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ユイは実弟を探し、神殿内をうろついていた。弟のレイを見つけるのは難しい、もともと賢いレイは日を追うごとに身を隠すすべがうまくなっている。中庭に差し掛かった時、中央にある木が風もないのに葉を揺らしていることに気が付いた。木の下まで行き、見上げると目的の人物は木の幹の上でくつろいでいる。
黄金色の髪が光に当たってキラキラと光っている。陶器のように滑らかで透き通るような肌も、はっきりとした目鼻立ちも母譲りだ。しかし黄金の髪と瞳だけは、父親でも母親譲りではない。
「こんなところにおられたのですか?聖者様。木に登られては、またフカ様に叱られますよ。」
声をかけたレイの表情は、逆光で読み取れない。だが、きっと悪戯がばれたことがうれしいと笑みを浮かべているのだろう。
「高いところに登ったら、外が見えるんじゃないかと思って
そうだ、兄さま。肩車をしてください」
レイは、悪びれる様子もなく明るい声色で兄のユイにねだる。
「だめですよ、落ちて首の骨でも折ったら大変です。
それに、フカ様が探しておいででした。お勉強をさぼってはいけませんよ。」
はあい、と間の抜けた返事をしたレイは木の幹からユイに向って飛び降り、慌ててユイは弟を受け止めた。
「こら!危ないから、飛び降りるなって何度も言っているじゃないか!!」
「だって、兄さまは抱き留めてくれるじゃない。
こっちのほうが早いもん」
普段ユイが黄金の王であるレイに対しては丁寧な言葉を使い、慣例で聖者と呼ぶ。しかし、ユイが咄嗟に怒るときは焦って口調が崩れるのだ。それを聞きたいから、ユイはわざとユイが困ることをする。
「兄さま、一緒にフカ様に叱られてくれますか?」
レイは何の非もないが一緒に罰を受けろとねだる。しかし、ユイも可愛い弟に甘えられることは嫌ではない。
しょうがないですねと言いながら、どうしようもない愛しにを感じ頬が緩むのであった。