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背景モブでいさせて下さい!  作者: 白羽分
1/1

始まり

 俺は、普通の男子高校生だった。運動神経、普通。成績、普通。容姿、平均的。友達付き合い、普通。家庭環境、恐らく普通。どこにでもいるごく平凡な、別段目立った特徴のない高校生だった。

 ただ一つだけ特徴を挙げるのなら、個性があるとすれば、それは俺が「乙女ゲー好き」ということだろうか。俺は、乙女ゲー特有の「主人公が困難に立ち向かい、そして仲間(攻略対象)と愛を育む」というシナリオが好きなのだ。別に、「主人公を通して攻略対象に愛されたい」という訳ではないのだが、昔、趣味バレした際に何を勘違いしたのか「二次元の男が好きなんだーへー」などと言われたりしたことがあった。断じてそうではないのだ。ともかく、その一件以来俺は、努めて自分を普通の枠からはみ出させないよう、この趣味のことを隠していた。

 だが、それでもついこの趣味を誰かと共有し語り合いたいと思ってしまうことだってある。

 先日発売された乙女ゲーム、「青薔薇と白猫姫」。このゲームは中世ヨーロッパ風の世界観で、貴族や王族の子息や令嬢達が通う学園モノだった。ありふれた設定ではあったが、俺はこのゲームの魅力に取り憑かれていた。主人公と攻略対象達が最初は犬猿の仲だったのに、降り掛かる困難を共に解決していくことで打ち解けていくこと。そして、それぞれの攻略対象がどんな奇跡でも起こせるという「青薔薇」を求めている理由。そういった部分が俺は気に入っていた。この魅力を誰かと語り合いたい___そう望むようになるのに時間はかからなかった。

 だが、その望みが叶うことはなかった。俺の運が悪かっただけかもしれないが、このゲームをプレイしている人が、俺の周りに殆んどいなかったのである。イベント等へ行ってやっと見つけた同志達には「男なのに?」とでも言いたげな顔を揃いも揃ってされ、語り合うことなどとてもできなかった。

 そしてその日の帰り道。自分で思っている以上に傷ついていたのだろうか。いつもなら恐らく避けれたはずだろうに、歩道を勢いよく走っていた自転車に撥ねられ、ガードレールに頭を強く打ち付けてしまった。霞む視界で最後に見たものは、止めどなく溢れ続ける俺の血だったので、恐らく俺は死ぬのだろう。ああ。せめて誰かと趣味を語り合ってみたかった···!

 そんなことを思いながら、俺の意識は沈んでいった。

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