◆宇宙船AI=あかね
◆宇宙船AI=あかね
次の日、一条マリエは約束通り、オンボロ宇宙船を本社ビルの屋上駐機場に着陸させた。
へぇ・・ 飛べたんだコイツ。
当たり前です。 あたしがメンテナンスしてるんですから火星にだって行けますよ。
なっ・・・ おまえ、なんでもう行先を知ってるんだ?
そう聞いた後の一条マリエの固まった表情を、俺は一生忘れないだろう。
昨日は船内を見ていなかったので、屋上に来たついでに中に入ってみる。
この宇宙船は、大きく操舵室、居住区、貨物室、緊急用小型艇格納庫の四つに分かれていた。
船内は外観ほどボロくはなく、清掃ロボットもきちんと機能しているようだった。
製造当初は太陽系外まで航行可能という触れ込みだったらしく、居住区の中にはジムやプールやシアタールームなども完備されている。
これならば片道1年の旅も退屈しないで済むだろう。
最期に一条の案内で操舵室へ向かう。
俺は火星に向けて出発するにあたり、ぜひ確認しておきたいことがあったのだ。
そう、オートパイロット機能とその他船内の全制御を司るAIシステムのチェックだ。
俺たちは火星への往復で、このAIに命を預けなければならない。
例え海賊に襲われなくても、宇宙には危険がたくさんある。
些細な事で乗員が命を落とした事例は山ほどあるのだ。
一条君、AIとコンタクトできるか?
はい。 それでは、こちらで生体認証登録とパスワードの設定をお願いします。
一条がゆび指した端末で、両目の網膜と虹彩認証のスキャン登録を行い、続けてパスワードを設定する。
桃島さん、パスワードは誕生日とかダメですからね。
わーってるって。 ←桃島は分かってると言っている。
登録が終わってキャプテンシートに腰を掛ける。 自分でちょっとカッコイイと思う。
AIシステムが搭載されたことで、免許がなくても民間の中型船までは誰でも船長になれる。
それゆえ、責任者としてAIシステムを入念に確認しておきたい。
あとからプロジェクトメンバーに、うだうだ非難されたくないしな。
では、システムを起動します。 一条がメインスイッチをONにする。
真っ黒だった前方の大型スクリーンが青白く輝きだす。
RAG号起動しました。 オートパイロットは、あかねが担当デ~ス。
スクリーンに大きく映し出された映像を見て俺は叫んだ!
なんだこりゃあ・・・
次回へ続く・・・