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最強魔法師の隠遁計画  作者: イズシロ
第4章 「7カ国親善魔法大会」
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安穏と剣呑の紹介

 例の如くアルスは一般観戦席に上がった。2階の最上で俯瞰しながら全体に視線を向ける。本音を言えば2年生の試合だろうとどれも同じ程度にしか見えないのだ。細部にまで目を向ければ微妙な戦力の差まで見ることができるが、それも順位にして5000位いっているか。誤差も数百程度でこんなものは理論上では外界任務に参加すれば数日で追い抜けるほどの違いしかない。まさに時の運といった差。

 確かに三桁魔法師が皆無ということはない。ルサールカの3年生にもいるのだ。もちろん要注意したものの対策を練ることは第2魔法学院ではなかった。というのも本戦を狙える選手を確保できなかったからに他ならない。


 三桁魔法師ともなればすぐに見分けがつくのだが、現状試合中の選手たちは見るに堪えない。だが、階下を見降ろせば他校の選手がメモをしながら視線を上下させている姿がある。もちろんアルスも覚えなければならないのだが、メモをするほど記憶力は乏しくない。

 いくら違いがわからない程度だと言ってもそれで許されるはずもない。情報収集をするのは自分のためではなく、第2魔法学院の選手が当たった際に勝つための助言や組み合わせの情報収集なのだから。自分主体で見てはならないのだ。


 ただ一つ言えることは引き受けた仕事でもなければ、まず間違いなく情報収集など拒否したに違いない。それどころか大会にも参加しなかったと断言できる。

 それでも3年生の分まで見てやる気にはなれないのだが。


「アルス様、こんな役回りは誰かに押しつければよろしいのでは?」

「そうもいかないだろう。俺も選手の一人として参加しているのだしな、わざわざチーム内で不和を作る必要もないだろ。それに2年の部にはフェリもいるわけだし、これぐらいはしても罰は当たらないんじゃないか」

「そこまであの女にして差し上げるのは、あの胸が……いえ、ソカレントだからですか?」


 一瞬不穏当な単語が聞こえたが、言い直したことからもアルスは努めて無視することにした。


「む……あ、あぁ確かに卿の娘さんということもあるな、それにこの前のような裏の仕事を請け負うことになった場合はフェリも参加する可能性がある。ヴィザイスト卿ならしかねんし」

「そ、そうですよね。変なことを聞いて申し訳ありませんでした」


 羞恥から顔を俯かせて謝罪するロキに対して「気にするな」と手で制して、少しだけ思案する。こういった彼女の問いは案外変化の兆候だったりする。以前、テスフィアとアリスを指導するに当たっても軍にいた頃の自分ならば有り得ない選択の数々だった。それが心境の変化なのか成長と取るのかはまだ未回答のままだが、そういったちょっとした変化なのだ。

 自分では気づけないことを気付かせてくれる。だからこんな問答すら無駄だとは思わない。知らず知らずに利用されるのを良しとしないアルスだからこそ意志を通さなければならない時がくるかもしれない。選択を迫られた時に変わってしまった自分が為すがままにされることに甘んじないためだ。 

 だからこそ考えるのだ。フェリネラに対しての対応の変化、これは何かしらを言い訳にしていないだろうかと。

 しかし――――。


(やっぱり任務の後で話した内容が原因か……)


 つまるところヴィザイストが持ち出した婚約の話だ。無論、アルスにその気はないのだが――フェリネラに魅力があるなしの問題ではなく――避けていると思われることを忌避したのではないか?

 だとしたら、ヴィザイストの娘であるフェリネラと懇意にしていると理由を付けることは容易い。


(それはないな……)


 唸るように考え込んだアルスに訝しんだロキが「どうかされましたか?」と不安の声を上げた。それは気を害したのでは、という被害妄想故である。

 「いや、なんでもない」と意識を戻し、「ロキ、婚……」と口を開きかけて続くはずだった「婚約の申し入れがあったのだが、それが原因かもしれない」と言いそうになって噤む。彼女に聞いたところでどうなるわけではない。既に答は出しているのだし、それを聞いたロキがフェリネラに対してどんな態度を取るのか想像するだけで面倒くさそうだ。


 銀髪をさらっと揺らして小首を傾げるロキにやはりアルスは「なんでもない」と素っ気なく返す。

 ある意味で自分探しの思考迷路に迷い込んだ気分である。結論と感情が伴わない回路は早々に答を見つけ出せるとは思えない。すでにこんな色恋絡みを考えている時点で変化の兆しは確かなのだろうか。

 

 アルスは軽くため息を吐くと、やめだとばかりに項を擦り、ロキの頭にポンっと手を置いた。


「まっ、使えるということは事実だな」


 自分で言っといてひどい言いようだなと自嘲する。軽く笑んだつもりだったが引き攣ったような顔になっているのは無意識のことだ。


 しかし、それをロキがどう解釈したかというと、大浴場でアルスが言った女性のタイプ――外見でも内面でもない即物的な好みだが――が「使える女」という言葉を思い返す。これは最重要項目として深く脳に直接刻み込んだため、思い出すまでもないことなのだが。

 ロキの背を冷たい何かが走った。フェリネラが条件を満たしたことになったのだから、いろいろとくずおれそうになる頼りない足元。

 平静を保とうとしても口がポカーンと開いてしまい、心ここにあらずな状態だ。

 そんな立ち呆けたロキの意識を現実に引き戻したのは遠目に二つの人影が見えたからだ。

 抑揚の利いた軽い声。


「遅れたなアルス」


 その気の抜けた声だが、歓声の中においてこの場所だけはよく通った。シングル魔法師が姿を見せれば試合などそっちのけになってしまうのはいつかの再来のような光景だ。

 アルスは歩いてくる二人に対して返事をせずに身体を向けた。現在行われている試合を見なければならないのだが仕方ない。

 一人は当然見慣れた男だ。

 しかし、アルスの視線はジャンではなくその隣へと向いていた。約束を取り付けた記憶がなかったため、これで合点がいく。以前、紹介すると言っていたからだ。

 とは言え、あたかもアルスが呼び付けたような言い方には異議があるものの、この場でそれを指摘するほど空気が読めないわけではない。

 それよりもジャンの隣一歩引いて歩く青年に目を向ける。彼は3試合目に出場していたのだが、アルスと被ったため、観戦することができなかったのだ。

 それでも現在フェリネラを悩ませる一人である。集めた情報が一貫してわからないという杜撰なものだったのだ。彼我の力量差では実力を裸にすることができないということ。結局、風系統初位級魔法で決着がついてしまった。初位級では系統の適性判別すらできない。


 だから、アルスは隣を歩いてくる青年、赤黒い髪が目に掛かりそうな辺りまで伸び、頭頂部に向かって波のような毛束で盛られている。それだけで外見がジャンに似ているような気さえした。切れ長の目、褐色混じりの瞳だが、威圧的な印象はなくどこか真摯な気性を受ける。やんちゃな外見とは反比例するような性格なのだろうか。

 情報収集に勤しむが見た目だけでは魔法師の傾向を計れないのもまた事実。


「随分時間が掛かったな」


 アルスは皮肉混じりに返す。その意図は十分理解している。対策を取られないために情報をジャンが流したのだから。

「そう言うなって、こうして来ただろ」苦笑で応対するジャンも皮肉と捉えたようだ。これぐらいは軽い挨拶のようなもの。

 一歩引いていた青年がジャンの隣まで進み出る。


「初めましてアルス様。フィリリック・アルガーヌと申します、お見知りおきを。ジャン様からお噂はかねがね聞き及んでおりました」


 胸に手を添えた優雅なお辞儀だ。紳士的な態度に好感すら持てる。

 アルスは余計なことを、とジャンを一瞥したがすぐに返礼の口を開いた。


「君のことも聞いているよ。なんでもルサールカのホープなんだってな。戦えるのを楽しみにしている。それとこっちは俺のパートナーを務めて貰っているロキだ、大会にも出場している」


 などと演技してみたが結局は早々に第2魔法学院の優勝を確定させたいだけだが。

 無言の一礼はフィリリック以上の完璧な動作だ――一流のメイドであるような。

 「よろしく」と笑みを浮かべるフィリリック。作り込まれた笑みを見破れるものはいまい。


「はい! その際は胸を借りるつもりで全力で臨ませていただきます」

「…………」


 声は滔々していおり平常だが、視線を上げたフィリリックの瞳に敵愾心にも似た気配が宿ったのをアルスは見逃さなかった。


「三桁という話だが、外界での任務にも関わっているのか?」

「はい、ジャン様の仕事に同行させてもらっているだけですので籍は置いていません」

「ジャンがね。訓練をお前が付けてるのか?」

「たまにな……それよりもアルスには言われたくないぞ」


 確かにそれを言われれば二人を指導し、パートナーを付けたのだから。


「それにしてもジャンが訓練か、お前に後進を育てる器用さがあったとは」


 これも自身に言えることだ。それどころか自分は向いてないとさえ思っている。だが、今は言葉の意味は無いに等しいのだ。

 そんなことを言われたジャンは怒りと言うより訝しむ。教導官としても各部隊を指導しているのはアルスも知っているはずだ。数年前の共同作戦で話したが忘れてしまったのだろうかと。

 しかし――隣から声が上がったことですぐに理解する。

「ジャ、ジャン様はお前よりよほど……いっ!!」と声を荒げたフィリリックは途中で言葉を途切れさせた。頭上にチョップが振り下ろされたからだ。


「だからお前は…………はぁ~」


 呆れながら手を引っ込めるジャンにフェリリックは疑問の眼差しで見返していた。


「アルスそのぐらいで勘弁してくれ」

「あぁ、そうだな。俺もふざけ過ぎた」


 微笑を浮かべてアルスは了承の意を伝える。とりあえず少しでも手土産ができただけ良いだろう。お前呼ばわりされたぐらいで怒りを感じることはない。背後のロキも事前に目配せをしていたので平然としたものだ。目配せがなくてもこうなら望ましいのだが、これは一概に善し悪しの判別が付かないものだ。

 フィリリックはジャンを馬鹿にされたと思い逆上したのだろう。本来ならばシングル同士の他愛ない話だ。単純に対戦相手だからというだけでないのは一目でわかった。だから、一先ずジャンを使って鎌を掛けてみたのだ。自国のシングルが馬鹿にされれば誰でも怒りを覚えるだろうが、彼の目には個人的な印象を受ける。

 つまり、フィリリックはジャンを慕っているのだろう。それは訓練を付けていることからもわかるように、単に自国のシングルだからというだけではあるまい。


「まだ試合も終わってないだろうし、紹介はこの辺にさせてもらうよアルス。手間を掛けさせた」

「あぁ、わざわざ御苦労なことだ」

「紹介したかったのは本当だぞ!? 上からの指示じゃ断れなかったんだ」


 ジャンがわざわざここで姿を現したのはシングル魔法師との関係があると喧伝するためだ。言ってしまえば勧誘を防止するためである。アルスのパートナーであるロキが選手であろうと勧誘の声が掛からないと思われるのはそういうことだ。

 アルス自身に声が掛かる可能性もあるのだが。


 ある意味でアルスとロキはセットのようなもの、シングルとの関係が深い魔法師を勧誘したとなれば、いくら勧誘が黙認とは言え、ただ事では済まない可能性がある。今回に限り微妙な境界線ではあるのだが。 

 アルスはどうせ、ルサールカ元首リチアが言い出したのだろうと邪推してみる。


「わかったわかった」

「そういうわけで、俺らは戻るわ。じゃあ、また後で・・

「アルス様、巡り合わせによって対戦した場合、万が一私が勝ったら1位の座をジャン様に明け渡していただけませんか?」

「…………おい!」

「構わないが、つまりは全力でやれと言うことでいいんだな」


 頷くフィリリックとの間に腕を差し込んだのはジャンだ。


「待った。それは承諾できない。これは個人ではなくルサールカのシングル魔法師として言わせてもらう。敵対するのは魔物であって人間同士ではない。この馬鹿のことは撤回させてくれ」


 ジャンが深くアルスに頭を下げた。決闘、約束事に他者が干渉し反故にするというのだ。


「ジャン様……」

「お前は黙れ!」

「そうだジャン、ただの冗談じゃないか。俺が1位を明け渡しても順当に行けば繰り上がるだけなんだしな」

 

 アルスは浅薄なフィリリックを嘲笑うように苦笑する。


「そういうところは相変わらず堅物だな」

「そうか、悪いな。こいつが馬鹿なことをこれ以上言わないうちにさっさと退散させてもらうよ」


 アルスは軽く手を上げて同意する。

 フィリリックが威圧的な目で慇懃にお辞儀し踵を返す。その瞳には撤回はない代わりに沈鬱な後悔を湛えていた。それはジャンに頭を下げさせるという失態に対して。

 遠ざかる背から早々に視線を試合場に向けたアルスは頬を軽く持ち上げた。


「何か面白いことでもありましたか?」

「まぁな。ジャンも面白い奴を育てているなと思ってな」

「あれがですか? 次もあのような態度ならアルス様が許しても私は我慢できそうにありません」


 憤慨に堪えない表情で鋭く去っていた先を睨む。さすがのロキもこれがシングル同士のやり取りならばもう少し自制出来ただろう。戦闘能力で言えば1位のアルスが最上位であり、敬意を払うべきなのだが、他国を代表する戦力である以上、立場的には対等なのだから、パートナーと言えどどうこう言える立場にない。無論、腸が煮えくりかえる思いを抱え込むことになるのは想像に難くないのだが。


 そんな臨戦態勢同然のロキの頭に手を置き、周囲に聞こえないような小声で呟いた。


「――――!!」

「俺が1位だと知っても愚直に挑んでくる奴は多くないからな、それにジャンが鍛えていると聞いては多少の興味もある」


 やはり教える者の色が混じるのは確かだ。現にテスフィアやアリスに教えているのは魔物を効率よく討伐するためにアルスが外界で独自に学んだこと、それ以外にも有用だと取り入れた戦闘スタイルに少なからず影響されるのは仕方のないことだ。

 真っ先に魔力付与を徹底させたのもその一つ。

 アルスはロキを連れだって対策本部に引き返した。


(間に合うんなら戦えるかもしれないな)


 もちろん自分が負けるようなら1位の座を降りても構わないと思っている。実力が二桁に迫るとは言え、シングルが負けたとなればいい笑い草だろう。だからと言って試合で本気を出すほど大人げなくもない。

 とはいえだ、当初の計画では決勝戦でロキに負ける、もしくはまぐれ勝ちを演出するつもりだったのだ。さすがに第2魔法学院の選手や観戦しているだろう生徒の前で三桁を難なくあしらっては学院生活もままならない。

 結局仲間内での戦いなど消化試合なのだ。入るポイントは同じなのだから棄権したいものだが、正当な理由なくしては神聖な試合に泥を塗る結果になるらしい。アルスを知る者なら手を抜いたことに気付いても、異議を申し立てるべく口を開けるものはいないだろうという順位を笠に着た考えだ。


(機会があればジャンにでも指導の何たるかでも教えてもらうか。そろそろ未経験者の域を超えそうだしな。あぁ~めんどくさっ!)

 

 悪態を吐いてもそれほど苦に感じていないのは訓練の成果が出ているからだろうか。

 アルスが対策本部に到着した時、内部は静けさで満たされていた。言うならばお祭り騒ぎ後のようである。

 一段落着いた対策本部内には毅然とデスクの前に座るフェリネラが肩を竦めるようにして映し出された画面とにらめっこをしていた。

 眉間に皺が寄っていることからも楽観視できない状況は続いているようだ。


「その様子ですと芳しくないようですね」


 アルスが周囲の目を気にしながら近づいたことに気づいてないフェリネラにそう発した。


「――――!! アルスさん……そうですねぇ、予断を許さない事態には変わりありませんが、皆さんの健闘もあって十分巻き返しは可能です」


 目元には多少なりとも気疲れが見て取れる。しかし、アルスを前に一変した柔和な笑みを浮かべる。


「こっちはルサールカのフィリリックと会ってきたぞ」

「……! どうでした?」

「大方予想通り、自分が相手をしたほうが建設的でしょうね」

「そうですか、試算でもアルスさんが相手をする方向で計算していますので変更はありませんね。となると問題は……」


 フェリネラは背後に映し出されたトーナメント表へと振り返った。


「問題は誰を本選に進ませるか、か」

「はい、アルスさんとロキさんは実力的にも本選入りしていただかなければならないのですが」


 そう4ブロックある内すべてを第2魔法学院が抑えているわけではないのだ。明日の2戦でどう転んでも第1魔法学院の枠は1つ本選に持っていかれる。

 これはアルスが明日の試合で第1魔法学院の選手を潰したとしても変わりない。問題は明日の試合で早々に叩けるならばベストなのだが、相手も優勝を狙っている以上それは避けるはず。


 ロキをぶつけて確実に勝てる見込みがあるならばこうはならなかったはずだ。しかし、現状順位だけならばほぼ同じ位階。潜在的な戦闘能力も測りかねるために打って出ることができなかったのだ。単純に初戦以降の試算上ロキが早々に脱落すると、見込めるポイントの加算が目減りするからだ。

 だから現状第2魔法学院が打てる手は3枠を本選に進出させ、一回戦で叩くこと。

 フェリネラがアルスに訊いているのはテスフィアとアリスのどちらを本選に進ませるべきかということだ。

 これは本選ならいざ知れず、予選での同校生徒同士の試合はその学院の采配によって行わない選択もできるために悩む選択である……これがただの選手ならばフェリネラの一存で決定できるが彼女の中ではアルスが指導している二人に優劣を勝手につけることはひどく躊躇われた。


「どっちでもいいんじゃないか?」とアルスは少し小声で続ける。


「テスフィアは魔力量だけなら抜けてるし、アリスも対人に有効な魔法を持っているしな。ただ二人はまだまだ荒削りに過ぎる。どちらを上げても後悔は一緒だ」


 フェリネラはどちらが最良かというのではなくリスクを負うならどちらも同じダメージだという言葉に苦笑を浮かべた。


 アリスに関して言えば宣伝も兼ねて本選に出て欲しいのだが、利己的な考えを除けばどちらでもいいのだ。


「その辺りは任せます。ただ試合は避けたほうがいいでしょう」


 というのもアルスには一つの気がかりがあるからで、本選の欠場枠は代役を立てることができると知っているからだった。

 フェリネラは疑問の声を上げずに頷く。


 本日1年の部で3試合目を勝ち進んだのは7名の選手だ。これ以上ない好成績だけに惜しい気もする。

 明日以降は同校選手同士の対戦があるからだ。

 しかし、憂鬱な気配は微塵もない。息巻く生徒たちは誰が誰と当たっても全力を尽くすだろう。

 それを遠目に見ていたフェリネラは嬉しそうに綻んだ。テスフィアとアリスの両名以外ならば試合させてあげるほうが良さそうだと。


 来年も同じ場所に立てるかわからないのならば、思い出を作ってあげよう。リーダーだからという理由だけではなく、上級生としての努めのように感じたからだ。

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