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そして僕は旅に出た。  作者: 高天原
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風のたどり着く場所

いよいよ2話目スタートします。よろしくお願いします。

岩田の山の風穴は此の地と彼の地をつなぐ道

旅立つ悲しい声で泣く

岩田の山の風穴は此の地と彼の地をつなぐ道

春の息吹に唄いだす

岩田の山の風穴は此の地と彼の地をつなぐ道

不浄も穢れもみな集め清き恵をもたらさん


------------------


山もすっかり秋の装い。街も日々秋の気配が濃くなり歩道が落ち葉で敷き詰められる頃。

いつの間にか定着したハロウィーンカラーが店頭を飾り、さびれた街にも華やかさが戻ってきた。

あの出来事から二週間が経ち、ちょっとした騒動はあったものの、楽しかった思い出として皆の心の片隅に記憶され、また平凡な毎日が戻ってきていた。

登校の学生の列が白い息を吐き、その息が朝の光に照らされ白く輝き、風に吹かれて消えていく。

特に誇れる産業も名所もない片田舎では、些細な噂でも恰好の娯楽となる。

あれからE組の男子とC組の女子の仲が良くなったとか、あの日告白して付き合ったとか、憶測の中で噂話だけが独り歩きしていく。

そんな中、登校途中の日向を見つけた。周囲の雑踏から少し離れマフラーに顔をうずめ小さく歩く姿が、雑音に耳をふさいでいるようにも見えた。

あれ以来特に変わった現象もなく、平穏な毎日を過ごしていると、彼女も普通の女子高生に見えてくる。


「日向オッス。」


「・・・・・。」


「返事もなしかよ。」


「こういうことが変な噂を作り出すのね。」


不機嫌そうに一瞥され、またマフラーに顔をうずめた。

確かに以前までは名前すら知らなかった同学年の女子。特別な体験をしたことで、仲間のような感覚になっていたのは間違いない。かといって気付いても無視はないだろう。


「お前って変わってるよな。」


「何を基準としてるのかわからないわ。」


「普通あんな事が起きたら、仲間意識が生まれるだろう。」


「だから普通って何なの?一度不思議な体験したらもう信用できるの?」


面倒臭い女だ。これは確実に友達が少ないだろう。


「何?朝から絡まれてるの?」


後ろから駆け寄り声を掛けてきたのは、確かC組の浅田さんだ。

日向とは小学校からの付き合いで本人は腐れ縁と言っているが、どうやらこの日向の性格を一番理解しているようだ。


「巴は朝は超不機嫌だから。典型的な低血圧人間。私も朝はなるべく話しかけないようにしてるくらいだもん。まあ巴は昼も夜も機嫌のいい日はあまりないけどね。」


「どうでもいいけど、私の周りで騒がないでくれる。」


「ほらね。」


先を歩き出した日向をよそに浅田さんはよく喋った。昨日のテレビのことや新しくできたパン屋、映画の話やスマホの話。よくもまあ取り留めもなく色んな話がでてくる。これで話しかけないようにしているのなら、普段はどれだけ話すのだろうと、心の中でツッコミながら、一歩後ろからそのやりとりを見ていると、それでもやはり普通の女子高生なのだなと改めて思い直した。


教室に着くとその光景を仲間たちに見られていたようで、さっそく尋問が始まった。


「最近朝来ないと思ったら、いつの間に彼女なんか作っちゃてるわけ?」


「はあ?何だよそれ。」


「またまた水臭い。いいんだよ?お前の幸せは俺達の幸せなんだから。でも内緒はないよな?」


「あのなー。そんなわけないだろ。毎日お前等と一緒にいるだろう。」


「どーせあの日俺達の知らないところで何かあったんだろう?E組のあいつみたいにうまい事やっちゃってんじゃないの?」


「E組のって?あいつら本当にくっついちゃったの?」


「知らねーのかよ。あれから毎日公園で日が暮れるまで一緒にいるってよ。登下校も一緒って言ってたぞ。そんなことよりお前だよ。いつの間にくっついた?」


「だから、違うって。今朝たまたま一緒に来ただけだって。」


「で?相手は誰?一年?二年?」


その質問に一瞬目が点になった。そうだった俺も初めて会ったとき、日向の事を全く知らなかった。同じ学校に三年もいるのに、名前どころか顔すら記憶になかった。以前彼女に影の薄い存在と暴言を吐いた時も、自分の体質に起因していると言っていた。やはりみんなの中にも日向は記憶されていなかったのだ。

そんな時チャイムが朝のホームルームの時間を知らせた。やっと尋問から解放されいつもと変わらぬ日常が戻ってきた。

今日の一時限目は歴史。あれ以来村上先生も憑き物が落ちたように、以前のような近寄りがたい雰囲気から、時折温厚な表情を見せるようになり。無音の張り詰めた授業だったのが、少しづつではあるが、笑いのある授業へと変わっていた。生徒も卒業間近になり好かれようとしているのではないかと、先生の変化を感じていた。

しかし今日の村上先生は最近の温厚な先生ではなく、授業中も心ここにあらずといったように、どこか弱々しさを感じた。終了のチャイムが鳴り、ため息をつき教室を後にした。


「今日の村上おかしくなかった?」


「年齢も年齢だからボケてきたか?」


などと好き放題言っていたが、誰かが職員室で村上が他の先生から責められているのを見たという噂が流れた。最近耳にする職場内イジメだと一気に話が膨れ上がってしまった。

何度もそういう話を聞いてしまうと、不思議なものでその場面を想像してしまい、あたかも実際にあったことのように受け入れてしまう。これがもしあの事件が原因で他の先生から責められているのであれば、事件の発端は先生であったが、被害者とされていた生徒は自ら望んだ結末を迎えることができ、あの事件以来十三年間一番苦しんだのは先生だった。そしてあの事件には本当の意味では被害者はいなかった。事件の真実を知るものとして、あの一件以来村上先生に親しみを感じていたのだった。

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