偵察に徹するドラグーンが捕捉され、撃沈されることはない。


「ワープアウト確認。ドラグーン<レルヴィオ>です。通信確立、偵察データ受信します」


 セツトがいちいち何も言わなくてもミツキが作業を進めていく。


「敵陣状況図、モニターに表示します」


 司令室のモニターに敵陣である物資集積所周辺の状況が表示された。


 物資集積所は、小惑星の地表を利用していた。大小様々な大きさの小惑星がただよっている宙域であった。

 連邦軍は、その中の直径300キロほどの、小惑星としては大きな部類に入るそれのクレーターを集積所としていた。


 大型の反応炉と、反物質や推進剤を保管するタンク、コンテナが並んでいる。


 周辺にはすでに連邦艦隊が展開していた。


「連邦艦隊6万隻です。うち1万は輸送艦と思われます」

「戦闘艦5万。多いな」


 連邦軍はかなりの戦力をここに集めたようだった。

 帝国艦隊はほとんど放置しているといっていいのではないだろうか。思い切った判断だった。連邦艦隊はすでにヴァイエル伯爵の死亡を知っているのだろうか、という疑念がセツトの頭をよぎった。


「これまでの戦闘データを参照する限り、脅威度はさほど高くありません」


 ミツキが断言した。


 彼らの艦隊が要塞に対して大きな脅威とならないのは仕方の無いことだった。


 連邦軍の建艦思想や艦隊構成は、対帝国、対王国を前提にしている。

 帝国と王国の基本戦術は、ドラグーンという騎兵隊が敵艦隊の戦列を突き崩すことにある。それに対抗する連邦軍は、対ドラグーン、すなわちすばしっこい相手をどうにかする、という思想で作られていた。


 連邦軍が艦隊決戦を行う相手として、要塞のような大質量重装甲の敵は想定されていない。


「艦隊だけならね。今回は拠点用の兵器も持ちだしてきてるんじゃないかな」

「拠点用の兵器?」


 ミツキの疑問は、何があるの、というものだろう。


「連邦軍が何を持っているのか知らないけど、帝国には拠点に設置する大口径ビーム砲や質量弾頭砲があったよ」


 そうは言ったものの、詳細なスペックまではセツトは知らなかった。

 有効射程は何キロだっただろうか。質量弾の大きさはどの程度だっただろうか。そうしたことを知っていれば連邦軍の兵器もある程度予想することができたのだが。


「なるほど。連邦軍がどこまで用意しているかが問題ですね。集積所地表の解析をしてみましたが、砲の特定はできませんでした。データが不足しています」

「うん。こればっかりは蓋を開けてみないとね」

「今回の戦いでデータを収集しておきます」

「よろしく。リッヒ子爵とキティを収容し次第、集積所の襲撃に向かう。ミツキ、ワープ準備を」


 2隻対5万隻では戦い以前の問題である。


 セツトは、予定通り要塞のみで戦闘を行うつもりでいた。


「了解。収容し次第ワープ準備します」


 ミツキが復唱した。

 要塞は<レルヴィオ>と<黒銀の栄光>号を入港させると、すぐに星系内ワープの準備をし、ワープを行った。


 ワープアウト位置は連邦艦隊の正面である。


 正々堂々の決戦。


 正面から連邦軍の備えを打ち破り、要塞が拠点攻略においても強力な戦力であることを各国に示す。


「連邦艦隊との距離、現在およそ1万5000キロ。1時間半後に要塞主砲有効射程に入ります」


 セツトは頷いた。

 連邦艦隊は、要塞が現われたのを見て艦隊隊列の向きを変えたほか、大きな動きはない。


 連邦艦隊の隊列は一見奇妙なモノだった。戦列艦が菱形に並んで隊列を組んでいる。フリゲート艦はその斜め後ろ後方に控えていた。


 しだいに彼我の距離が近づいていった。


 セツトがコーヒーを用意して貰い飲み始めたころ、戦いは動き始めた。


 周辺に浮遊する大小様々な小惑星、その小惑星が噴射炎を吹き出し、加速を開始したのである。


 その数30。

 小さなモノでも直径1キロ。大きなモノは直径8キロ。


「軌道予測、加速中につき最終軌道は不明ですが、本要塞への衝突軌道をとるものと予想します」


 ミツキの報告は、これが連邦軍の用意したものであることを教えてくれていた。



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― 新着の感想 ―
[一言] >連邦艦隊との距離、現在およそ1万5000キロ こんなに近いの?少なくとも100万キロ単位のような気がします。宇宙船の通常空間での最大速度が判らないので断言はできませんが、光速に近いのならば…
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