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そして僕は旅に出た。  作者: 高天原
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風のたどり着く場所3

少しづつですが何とか掲載を続けれるように頑張ります。

宜しくお願いいたします。

そんな中異変は起きた。

背後にある黒板に誰が書いたわけでもなく、文字が浮かび上がってきた。

(死ね。変態。ロリコン。犯罪者。・・・・・)

そこで生徒の悲鳴が起きた。振り向いた先生はこの異常事態にただ愕然と黒板を見ていた。

すると浮かび上がった文字は黒板から抜け出し、渦を巻きながら先生に向かって吸い込まれるように消えていった。全ての文字が先生に吸収されると同時に、先生は意識を失い倒れてしまった。

これが今回の事件の概要だった。

この話を聞いたところであまりにもオカルトじみた内容に、学校側も説明のしようがなく、そうかといってそのまま公表できる内容でもない。表向きの理由を探すだけで精一杯だったのが伺える。

ふとクラスの生徒に紛れて、教室を眺めている日向の姿に気が付いた。

その眼には恐怖や困惑といった負の感情は見受けられない。むしろ心ここにあらずといったように、ぼんやりとしているようにさえ見える。明らかに周りの雰囲気と違うのに、まるでクラスの一員のように溶け込んでいる。

そしてスッと振り返ると音もなくその集団から抜け出した。俯いた顔には感情が読み取れなかったが、口元が少し笑っているように見えた。

最近は普通の女子高生としてしか見えていなかったが、これが日向という女性なのだ。むしろこの異常事態が起きている方が、彼女本来の姿を表現するのに合っているのかもしれない。

後を追って近づくと、まるでついて来ているのが当たり前のように振り向きもせず、話しかけてきた。


「高校生活も残りわずかって時に、色々と楽しい思い出作りをしてくれるじゃない。」


「楽しいって、お前なぁ・・・」


するとくるりと振り返り、先程までの静かな気配とは裏腹に、いかにも妖しげに光る眼を輝かせ、


「君はこの結末を知りたくはないの?」


「結末って、こんな異常事態に何か関連性があるのか?」


「もう何日も前から前兆はあったは。そうあの夜から始まっていたんだもの。」


「あの夜?まさかまた13年前のあの子が関係しているのか?」


「いいえ、あの子はあの時既に先生に救われたわ。それとは別にあの夜から新たに始まったと言ったほうが正解ね。」


あの事件が続いているのではなく、あの事件の終わりと同時にまた別の事件が動き出していたのだという。それが今回の騒動に繋がった。全く理解できない。


「まあ今は先生も疲れている事でしょうから、ちょうど休みが取れて良かったんじゃないかな?しばらくはまだ何も起きないでしょうから。」


何が良かったのか、これから何が起きるのか全然理解できない。

訝しげな表情で話を聞いていたが、そのことに気にする事もなく背を向けると、さっさと帰ってしまった。

呆気にとられまともな思考が出来なくなっていたところに、ヒロがやって来た。


「どこ行ってた?シバケン家に行こうぜ。」


「お、おう。」


「ん?彼女と帰ろうとしてた?邪魔した?」


「何言ってんだよ。行くぞ。」


シバケンの家に着くと既に皆集まっていて、ひとしきり今日の事件で盛り上がっていた。

皆聞いた話はほぼ同じで、勝手に黒板に文字が浮かび上がるなど、超能力やらポルターガイストなどと騒いでいた。そんな中、日向との会話を思い返していた。

あの夜が始まりで、前兆があった。確かに先生はあの事件をきっかけに変わったのは皆が認めている。あの事件とは全く別に何かが動き出したのであれば、先生以外に変わったことがあるはず。それが今回の事件の謎を解くカギとなるはずだ。


「なあ、あのイベントから村上以外に何か変わった事ってあったか?」


突然の質問にヒロを含め皆が不思議そうに振り返った。


「いや今回の事件て、村上の吊るし上げみたいなのからはじまったじゃんか。でも本人はあの日以来優しくなったっていうか何か良くなったし、むしろ周りがおかしくなったような感じがして、何か原因があるんじゃないかなってね。」


すると一同が考え込む中ヒロがいらない一言を言ってしまう。


「んー、お前に彼女が出来た。」


全員そうだ!と思い出したように、何時・どこで・どうやって・どこまでいった?と話が一気に方向転換してしまい、今回の事件より重大な事となってしまった。


「だから!彼女じゃねーよ!毎日お前等と一緒にいるじゃねーかよ。」


「帰ってから何してるか知らねーし。毎日電話してんじゃねーの?」


今回の事件を真剣に考えていた自分が馬鹿らしくなってくる。


「お前でこの騒ぎだから、あのE組の奴だっけ?毎日大変なんだろうな。」


ふと漏らしたヒロの一言に、霧が晴れていくような感覚に襲われた。完全に話が独り歩きして、付き合っているものと思い込んでいた。でも誰が確かめたわけでもないし、実際に二人でいるところを見たこともない。いつも二人でいると聞かされ、そうなんだと想像していただけだった。


「あの二人は本当に付き合ってるのか?」


するとヒロが呆れたように笑いながら答えた。


「お前と一緒だよ。あいつとは中学から一緒で、よく行きも帰りも一緒の電車に乗るけど、全然彼女なんていねーよ。ただの噂話よ。カズもこの前一緒に話したもんな。」


いつも一緒に電車で通っているカズも本人から話を聞いていた。

得てして噂話というのは独り歩きしてしまうものなんだろう。


「ただ本人はスゲー迷惑してたけどな。」


ヒロは噂に振り回されるより、直接本人に聞いて確かめた方が確実だろうと、男気溢れることを言っていたが、自分に彼女が出来ないのになんであいつがとぼやいていたのをカズが証言した。どうやらどうやって付き合ったのか聞くつもりだったようだ。

少なくともあの夜から変わったことであることは確かだが、ただあの二人が噂されているからと言って、今回の事件とどう繋がっているのかまだ謎のままだった。

そうこの時点であの事件とこの二人の接点を見いだせていれば、この結末を変えられていたのかもしれない。

シバケンの家を出ると外はもう暗くなっていた。

冬の足音がもうすぐ聞こえてくる。空も道路も一面真っ白の景色が今年もやって来る。

高校生活最後の冬が間もなくやって来る。

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