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そして僕は旅に出た。  作者: 高天原
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目覚め 微睡3

答えはいつも一つなんだろう。でもその答えを導き出すまでに何通りあってもいいと思う。そこからたどり着いた答えは自分という人間を形成していく。だから何度間違えても、いくら時間を掛けても、答えを出すという事が自分の存在を証明することになるのだ。


水曜日。追加講習が終わるのを待ちヒロを迎えに教室へ行くと、ちょうど講習も終わり慌ただしく帰り支度をしているところだった。


「ヒロ、今日もパン買って帰るのか?」


「おう、それはもう日課だからな。」


「今日はもう一人連れていきたいヤツがいるんだけど、いいか?」


「ん?誰?」


「どうも。一緒にいいかな。」


「柳田さんも?」


「ちょっと気になってたんだよね。占いの方だけど。」


「ヒロなら店長と仲いいし、紹介してやってくれよ。」


「いいけど。柳田さんが占いってイメージと違ったな。」


「興味あるだけよ。そんな真剣には考えてないよ。」


「まあ俺も店長と話せるし、いいか。」


もちろん柳田も占いに興味があるわけではない。今日が森下に会えるチャンスだからなのだが、元々嘘をつくのが苦手なのだろう、いきなり怪しまれるような余計な嘘は勘弁してほしい。


「つーか早くしないと店閉まっちまう。急ぐか。」


急いで教科書をカバンに詰め込むと、急かされるように教室を後にした。学校を一歩出ると風に巻き上げられた雪が地吹雪となって襲ってきた。身体を硬くしパン屋へと向かった。

(ルシード)の文字が照明に照らされ暖かな光で迎えてくれる。

外の世界とは全く別の世界のように、いい香りとともに暖かい店内は勝手に体の力を抜いてくれる。さすがにこの天候によりお客さんはもちろん、従業員も早めに帰したようで店長しかいない様子であった。


「いらっしゃい。って何もこんな日に来なくてもいいのに。」


「いやいや、ここに来るのは日課ですから。」


店長の笑顔は心も温めてくれる。日向が言うようにこの人を見て犯人として疑っていた自分が恥ずかしくなる。同じように柳田も俺に目を向け、この人が犯人という事は絶対にないという確信を持っていた。そんなやりとりを知らないヒロは、


「槍が降ろうがカエルが降ろうが毎日来ますから。」


「槍も嫌だけどカエルはもっと嫌ね。その時は店を閉めるわよ。」


想像しながら嫌そうな顔をする店長に、柳田も声を上げて笑い出した。


「そうそうこの子柳田さんて言うんだけど、店長の占いに興味があるんだって。」


「初めまして、柳田って言います。実は占いには興味ありません。今日はここに来ている森下の事で来ました。」


直球勝負である。確かに嘘や探り合いは苦手な方とは思っていたが、挨拶と同時に核心をつくとは思ってもいなかった。


「ああ、森下さんのお友達ね。どういう関係の?」


「森下は部活の後輩です。その森下が今部活どころか学校にも来てないと聞きました。それなのにこのお店には来ていると、どういうことなのでしょうか?」


店長は柳田の真っ直ぐな質問に少し考え、ヒロは何が起きているのか俺と柳田を交互に見ていた。するとこの天候の中お客さんが入ってきた。


「いらっしゃいませ。」


店長は反射的に入り口に顔を向けると、そこには日向巴の姿があった。店長はこの悪天候の中、来店してくるお客さんに少し戸惑いながらも、すぐさま接客の笑顔に切り替えた。しかし日向は商品どころか俺達にも目を向けず、殺意にも似た眼差しを向け店長に近づいてきた。

光あふれる暖かな空間だった店内が、その瞬間時間を止めたように、日向だけが動いているような錯覚を覚えた。


「お前どうしたんだよ?」


俺はその光景に恐ろしさを感じたが、日向の様子に止めなければという意識が働いた。

日向はまるで今俺達の存在に初めて気付いたかのように、足を止め俺を確認すると、俯き少し息を吐き軽く目を閉じた。再び目を開いた時には先ほどの眼の光は消え、いつものというより、本来の日向に戻っていた。


「ありがとう。危うく自分を見失う所だった。」


そう言うと再び店長へ視線を向けゆっくりとお辞儀をすると話を切り出した。


「突然すみません。もう話は聞かれていると思いますが、森下さんの事で来ました。あなたは彼女を救ってくれると信じていましたが、どうやら既にあちら側の世界に入ってしまったようです。もう手段は選べません。何としても連れ戻すしかないんです。」


店長は既に日向を知っている様子で、話を聞きまた黙り込んでしまった。先の見えない話にたまらず間に入って聞いてみた。


「あちら側って?連れ戻すってそんな事できるのか?」


すると日向は店長の目を見据えたまま


「私一人では無理。この人が連れて行ってくれないと。」


「森下さんの夢に入ることは可能だけど、でもそこがどんなところかもわからない。他人の夢に強制的に入り込むのだから、行けたとしても彼女に会えるかもわからないし、取り込まれて帰ってこれるかもわからない。そんなところに連れていけると思う?」


「さっきも言った通りもう手段は選べないの。あなたは連れて行くだけでいい。私が連れ戻すから。」


「そんな事させられるわけないじゃない。」


「可能性を否定して、ただ後悔を待つなんて私にはできない。やってみてダメなら納得もする。必死にあがいてそれでダメならね。」


一歩も譲らない日向に店長も平行線をたどったまましばらく時間だけが過ぎていった。俺達は何が正しいのか、何をすべきなのかもわからず、ただ二人の結論を待っていた。するとヒロはどういう手段をもって何をするのか。そしてどういう結末が望ましいのかを順を追って説明するよう求めた。日向は時間がもったいないというように外を向いてしまったが、店長が店を閉めてから説明すると言い、俺達を店内に残し閉店の準備に取り掛かった。その隙に日向を問いただした。


「先日の話と違うじゃないかよ。」


「状況が変わったのよ。現実と夢の均衡が崩れてしまったの。彼女と店長との間に溝が出来てしまった事によりね。」


「溝が出来た?どういうことだ?」


「誰にも内緒よ。彼女は店長に告白したのよ。それでダメになったってこと。それくらい想像つくでしょ?」


「はぁ?女同士でか?」


「そういう事もあるってことぐらいは理解できる?」


「それくらいは理解できるけど、この後どうするつっもりなんだ?」


「彼女の夢の中に連れて行ってもらう。そこで彼女を説得し連れ戻す。」


「そんなことできるか?」


「この店長は睡眠のスペシャリストなのよ。夢の同調も何度かしているし、自分自身彼女の夢に入ったこともあるそうよ。」


「そうじゃなくて連れ戻すことだよ。要は自暴自棄になっているところに入って行って、説得なんてできるのかってことだよ。」


「そうね。相手のフィールドの中ってのは分が悪いわね。」




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