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そして僕は旅に出た。  作者: 高天原
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一夜の集い③

まだまだ続きます。よろしくお願いします。

午後6時、夕食の準備が整い食事室へ集合の案内が来た。男子は皆カレーライス程度の予想しかしていなかったが、はるか予想を超えビュッフェスタイルのディナーが用意されていた。社会人になるための練習か、思い出作りの為の演出かはわからないが、男子の歓声に女子達も満足げにしていた。

材料費の関係もあり高級食材とはいかないが、サラダにきんぴらごぼう、麻婆豆腐やミートボールに卵スープ等。食べ盛りにはそれらが大量にあるだけでご馳走に見えた。とにかく女子は頑張ってくれた。大宴会のような夕食を終えると皆で片付け、残った料理を女子達は小分けにタッパーに分けていた。夜食にするらしいどうやら女子も寝る気はないようだ。

午後8時。片付けが終わると体育館に集合。これからが本当の一夜の集いの始まりだ。お腹も満足しスケジュール通り、顧問の先生よりこの後の説明が行われ、それからレクレーションが始まるものと思っていた。その時突然照明がすべて消え、全員に緊張が走った。次の瞬間大音量の音楽が流れた。

「レッツ・パーティーナイト!」

体育館がクラブに変わった。スケジュール表では思い出話やスライドなどが上映される予定となっていたが、実行委員の粋な演出により全員騙された。もちろんそんな思い出話やスライドショーなんかよりずっと楽しいし、一番の思い出となるだろう。実行委員の一人がMCを務め、音楽の合間に過去の笑い話などを盛入れ、終わる頃には泣きながら抱き合う女子や、体育館の隅で手を握り合うカップルもいた。大成功の内にパーティーは終わった。興奮状態でその時は気付かなかったが、終わってみると数名減っており、騒がしいのは苦手という者は必ずいて、いつの間にか教室に戻っていた。その中に日向も居り、何食わぬ顔で体育館に戻って来た。

午後10時00分。そして再び全員が揃うと、いよいよ肝試しのスタートとなった。

この実行委員は期待を裏切ることはしない。男女2名づつ4名でチームを組み、クジを引きそこに指定された場所に行きスタンプを押してくるというものだった。また強制はしないので、辞退する者は事前に申し出るよう先に手を挙げさせた。数名手を挙げるなかに日向もいた。

(お前が企画したんじゃないのかよ!)

心の中でツッコんでしまった。理解できない言動は今に始まったことではないので、腑に落ちないが、彼女が掛かわると悪いことが起きる気がするので、逆にここは関わらないでいてくれることの方が安心できる。むしろ男女ペアの肝試しに淡い期待を抱いていた。

いよいよチーム分け、男女2名に分かれ男子と女子それぞれにくじを引き同じ番号を引いた者同士がチームになることとなった。俺達は5人で参加していたため、一人外れることとなった。俺は進んで一人になった。その方が色々気まずくないだろうと考えたが、下心見え見えな気もする。そこはお互い大人の対応をした。俺のパートナーとなった男子はC組のいかにもオカルト好きな3人組の一人で、話題の幽霊を見つけることを目的で参加したようだった。しっかり動画にして残そうとカメラとLEDライトを装備していた。まあそれは善しとして問題は女子との組み合わせ。彼となら取り合いになる恐れは無いだろうと意味もなく安堵していた。

しかし、完全装備と丸腰では女子は安全な方を選ぶということと、危険度では幽霊より俺の方が上と感じたのようだ。女の直感というものは恐ろしい。

いよいよ肝試しスタート。俺達のチームは必然としてC組の彼オカルト君がリーダーとなった。クジは3階視聴覚室と書かれていた。勝手のわかる学校とは言え、夜間の学校はやはり気持ちのいいものではない。非常灯の緑色の灯りや消火設備の赤いランプから作り出される影が、どことなく揺らいで見える。恐怖を和らげようと女の子に進路の話などを振るが、逆にオカルト君から静かにするように指導を受ける始末。ビデオに記録しているため、幽霊の声が入っているかもしれないとのことだ。それには若干女子も引き気味だった。わざわざ遠回りして目的の視聴覚室に辿り着いたが、仕掛けがされていることもなく、嬉しいサプライズもない。ただ遠くから他のチームの悲鳴のような楽しそうな声が響いて来るだけだった。

体育館に戻り仲間達にもやはり恐怖体験はなかったようで、もちろん嬉しいサプライズも起きなかったのは、この5人が集まっていることが何よりの証拠だろう。お互いに幽霊の話にしか触れないのは、傷のなめあいのようなものだ。しかしあの幽霊騒動は何だったのか、学校側としてはただの噂として証人ができ一安心といったところだろう。ただ生徒達はどこか期待していた部分もあり、皆消化不良のような雰囲気が流れていた。そんな中日向は我関せずといった面持でそのどよめきを俯瞰していた。

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