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そして僕は旅に出た。  作者: 高天原
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一夜の集い①

不定期な投稿になると思いますがよろしくお願いいたします。

翌朝、とても気が重たかった。夢なのか過去なのか現実なのか、あまりにも曖昧になってしまい、確かな記憶が思い出せない。スポット自体が夢や空想のような現象で、眠りから覚めたような、まだ眠っているかのような錯覚を覚える。次元の狭間、タイムトリップ、相対性理論、朝から単語だけ浮かんでは消えていく。そんなことばかり考えていると完全にヤバい奴だと自己嫌悪に陥る。それでも学校に行く準備をして、友人達と合流するといつもの日常が戻って来た。一日づつ寒くなるのを感じると残された高校生活、時間は止まることなく進んでいるだと少し寂しくなる。それぞれが違う道を進み、数年後には同窓会なんかをやって、結婚式に呼ばれたり、子供が出来たりと明るい将来を夢見ていた。俺達誰も彼女が居ないので正に夢物語だが、そんな未来に目を輝かせ、卒業してもずっと親友なんだろうと確信していた。


教室に入ると妙な噂が聞こえてきた。夜の学校に幽霊が出るというのだ。とっくに夏は過ぎ怪談噺の時期でもないし、学校の七不思議という年齢でもない。そんな子供じみた噂はすぐになくなるだろうと聞き流している者も多くいたと思う。

しかし、卒業までの最後のイベントとして真相を確かめるという奴等もいた。受験や将来への不安からか、皆のテンションは現実離れしたイベントに盛り上がっていった。

ゴーストバスター作戦決行。参加自由。自己責任で。などの謳い文句が乱れ飛んだ。はたして人数など集まるのだろうか。現実問題夜間に学校を開放するはずがない。そう俯瞰していた。

事態は思わぬ形となって現実となった。卒業生のイベントとして絆を深めるため、3年C組のクラスが学校に一泊することを学校側が認めたのだった。

学校が認めたイベントとなれば、C組のみならず我も我もと一気に参加希望者が増え、3年生の約半分近くが集まり、学校側は急遽保護者の許可を取ることを条件として参加許可を出したのだ。学校側が認めることも、参加者がこれだけ大多数になることも、異常という他にない。表向きは思い出作りのイベントだが、事の発端は幽霊騒動による肝試しなのだから。


学校内にはゴーストバスターならぬ、思い出作りの”一夜の集い”のポスターまで貼りだされることとなった。連日職員室は参加希望者で慌ただしく申請書を処理していた。浮足立った雰囲気の中、ポスターを貼っている日向を見つけた。


「なんでお前がポスター貼ってんの?」


「私たちが作った企画だから、責任持たなくちゃね。」


そうこの企画はC組。つまり日向のクラスが発案したのだ。しかも日向が率先してこのイベントに参加するというのは、嫌な胸騒ぎしか起きない。思い出作りなど毛頭考えてもいないだろう。


「何を考えてる?まさか幽霊を見たいなんて言わないよな。」


「あら?私は単に高校生活最後の思い出作りをしたいだけよ。」


「誰とも親しく付き合わない影の薄いお前が?」


その一言を言ったあと、軽薄な事を言ってしまったと後悔した。少し手を止め振り返りもしない。きっと怒っている事だろう。


「す、すまん。悪気はなかったんだ。」


「いえ、よくわかっているわ。それも私の体質に起因しているしね。それよりもよかったら君も参加したらどう?色々な思い出ができると思うわよ。」


強がっているのだろうか。少し常軌を逸しているとはいえ、同い年の女の子だ。傷つかないわけがない。彼女に振り回されたことで八つ当たりしていた。


「考えておくよ。」


申し訳なくなり、深く考えもしないでその場を去ってしまった。決して思い出作りや肝試しを楽しむような彼女ではない。この企画は何を狙ったものなのか、そして色々な思い出とは何の事を指しているのか。この時聞いておくべきだった。

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