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黄金の女神  作者: kan
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4

 レイの勉強が終わり、書斎からユイとレイが出ていくとフカは長椅子に横たわった。今もユイやレイの前ではフカは毅然とした態度でいるが、体力は弱っており長く霊力を使うとひどく疲れるようになっていた。

 フカは今年二十五に、ユイは十五になる。里では十五で成人とされ、ユイもあと2か月で成人となり、白銀の神子の役割を引き継ぐ。白銀の神子は成人してから次の神子が成人するまでの間地位に就き、退いたら五年と持たず息を引き取るのだ。

 フカの寿命はもう長くない。レイが生まれるまで、里の周りの瘴気は濃かった。そして、その濃い瘴気は、浄化を行うフカの霊力の多くを奪った、フカは歴代の白銀の神子よりも早く息を引き取るだろう。最近は床に臥せることが多くなっていた。

 ‐せめてレイが十になるまで生きていられれば

 フカは不真面目な弟分の将来を案じた。いや、それ以上にレイやユイと過ごせる穏やかな時間を惜しんでいたのだった。

 レイが生まれてからの5年間はフカにとって掛け替えのないものだ。それまでは、ただただ里を守り女神に祈り捧げるだけの単調な毎日であったが、それが当然のことと思っていた。

 しかし、何かと問題を起こす幼子は、フカの色褪せた毎日を絵の具で乱雑に塗りたくるように賑やかにしたのだ、この世に生を受けた喜びを感じさせるほどに。


 ユイに色々な感情があることをフカが知ったのも、レイが生まれてからだ。もともとユイは大人しく感情を表に出す子供ではなかった。そもそも白銀の神子は、不思議なことにそういった性格をしている。フカも同様に感情を表に出すようなことはく、そもそも感情の起伏がないに等しいものであった。


 ‐自分の人生がたった30年で終わってしまうことが、とても悔しい。

 これからレイやユイはどのような大人になるのだろう。

 レイの作る里は、どんなものだろう。きっと賑やかなのだろうな。

 レイの子供を見てみたい。

 フカはたった五年でできた自我に戸惑っていた。それでも、時間は待ってはくれない。

「無念だな…」

 一人になった書斎の中にフカの独り言は悲しく消えた。


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