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そして僕は旅に出た。  作者: 高天原
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風のたどり着く場所 噂4

少しづつですが投稿していきます。

宜しくお願いいたします。

日向が言っていた通り、あの事件以降しばらくは何事もなく平穏な日常が過ぎていった。

村上先生は疲労からくる心疾患との事で、退院はしたものの自宅療養になり、歴史の授業は代理の先生が受け持つこととなった。

そんなある日またE組の男子とC組の女子の話題が降って湧いてきた。

二人とも学校を休んでいるとの事だった。ただ渦中の二人が同時に学校に来ていないというだけで、思春期の妄想は留まることを知らずに、駆落ちしたとか妊娠して産婦人科にいるなど、根も葉もない話が広がっていた。

ただ二人が付き合っていないことを知っている者にとっては、偶然休みが重なっただけという認識でしかなかった。それでも何度もその話題を耳にすると、どこか異様に感じてくる。一人一人はただの雑談程度なのだが、その都度内容がエスカレートしてくるのを感じる。他人事であればより面白く、より真実味を持たせて脚色していくのだろうが、この話には悪意が感じられる。この事態に異様な危機感を感じた俺達は、ヒロに直接本人に確認するよう聞いてみた。


「まあ確かに異常だよな。E組の奴は確認できるけど、C組の女子はどうする?」


そこでC組の女子と繋がりがありそうなやつを見回すが、C組に友人はいるが誰一人女子と仲の良い奴はいなかった。全員無言で男ばかりでつるんできた悲しい現実から少し目を背けた。


「とりあえずE組の奴はヒロとカズに任せるとして、C組は少しあたってみるよ。」


よりによってC組、日向がいるクラスだ。今はできれば関わりたくない。気を重くしながらも、この事件の解決に最も近い存在であることも薄々感じてはいる。


放課後になり、今日はシバケンの家には寄らずに俺達は確認のため別行動をとることにした。

今日は図書委員の仕事がある為、日向は図書室にいるとの事だったが、以前図書委員の会議で居心地の悪さは嫌というほど経験し、その後の役割分担もサボっていたため、図書室には入りずらく、結局終わるのを玄関で持つことにした。

待っている間、日向と初めて会った日を思い返していた。あの時も玄関で日向を待ち伏せしてスポットという不思議な現象を経験した。その後時間を行き来しあの事件の真相を知ることが出来た。そしてそれは日向の行動によって誰一人も被害者が出ないという結果に終わった。思い返してみても、未知の現象に立ち向かう無謀さ、見た目とは正反対の傍若無人さに身震いする。ふと最近はスポットに遭遇する事が少なくなったことに気付いた。いや逆になぜあの時あんなにスポットがあったのか不思議になった。

そうこうしていると図書委員の仕事を終え数名が玄関に降りてきた。その一番後ろから日向が降りてきた。図書委員に見つかると厄介な事になるので、身を隠し後を追って行こうと考えたが、日向は忘れ物をしたと再び階段を戻り始めた。他の生徒達は先に帰って行ったので、階段を昇り始めると踊り場を曲がったところに日向は座っていた。


「ぬぉ!なんでこんなところにいるんだよ。」


「そろそろ来る頃かなと、待っていたんだけど?」


「お前超能力でもあるのか?」


「君はやっぱり馬鹿なの?」


「まあ今更超能力の一つや二つあっても驚かねーけどな。」


精一杯の皮肉のつもりだったが、おもむろに目を閉じて両手をかざしてきた。


「マジで!?」


「なんてそんなのあるわけないでしょ。」


「焦らせんじゃねーよ!」


溜息をつき立ち上がると、俺の横を通り過ぎ階段を降りていった。


「ちょっ、待てよ。」


「どうせ学校で話す話じゃないんでしょ。歩きながら話しましょ。」


確かにそうだ、こいつといると調子が狂う。完全に主導権を持っていかれている。

学校を出るまでは離れて歩いたが、徐々に歩幅を合わて追いついた。


「君はどこまでたどり着いた?」


「今回の事件はE組とC組の二人だろ?」


「へぇー少しは考えたんだね。でも残念。もう少し。」


「でもあの二人、一緒に学校休んでるって。」


「二人とも入院してるか、もしかするともう亡くなっているかもね。」


「そんな。自殺でもしたのか?」


「呪いよ。しかもかなり厄介なね。」


「誰がそんな事?恨みでもかってたのか?」


「だから厄介なのよ。誰も恨んでないし、でも誰もが呪っている。」


「はぁ?何言ってるか全然わかんねーよ。恨んでもいないのに呪うって。」


「やっている事は簡単な事なんだけど、簡単なだけに難しいんだよね。」


「だからわかんねーよ。」


少し冷ややかな視線を送りながら、ため息交じりに話し始めた。


「今回の事件はあの夜から始まったって言ったよね。最初はどこにでもある噂話だった。あの子とこの子がみたいな単なる恋話。でも徐々にエスカレートしていった。それでも決定的にはならなかった。そこで標的を先生に変えた。先生の噂話は味付けしやすかったから。悪意というエッセンスは一度口から出ると、どんどんその味の虜になってしまう。でも先生の場合は皆の前で倒れたことにより、皆に罪悪感が生まれてしまって、それ以上の悪意のある噂にはならなかった。それでも言葉の持つ力を証明してしまった。そこで本来の目的である、あの二人に再度照準を合せ始める。後は村上先生の時と同じ、皆がその噂を話してくれれば、少しの悪意のエッセンスを混ぜればそれだけで成功するんですもの。こうなってしまえばお手上げね。」


「お手上げって。でもその話が本当なら、悪意を入れた犯人がいるってことだろ?そいつを見つければ。」


言ってから気付いた。犯人を見つけても噂話をどうやって止めるのか。実はあの噂話は嘘ですなんて、嘘だから噂話として広がるのだから。すでに犯人の手を離れ独り歩きしている呪い。日向が言う通りお手上げの状態だ。


「だからって犯人を放っておくのかよ。誰だよそいつ、ぶん殴ってやる。」


振り返った日向の眼には明らかな敵意を感じた。


「もちろんそのままになんてさせない。見つけて同等の報いをプレゼントしてあげなきゃ。」


「何か方法があるのか?」


「それでもあの二人を助けることはもうできないところまで来ているわ。」


「クソ!大体呪いってなんだよ。殺す呪いがあるなら助ける呪いも・・・」


瞬間お互いに目を見合わせ日向は頷いた。目には目を歯には歯を、嘘には真実を。


「わたしにはできないけど君になら、出来る限りの人に真実を話して広めればあるいは・・・」


「間に合うか?」


「わからない。でも君はやるんでしょ?」


無言のまま頷いた。



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