表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄金の女神  作者: kan
5/7

5

 ユイの一日は、レイを起こすことから始まる。そして、毎日レイを抱きしめ愛していると伝える。これは、亡くなった母親がユイに毎日やっていたことだ。

 レイを生んで母はすぐに息を引き取ったため、レイは母の愛を知らない。それどころが、生まれてすぐ父親とも引き離されたため父親の愛も知らない。

 しかし、ユイはレイがどれだけ両親に愛されて生まれてきたか知っている。レイが母の腹の中にいる時、両親は毎日手をあてては話しかけ、生まれてくる日を心待ちにしていた。そして、それはユイも一緒だった。

 だが、生まれてきたのは黄金の王であった。黄金の王である弟を父親は抱くことができない、抱けば母のように一晩で息を引き取るだろう。唯一、レイに触れることができる自分が両親の分まで愛情を注ぐと、ユイは母が逝ったあの夜に誓っていた。


「レイ、おはよう。今日も愛していますよ。」

 まだ、眠そうにしているユイを抱き上げ、毎日の挨拶を伝える。

 今日の弟はおねむを決め込むらしい。兄に抱き上げられてもなお、わざとらしく胸の中で寝息を立てている。そんなときは、ユイも無理やり起こさず、しばらく弟を胸に抱いたままじっとしている。

 ユイはとことんレイに甘い。ユイは年の離れた実弟が可愛くて仕方なく、叱るといった残念な立ち回りは、ほぼフカに丸投げしていた。

「レイ、朝ごはんを食べましょう。今日はレイの好きなクルミパンですよ」

 そういって、レイに声をかけると現金な弟はすぐに目を開ける。もともと寝たふりをしていることなどユイにはお見通しであり、ときおり寝たふりをして甘えてくる弟が可愛いため、たまにはいいかと黙認している。きっと悪い夢でも見たのだろう。


「兄さま、おはよう。僕、今日はレーズンパンがいいな」

 我儘で我が強い弟の性格は、誰に似たのだろうとユイは時折不思議に思う。

 ‐母様も父様も、お優しくて穏やかな人だと思うんだけどな

「レイ、我儘はいけないよ。フカ様がせっかくレイのために作ったのに、きっと拗ねちゃう。」

 大の大人のフカが、いちいち子供の我儘にいちいち拗ねることはない。レイの我儘を引っ込ませるための常套句だ。レイはユイが砕けた口調を使ったり、レイを呼び捨てにすることが嬉しく、すぐに上機嫌になる。朝に弱いレイの機嫌をとるため、この時だけは普通の兄弟のようにフランクに接するようになった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ